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2011年2月

2011.02.28

▽ユニオンジャックの政治パワーを探る

河合宏一『ユニオンジャックの政治パワー』(日本経済新聞出版社)

本書は、2006年から2009年にかけて、ロンドンの日本大使館に派遣されていた自治官僚が、イギリスの政治状況をまとめたもの。内容的には、アカデミックな研究書ではなく、新聞や雑誌の記事よりもディティールが詳細といった程度の内容。

ちょっと気になったのは、イギリス議会の二つの院 House of Lords と House of Commons を、上院、下院と表記している点。普通は、それぞれ貴族院、庶民院と訳すはずなのですが……。わかりやすさを優先したのかもしれませんが、名は体を表すと言いますからね……。

最近の日本の政治との関連で言うと、第5章の政治制度改革が興味深いですね。ブレア首相による上院(貴族院)改革、スコットランドやウエールズに議会を創設する地域分権、大ロンドン市の創設などなど。

こうやってみると、日本でも参考に出来る部分もあるかな、と思うのですが、その一方で、その国の歴史的な経緯を踏まえずにかたちだけで真似ても、駄目なのかな、とも思ったりします。

[目次]
第1章 頻繁に起こる政権交代―下野するリスクがあるから政治は活性化する
第2章 地盤・カバン・看板不要―誰にでも門戸が開かれている政治家への道
第3章 官僚の出る幕なし―政治主導を可能にする統治機構
第4章 議会前日は閣僚が徹夜で猛勉強―活発に論戦が展開される議会
第5章 やると決めたら誰にも文句は言わせない―スピード感を持った改革の推進
第6章 地域主権の推進―自分たちの地域のことは自分たちの手で
第7章 子供が増える英国社会 ―ワークライフバランスの重視
第8章 英国政治システム・6つの泣き所
第9章 英国政治システムの基礎知識

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2011.02.26

▽『成金』

堀江貴文『成金』(徳間書店)

ホリエモンこと堀江貴文によるITビジネス小説の第二弾。『成金』は、前作の『拝金』の続編というか前日譚で、2000年前後のITバブルの時代を舞台にしています。

小説としてみた場合に、時間が行ったり来たりして、ちょっと読みにくい部分もあります。また、盛り込まれている情報自体も、知ってる人は知ってる話も多かったかな、と思いますが、それでも、中盤からは、なかなか面白く読むことができました。

中でも、興味深かったのは、ハードバンク、LIGHT通信、そして、サメジマ・インベストメント・フィナンシャル(SIF)の三角関係(あえて、どこがモデルとは書きませんが……)。

あ、そういうことだったのか……と、当時、不可解だったことが、なんとなく、あくまでも、なんとなくですが、理解できたような気がします。

[参考]▽『拝金』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/06/post-a29a.html

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2011.02.21

▽バブルの肖像

都築響一『バブルの肖像』(アスペクト)

昭和のバブルの名残を辿る本書は、2006年に刊行されたもので、ちょっと内容は古いのですが、それでも、「ああ、こんなのあったなぁ」と、ちょっとした感慨に浸ってしまいます。

なかでも、「そういえば、あれどうなったっけ?」と興味深く読んだのが、屋内スキー施設のザウス。千葉県の船橋に、バブル崩壊後の1993年というタイミングの悪い時期に開業したザウスは、2002年9月に営業を終了し、2004年には解体されてしまったそうです。

跡地は、スウェーデンの家具販売のIKEAの店舗となったそうです。ま、一度も行ったことはないし、「あんなもんうまくいくばすないだろう」と端から思ってはいましたが、跡形もなく無くなってしまうのも、なんだか淋しい気もしましたね。

[目次]
ジュリアナ東京
ボジョレ・ヌーボー
ティファニーのオープンハート
アッシー
メッシー
ミツグ君
ゴルフ会員権
地上げ
NTT株
1億円ふるさと創生交付金
タクシー券
財テク
チバリーヒルズ
青田買い就職
ボディコン
ワンレン・ソバージュ
私をスキーに連れてって
社用車はフェラーリ
自家用ボーイング
湾岸ウォーターフロント
空間プロデューサー
ミス・ミナコ・サイトウ
アッパー・ロウアー
マル(金)マル(ビ)
企業メセナ
タイユバン・ロブション
宮崎シーガイヤ
ゴッホの「ひまわり」
歌う不動産王
CIブーム
E電
10万円金貨
ギーガー・バー
財界二世学院
ハウステンボス
テーマパーク
ホンダNSX
地方博ブーム
エンパイアステートビル&ロックフェラーセンター買収

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2011.02.18

▽官僚のレトリック

原英史『官僚のレトリック―霞が関改革はなぜ迷走するのか』(新潮社)

本書は、自民党政権時代に、官僚として、公務員制度改革に関わった著者が、「なぜ改革が失敗したのか」について、自民党の安倍、福田、麻生時代を中心に、鳩山民主党政権を含めて概観する。

私が、この手の本を読むと、かならず気になるのが、本格政権だったはずの安倍政権は何を間違えたのか、という点。

本書のタイトルでもある官僚のレトリックについて、著者は次のように喝破している。

《総理や大臣が、官僚の用意した演説原稿に沿って公の場で発言すると、後になって、その中に、深い意味のあるフレーズが埋め込まれていたことが分かる。そのフレーズを前提として進んでいくと、必然的に不本意な方向に向かわざるを得ない。しかし、そのときは既に、公の場で発言してしまっているから、もう引き返せない。》(pp.82-83)

安倍政権ではどうだったか。

政権発足後の2007年1月の施政方針演説では、天下りに関して、「予算や権限を背景とした押し付け的な斡旋による再就職を根絶」すると発言した。安倍首相は、この時点で、すでに罠にはまっていたと著者は指摘する。

この施政方針演説では、根絶するのは天下りの「押し付け的な斡旋」であり、そんなものは始めから存在しない。そして、「押し付けでない斡旋」は、これまでどおり続けることを意味している。これが「官僚のレトリック」である。

この後、渡辺喜美行革担当大臣が巻き返しをはかり、公務員の再就職斡旋を各省斡旋ではなくして、一元化する「官民人材交流センター」と、それを監視する「再就職等監視委員会」の設立にこぎつける。しかし、この二つの組織は、2008年12月の発足を前に、麻生政権下で骨抜きにされ、さらに鳩山民主党政権によって葬りさられる。

この間のプロセスを、著者は、「官僚のレトリック」も含めて詳細に解説しているが、正直なところ、読んでいてうんざりするだけである。官僚がこれだけ抵抗するところをみると、逆に、ここが本丸だったのだな、とも思わざるを得ない。安倍政権は、間違えたわけではなく、まさしく本丸に切り込んだが故に、消えた年金問題や閣僚の事務所費問題を仕掛けられて葬り去られたのではないか、とさえ思えてくる。

さて、公務員改革という理念は、渡辺喜美ひきいる「みんなの党」に引き継がれており、この点に関しては、総選挙も近そうなことだし、大いに期待したいところである。

[参考]
▽小泉純一郎が本当にぶっ壊したものとは?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2008/10/post-fb1b.html
▽なぜ自民党は大敗したのか?――曲解された世論を読み解く
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/01/post-d9ca.html
▽二大政党制批判論
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/05/post-28ff.html
▽参議院とは何か
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/02/post-d002.html

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2011.02.16

▽人口問題を供給面から考える――『人口負荷社会』

小峰隆夫『人口負荷社会』(日経プレミアシリーズ)

2010年に売れた経済書といえば、藻谷浩介『デフレの正体』があげられるだろう。

▽日本経済の正体(1)――『デフレの正体』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/10/post-ae95.html

『デフレの正体』は、2010年6月に発売され、発売当初はほとんど売れなかったが、9月に入ると突然売れ出して、いまや50万部を超えるベストセラーになっている。『デフレの正体』は、ここ二十年ほどの景気の停滞を、人口問題の需要面から考察している。

同じ頃に発売された小峰隆夫『人口負荷社会』は、人口問題を供給面から考察している。『デフレの正体』とあわせて読むことをお薦めする。

ところで『人口負荷社会』において、一般の人には皮膚感覚でわかりにくいところがあるとすれば、人口が減ると市場規模が縮小するという「人口減少=市場規模縮小論」を「錯覚」として反論する部分。

《人口が減ると日本人全体の食事回数は減り、学生の数も減る。すると、確実に食品市場、教育市場規模は縮小するように思われる。しかしこれは量の話である。量が減ったからといって、食品業界、教育業界のマーケットが縮小するとは限らない。質(付加価値)が高くなる可能性があるからだ。》(p.126)

続けて、

《例えば、日本人全体の食事の総回数が減っても、1回当たりの食費が増えれば食品マーケット全体の規模が縮小するとは限らない。》(p.126)

とする。

しかし、「1回当たりの食費が増える」かどうかは、はっきりしないし、増えていない、と感じている人も多いのではないか。この点が、一般の人の「腑に落ちない」部分かもしれない。

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2011.02.15

▽七人の侍と現代

四方田犬彦『『七人の侍』と現代――黒澤明 再考』(岩波新書)


現在では、日本を代表する傑作映画とされている『七人の侍』だが、公開当時の日本では、むしろ批判の方が多かったという。

評論家の多くは、「世界観の暗さと百姓への蔑視」(p.197)を問題視したという。当惑と失望が支配的な論調の中、自衛隊の必要性を説いた映画として、自民党の内部でだけは絶賛されていたという。

『七人の侍』が世界的に評価されるようになったのは、1954年のヴェネツィア国際映画賞で銀獅子賞を受賞してからのことだった。

本書は、日本においては、すでに過去の作品となっていながら、戦乱の傷跡が深いパレスチナやセルビア・モンテネグロでは、いまなお現在進行形の作品として受け止められている『七人の侍』を、もう一度捉えなおそうとする試みである。

『黒澤明「七人の侍」創作ノート』(文藝春秋)もあわせて読まれたい。

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2011.02.11

▽参議院とは何か

竹中治堅『参議院とは何か 1947~2010』(中公叢書)

本書は、最近の日本政治の焦点の一つである「参議院」に焦点を当てたものである。

日本政治史において、参議院は長らく衆議院の「カーボンコピー」とみなされてきたものの、衆参ねじれ国会という事態になると、むしろ「強い参議院」が問題とされる。

これらの「カーボンコピー」論と「強い参議院」論という二つの大きく相反する論を、参議院の成立した1947年から2010年にかけて、通史的に検証したのが本書である。

戦後の憲法で定められている日本の制度では、衆議院の多数派が内閣総理大臣を指名するため、内閣(政府)と衆議院(立法府)が一体的な関係にある。その一方で、参議院は、内閣とは距離を置いた独立した存在となっている。

このため、歴代の内閣総理大臣は、参議院における多数派の確保に腐心させられることになる。ねじれ国会はもとより、ねじれていない場合でも、内閣が参議院に振り回されることもある。

たとえば小泉純一郎の跡を継いだ安倍内閣では、郵政選挙の後に離党させられた造反議員を復党させたが、これは2007年の参議院選挙を控えていた参議院自民党の要請によるものだった。

2006年の時点では、衆参ともに自公で多数派を占めていたにもかかわらず、造反議員の復党を認めた途端、安倍内閣の支持率は下がり始め、年金問題や閣僚の事務所費問題などの追い討ちもあって、参議院選挙では惨敗して、ねじれ現象をもたらし、安倍の辞任にもつながった。

三権分立があいまいな議院内閣制において、実は「強い参議院」が立法府の独立性を保っていたとみることもできるだろう。

ただし、著者も指摘しているように、一票の格差の問題や、何を代表しているかが明確になるように参議院という制度は見直される必要があると思う。

[参考]
▽小泉純一郎が本当にぶっ壊したものとは?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2008/10/post-fb1b.html
▽なぜ自民党は大敗したのか?――曲解された世論を読み解く
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/main/2010/01/post-d9ca.html
▽二大政党制批判論
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/05/post-28ff.html

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2011.02.10

▽コロンブスが発見する前のアメリカ大陸は思ったよりも繁栄していたらしい

チャールズ・C. マン『1491―先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見』(布施由紀子訳、NHK出版)

先日、コロンブスがアメリカ大陸を発見した時の同時代世界史『1492 コロンブス 逆転の世界史』を紹介しました。

▽逆転の世界史
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/01/post-4c9e.html

今回、取り上げる本書のタイトルは『1491』。とある場所で見かけた時、「おや? 見間違えたかな?」と思いましたが、「1491」で見間違いではありませんでした。

一般に流布しているイメージは、コロンブス以前のアメリカ大陸は、狩猟部族が中心の動物の楽園であった、というものです。

しかし、本書の著者によれば、実際には、ヨーロッパよりも多くの人口を持ち、たくさんの都市があり、多様な言語や文化を擁していた、という研究結果が、1990年代に多数発表されたそうです。

そして、多様な文化を持っていったアメリカ大陸の先住民たちが、ヨーロッパからの移民たちによって支配されていった最大の要因は、武力ではなく、ヨーロッパ人によってもたらされた「肝炎」や「天然痘」などの病気だった、という事実を提示します。これらの病気に対する免疫がなかったために、アメリカ大陸の先住民の人口は90%以上も減ってしまった、との推計もあるようです。

目からウロコの落ちるような歴史的事実を突きつけられるとともに、先住民が失ったものは、これまで考えられていたよりも、ずっと大きかったのではないか、という問題を、本書は提起しています。

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2011.02.09

▽逮捕されるまで、どうやって働いたか?

市橋達也『逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録』(幻冬舎)

言わずとしれたアノ人の逃亡記。本書が発売されると聞いて、もっとも関心が沸いたのは、逃亡中に、どうやって働いてお金を貯めたのか? という点。

まず沖縄では、フリーぺーパーの求人誌を手に入れて、ある会社に電話をかけたが、携帯電話が必須であることを理由に断られる。そこで別の働き口を紹介してもらうが、そこでも雇ってもらえず、さらに別の働き口を紹介される。ようやくそこで、リゾートマンションの建設現場で働かせてもらう。「神奈川から来たひきこもり」と自称したが、特に、身元の確認はなかった。

続いて、身元がばれることを恐れ、沖縄から大阪に移り、西成のハローワーク脇に止まっていたバンに乗り込んで、つれられていった神戸の飯場で働いた。ここで80万円貯めたが、テレビで逃亡者に関する番組が放映されたことをきっかけに、また逃亡する。

そして、沖縄と大阪を行ったり来たりする日々が続く。お金を貯めていたのは整形するためだったというが、飯場で働く人は訳ありの人が多く、名前や身元などを詐称しても、特に追求されることはなかったようだ。

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2011.02.08

▽裁判官もツライよ

長嶺超輝『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)

長嶺超輝『裁判官の人情お言葉集』(幻冬舎新書)

裁判官の書く判決文といえば、難しい法律用語の固まりと思いきゃ、スタイルの決まった文章の中に、自分自身の感想を混ぜることもあるという。そうした判決文の中から、笑えるものや、泣けるものを集めたのが、この2作品。面白く読みましたが、まあ、特にコメントはありません。

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2011.02.01

▽KITANO

ミシェル・テマン『Kitano par Kitano 北野武による「たけし」』(松本百合子訳、早川書房)


本書は、北野家の近所に住んでいたフランス人ジャーナリスト、ミシェル・テマンが、「ビートたけし」こと北野武に、2005年から2009年にかけて行った、四十数回のインタビューをまとめたものです。通訳は、あのゾマホンがつとめたそうです。

《日本人にとっては、北野はまずなによりもテレビでおなじみの顔だ。……それに反して海外での北野といえば、すぐさま映画に結びつく。同世代の人々と一線を画す、時として価値観を翻すこともいとわない監督、アジアの映画人のひとりとして成功を手にした比類なきアーティストとして知られている。》(pp.22-23)

ビートたけしの伝記は、自伝や、真偽があいまいなものも含めて多数出版されていますが、相当に長い時間をかけてインタビューをしたものは、本書以外にはないと思います。

知ってる話も多いので、特に論評することもないのですが、残念なのは、原著がフランス語の点でしょうか。英訳されないと、国際的にはアピールしないんですよね、やはり。

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