2010.12.08

▽歌舞伎スキャンダル

赤坂治績『江戸の歌舞伎スキャンダル』(朝日新書)

今回のエントリーのタイトルは、ちょっと釣り気味ですが(笑)、本書は、『江戸の歌舞伎スキャンダル』というタイトルどおり、江戸時代の歌舞伎にまつわるスキャンダルを紹介したものです。

本書によると、歌舞伎役者は、江戸幕府によってしばしば弾圧されたそうです。しかし、それは江戸時代の身分制社会において虐げられてきたというわけではなくて、歌舞伎役者は、庶民からの人気が高く、お金も儲かったために、お上から見て目障りだから弾圧されることがあったそうです。

歌舞伎界において、市川団十郎と市川海老蔵は、本流をなす名跡のため、本書で紹介されるエピソードの多くに何代目かの団十郎と海老蔵が登場します。

興味深いのは江戸末期に老中・水野忠邦が行った「天保の改革」でも歌舞伎が弾圧されたこと。五代市川海老蔵(七代市川団十郎)は、贅沢な生活を理由に、江戸から追放された。

《政治が行き詰まったとき、権力者は必ず「風紀」を問題にする。第二次大戦中も、「軟弱な」芸能を取り締まった。現代も「徳育(道徳教育)」が問題になっている。……水野は政治も経済も文化も江戸時代初期に戻して「美しい国」を作ろうとした。しかし、皮肉なことに一番の味方であるはずの大名や旗本に足を掬われて失脚した。》(p.252)

また、七代市川団十郎の実子である八代団十郎は、幕末期の混乱を乗り切れずに自殺をしてしまう。遺書はなかったため、自殺の理由ははっきりせず、多くの偽遺書や、自殺の理由を綴った草双紙(絵入り小説)が書かれたという。

歌舞伎役者は、時代の節目にいろんな意味で脚光を浴びる存在なのかもしれませんね。


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