2011.01.27

▽『東洲斎写楽はもういない』

明石散人『東洲斎写楽はもういない』(講談社)

本書は、歴史上のミステリーの一つ、浮世絵師の写楽の正体は誰か? に迫っている。

本書は、1990年に出版され、文庫化されたものに、図表などを増補して、2010年末に再刊行されたものである。

『写楽殺人事件』で知られる作家の高橋克彦が、本書の解説を書いているが、写楽の正体については、三つの解答群があるという。一つ目は、写楽別人説。写楽は、別の絵師のペンネームであり、高橋の秋田蘭画説もこの範疇に入る。二つ目は、写楽工房説で、複数の絵師が共同で写楽として浮世絵を描いていたという説。

そして三つ目が、写楽イコール写楽説。これは、写楽は写楽以外の何者でもない、という立場で、写楽の人となりにはあまり関心を払わない。

以上の三つの説は、いずれも写楽は、基礎資料には残されていない誰かであろう、という前提に立っている。 しかし、本書の著者である明石散人は、これらとは異なる立場をとっている。

《明石さんは写楽を他のだれかであるとは書いていない。もちろん、何人かが集まったプロダクションでもない。基礎資料に書かれてあるままの斎藤十郎兵衛が写楽だったと主張している。》(p.387)

そして、高橋は「もはや写楽探しゲームは終了した」(p.389)と宣言する。

なるほど、これは凄い本に違いないと読み進めていたのですが、どうも、著者である「明石散人」と名乗るY氏とは別に、文章の書き手としての「私」が登場するなど、本書も、ミステリー仕立てになっていて、実は、解説も含めて、読者を、煙に巻くお遊びなんじゃないかとすら思えてきます……。

ま、日本史ミステリーは奥が深すぎて、私には、本書の説の真偽ははかりかねるというのが正直なところです。


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