2011.02.18

▽官僚のレトリック

原英史『官僚のレトリック―霞が関改革はなぜ迷走するのか』(新潮社)

本書は、自民党政権時代に、官僚として、公務員制度改革に関わった著者が、「なぜ改革が失敗したのか」について、自民党の安倍、福田、麻生時代を中心に、鳩山民主党政権を含めて概観する。

私が、この手の本を読むと、かならず気になるのが、本格政権だったはずの安倍政権は何を間違えたのか、という点。

本書のタイトルでもある官僚のレトリックについて、著者は次のように喝破している。

《総理や大臣が、官僚の用意した演説原稿に沿って公の場で発言すると、後になって、その中に、深い意味のあるフレーズが埋め込まれていたことが分かる。そのフレーズを前提として進んでいくと、必然的に不本意な方向に向かわざるを得ない。しかし、そのときは既に、公の場で発言してしまっているから、もう引き返せない。》(pp.82-83)

安倍政権ではどうだったか。

政権発足後の2007年1月の施政方針演説では、天下りに関して、「予算や権限を背景とした押し付け的な斡旋による再就職を根絶」すると発言した。安倍首相は、この時点で、すでに罠にはまっていたと著者は指摘する。

この施政方針演説では、根絶するのは天下りの「押し付け的な斡旋」であり、そんなものは始めから存在しない。そして、「押し付けでない斡旋」は、これまでどおり続けることを意味している。これが「官僚のレトリック」である。

この後、渡辺喜美行革担当大臣が巻き返しをはかり、公務員の再就職斡旋を各省斡旋ではなくして、一元化する「官民人材交流センター」と、それを監視する「再就職等監視委員会」の設立にこぎつける。しかし、この二つの組織は、2008年12月の発足を前に、麻生政権下で骨抜きにされ、さらに鳩山民主党政権によって葬りさられる。

この間のプロセスを、著者は、「官僚のレトリック」も含めて詳細に解説しているが、正直なところ、読んでいてうんざりするだけである。官僚がこれだけ抵抗するところをみると、逆に、ここが本丸だったのだな、とも思わざるを得ない。安倍政権は、間違えたわけではなく、まさしく本丸に切り込んだが故に、消えた年金問題や閣僚の事務所費問題を仕掛けられて葬り去られたのではないか、とさえ思えてくる。

さて、公務員改革という理念は、渡辺喜美ひきいる「みんなの党」に引き継がれており、この点に関しては、総選挙も近そうなことだし、大いに期待したいところである。

[参考]
▽小泉純一郎が本当にぶっ壊したものとは?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2008/10/post-fb1b.html
▽なぜ自民党は大敗したのか?――曲解された世論を読み解く
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/01/post-d9ca.html
▽二大政党制批判論
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/05/post-28ff.html
▽参議院とは何か
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/02/post-d002.html


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