2011.01.23

▽リーマン・ショックへと至る道――世紀の空売り

マイケル・ルイス『世紀の空売り』(東江一紀訳、文藝春秋)

本書で描かれているのは、2007年8月のサブプライム・ショック、2008年9月に起きたリーマン・ショックを予見して、大金をせしめた人たちのストーリーである。

タイトルの「世紀の空売り」は、原題の"The Big Short"を訳したものだが、なんだか株の空売りをイメージさせてしまい、適切ではないのかもしれない。彼らが、ショート、つまり売りポジションを持ったのは、アメリカの金融システムそのものだったのだから。

本書に登場する人物を紹介しよう。

まず著者のマイケル・ルイスは、1980年代後半に投資銀行に働き、その後、ジャーナリストに転進した。銀行員の時の体験を書いた『ライアーズ・ポーカー』は、世界的なベストセラーになった。そして、ライアーズ・ポーカーにおいては、その頃始まった住宅ローンの証券化が描かれており、これが本書の主役でもあるサブプライム・ローン債への伏線にもなっている。

次に、スティーヴ・アイズマン。証券会社のアナリストとして1997年にサブプライム・ローン会社に批判的なレポートを公開した。その後、独立して投資ファンドを設立したアイズマンは、2005年に大手の投資銀行がサブプライム・ローンの泥沼にはまり込んでいることに気づき、これを「ショート(空売り)」することを思いつく。

続いて、投資家のマイケル・バーリ。サブプライム・ローンの証券化商品の投資目録を読み込んでいくうちに、2005年に融資されたサブプライム・ローンは、2007年に破綻する可能性が高いことを予見する。そして、バーリは、サブプライム・ローンが破綻した場合の損失を補償してくれるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を買い始める。

そして、グレッグ・リップマン。ドイツ銀行でCDSの販売をしていたリップマンは、2005年11月に、サブプライム・モーゲージ債のCDSを所有するギャンブルに賭けたい、という気持ちが浮かんできた。

そして――。

彼らが予見してきた通りのことが2008年9月に起きた。

『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』の序章として読むと非常に面白いでしょう。

[参考]
サブプライムローン問題は、今のところ、それほど大騒ぎする必要はないんじゃないか、と私が考える理由
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2007/09/post-eca6.html
▽『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/10/post-a65f.html
「大恐慌」を覚悟したほうがいい……のかも
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2009/09/post-d5fe.html
▽アメリカ人はいかにして嘘つきになりしか?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/01/post-d711.html
▽オバマ・ショックとは何か?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/10/post-a9ac.html


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