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2011年3月

2011.03.30

▽『ヤクザの修羅場』

鈴木智彦『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)

とても面白いヤクザ世界の話。

著者は、いわゆる実話誌の記者、編集長として、ヤクザと関わり、独立してからは、歌舞伎町にある入居者の7割が暴力団関係者という通称「ヤクザマンション」で生活するなど、その世界にどっぷりと浸ってきた。

本書を読むと、とにかくヤクザ稼業も楽ではないし、それを取材する側もいかに大変かが、ユーモアも交えつつ描かれている。

ヤクザを飯の種とする実話誌というメディアと、それを利用しようとする暴力団との関係も興味深く、ある種のジャーナリズム論にもなっている。

「潜入ルポ」はちょっと違うと思いますが……。

[目次]
序章 山口組vs.警察
第1章 ヤクザマンション物語
第2章 ヤクザ専門誌の世界
第3章 愚連隊の帝王・加納貢
第4章 西成ディープウエスト
終章 暴力団と暴力団専門ライターの未来

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2011.03.29

▽『出版大崩壊』

山田順『出版大崩壊 電子書籍の罠』(文春新書)

またまた電子書籍本。帯には、

某大手出版社が出版中止した「禁断の書」
電子書籍の不都合な真実

とある。これはどういうことかというと、「はじめに」に次のように書かれている。

《当初、本書は電子化を積極的に進める出版社から出す予定で書いてきた。しかし、内容がその社が進める電子化に反するものだったためか、途中で中止となり、最終的に文藝春秋に救っていただいた。》(p.12)

要するに、「電子書籍もやっぱり駄目っぽい」という内容のために、電子書籍に期待をしていた某大手出版社からは拒絶された、と。そして、いまのところ、あまり電子書籍には力を入れていない(ようにみえる)文藝春秋が拾ってくれたということらしい。

電子書籍が駄目っぽいからといって、紙の出版物もやっぱり大変な状況はかわらず、そのことは、「出版大崩壊」という自虐的なタイトルが示している。

内容的には、これまでにもこの手の本で何度も繰り返されたような話題が多い。目新しいのは、著者自らが試みた電子自費出版の成績くらいだろうが、それはそれで、衝撃的である。

[目次]
第1章「Kindle」「iPadショック」
第2章 異常な電子書籍ブーム
第3章 そもそも電子書籍とはなにか?
第4章 岐路に立つ出版界
第5章 「中抜き」と「価格決定権」
第6章 日本市場の特殊性
第7章 「自炊」と不法コピー
第8章 著作権の呪縛
第9章 ビジネスとしての電子出版
第10章 誰でも自費出版の衆愚
第11章 コンテンツ産業がたどった道

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2011.03.28

▽ユニクロの本質とは?――『ユニクロ帝国の光と影』

横田増生『ユニクロ帝国の光と影』(文藝春秋)

本書は、『アマゾン・ドット・コムの光と影』などで知られるジャーナリストの横田増生が、ユニクロと、その経営者である柳井正の本質にせまったものである。

叙述の多くは、ビジネス誌や大手メディアなどで英雄視されている柳井や、賞賛されているユニクロの経営手法に対して、本当はどうなのかということを明らかにすることに費やされている。

中でも、元社員の次のような証言は、ユニクロという会社を端的に現している。

《「ユニクロにはオリジナルのコンセプトというものがない。言い換えれば、洋服を作る上での本質がない。ユニクロのヒット商品である、フリース、ヒートテック、ブラトップとつなげてみても、どういう洋服を作りたい企業なのかさっぱり見えてこない。ユニクロで働いているときは、いつも“一流のニセモノ”を作っているという気持ちから逃れることができなかった。それでも、ユニクロが日本のアパレル業界で圧倒的な強さを維持しているのは、生産管理や工程などについての細かな決めごとを徹底的に実行しているからだ」》(p.56)

いくら柳井正という経営者の考え方や、ユニクロの経営手法について書かれたものを読んでも、何か面白みに欠けるのは、この「哲学の無さ」にあったのだろうと気づかされた。また、柳井の後継者が決まらない最大の理由も、継承すべき理念が無いことに起因していると思われる。

本書は、ニュージャーナリズム的な叙述の手法や、アパレル業界の慣習の説明などで、やや煩雑な部分はあるけれども、これまでメディアで伝えられてこなかったユニクロの「影」の部分は、よくわかった。

[目次]
序章 独自調査によってメスをいれる
第1章 鉄の統率
第2章 服を作るところから売るところまで
第3章 社長更迭劇の舞台裏
第4章 父親の桎梏
第5章 ユニクロで働くということ 国内篇
第6章 ユニクロで働くということ 中国篇
第7章 ZARAという別解
第8章 柳井正に聞く
終章 柳井を辞めさせられるのは柳井だけだ

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▽『マイ・バック・ページ - ある60年代の物語』

川本三郎『マイ・バック・ページ - ある60年代の物語』(平凡社)

評論家の川本三郎の青春回顧録。

妻夫木聡と松山ケンイチが出演する映画が5月28日に公開される予定。
http://mbp-movie.com/

川本が、週刊朝日、朝日ジャーナルの記者として過ごした1960年代の日々。

そして、「赤衛軍」を自称するテロリストとの出会い、事件、破滅――。

壮絶な青春がそこにあった。

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2011.03.27

▽最悪の事態が起きた場合は?――『原発事故…その時、あなたは!』

瀬尾健『原発事故…その時、あなたは!』(風媒社)

本書は、1994年に死去した原子力学者の瀬尾健が存命中に行ったシミュレーションをまとめたもので、出版は1995年と少し古い。

日本でチェルノブイリ級の原発事故が起きたとしたら、という前提で、どの地域がどれくらいの放射能被害を受けるかについて、16ヶ所の原発基地ごとにシミュレーションしたものを図示している。また、高速増殖炉もんじゅと、核燃料の輸送中の事故のシミュレーションも加えられている。

日本の原発ではチェルノブイリ型の事故は起きないとされているし、騒ぎすぎるのはよくないとは思うが、原因はなんであれ最悪の事態が起きた場合には、どの程度の被害が予測されうるかを確認するという点では、見ておいても損はないと思う。

瀬尾氏のシミュレーションでは、福島で採用されているBWR(沸騰水型原発)については、BWR2というケースを想定している。それは、

《【BWR2】炉心冷却系が故障。炉心が溶融落下する。蒸気爆発は溶融体が格納容器の床に落下したときに起こり、格納容器が破壊する。》(p.177)

というもの。福島第一原発では、すでに部分的な炉心溶融と、格納容器の一部損壊は起きているが、「BWR2」で想定しているような、全面的な炉心溶融および格納容器の破裂という段階には、まだ至っていないものと思われる。

また、放射能の人体に対する影響についても、瀬尾氏の研究では、チェルノブイリ周辺600km圏内の7500万人の放射線の影響によるガン死は、将来も含めて24万6000人と推計しているのに対して、本書に記されているソ連放射線学界の見解では、ガン死は1168人にとどまっている、とされている。(p.86-87, 92)

また、瀬尾氏は全世界のガン死は将来も含めて70万人との推計を示している。この点については、瀬尾氏の推計が過大なのかもしれないし、公式発表が嘘をついているのかもしれない。

以上のようなことを踏まえた上で、下に、瀬尾氏が行った福島第一原発6号基(110万Kw)が「BWR2」レベルの事故を起こした時の影響についての図(P.35)を示しておきます。瀬尾氏の推計では、福島から見て210度(南南西)の方角の地域では、ガン死は314万人に至ると推計しており、うち東京では213万人としています。

20110327simulation
繰り返しになりますが、これはあくまでも最悪の場合の推計であって、実際の事故はこれほどひどい状態にはなく、また、放射能の影響は、ソ連やIAEA(国際原子力機関)の公式見解よりも大きくみていることに留意してください。

[追記]
瀬尾氏のシミュレーションのいくつか(志賀、福島、浜岡、柏崎、女川、敦賀、もんじゅ、伊方、鳥取、玄海、泊)は、『日本を滅ぼす原発大災害―完全シミュレーション』という本に掲載されているそうです。

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2011.03.25

▽大震災と原発と新聞と

佐野眞一『巨怪伝―正力松太郎と影武者たちの一世紀』(文藝春秋)

「大震災」と「原発」という二つの言葉によって、私の記憶の底から浮かび上がってきたのが本書である。

『巨怪伝』とは、ノンフィクション作家の佐野眞一が、読売新聞の社主として君臨した正力松太郎と、その影に埋もれていた人々にスポットを当てた伝記である。

まず「大震災」。1923年に関東大震災が起きたとき、正力は特高を所管する、警視庁官房主事をつとめていた。この時、さまざまなデマが飛び交ったが、その流布に、警察も一役かったのではないかという疑いがもたれている。

《正力は少なくとも、九月一日深夜までは、朝鮮人暴動説を信じていた。いや、信じていたばかりではなく、その情報を新聞記者を通じて意図的に流していた。》(p.73)

こうしたデマを警察や軍隊は治安出動の口実に使おうとしたようだ。また、関東大震災によって、東京の新聞社も大きな打撃を受けた。後に、正力が社主となった読売新聞も復旧には2ヶ月半もかかったという。

《震災前に十三万部あった部数は、大震災を転機として東京朝日、東京日日という大阪系二紙に読者を蚕食され、五万部台にまで落ち込んだ。》(p.117)

東京日日とは、毎日新聞系列の新聞である。一方、正力は、虎ノ門事件という皇太子に対するテロ未遂事件を機に警視庁を懲戒免職となり、読売新聞の社主におさまる。部数拡大を至上命題とし、また、読売を冠したプロ野球球団やレジャー施設を作り出し、メディアと娯楽ビジネスの帝国を作り上げる。

さらに国会議員となった正力は、鳩山一郎の次の首相の座を狙うようになり、原子力の平和利用を主張するようになる。1953年にニューヨーク・ジャイアンツを招聘し、その際に、アイゼンハワー大統領による原子力の平和利用に関するメッセージが公開された。

《読売は、これ以降、すさまじいばかりの原子力平和利用キャンペーンに乗り出していった。そこにはアメリカの国際的核戦略と、ポスト鳩山を目指す正力の政治的野心とが、露骨なまでに重なり合っていた。》(pp.522-523)

「核燃料」を「ガイ燃料」と読み間違えるなど、原子力に関する知識をまったく持たない正力が原子力にこだわったのは、それが「空前絶後」のエネルギー革命であり、実現させれば政治家としての手腕に箔がつくから、という理由にすぎなかったという。

嗚呼――。

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2011.03.20

▽『原子炉時限爆弾』

広瀬隆『原子炉時限爆弾』(ダイヤモンド社)

本書のすごいところは、そのものずばりの『原子炉時限爆弾』というタイトル。「大地震におびえる日本列島」という副題。そして、2010年8月という発売時期。あいかわらず引きの強い著者だということができます(内容については……ですが)。

ただ、本書でもっとも危険視されていたのは、東海大地震と浜岡原発でしたから、まあ、わからないことはわからないとしか言いようがないですね。

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2011.03.19

▽ランドラッシュに出遅れるニッポン

NHK食料危機取材班『ランドラッシュ―激化する世界農地争奪戦』(新潮社)

本書のタイトルである「ランドラッシュ」とは、国際的な農地争奪戦を意味する造語である。ヨーロッパやアメリカに加えて、韓国、中国、インドなどの新興国が、ロシア、ブラジル、アフリカなどの農地を買い漁って開拓し、農地として、

本書は、2007年から2008年にかけて発生した「世界食糧危機」を機に、NHK取材班が世界各地のランドラッシュの実態を調査したものであるが、日本は、明らかにランドラッシュに出遅れているようだ。

《ランドラッシュを進める韓国、中国、インドなどの行動は、経済の常識から見れば必ずしも合理的ではないかもしれない。平常時の経営安定の問題、輸送ルートの問題、関税の問題、輸出禁止のリスク――。様々な課題を置き去りにしたまま、ただ進出を強引に推し進めていた。
 しかし、そこで目にしたのは、変革の時代を迎え、未来を自らの方向に引き寄せようという強い意志だった。その意志の強さは、様々な矛盾を乗り越え、受け身で合理的な選択をする者を打ち負かし、新しい時代の主導権を握るかもしれない。》(p.250)

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2011.03.17

▽『スウェーデン・パラドックス』

湯元健治、佐藤吉宗『スウェーデン・パラドックス』(日本経済新聞出版社)

日本でも福祉や社会保障が問題になっていますが、本書は、福祉先進国として知られるスウェーデンの実態を、つまびらかにしたものです。

かつて、「福祉国家」と言えば、労働者も失業者も老人も、のんびりと暮らせる豊かな国というイメージがありましたが、実態は、企業の新陳代謝を促し、失業者の尻を働け働けとたたき続ける、成長志向の強い競争社会であることがわかります。

《確かに、スウェーデンは、社会保障面では「大きな政府」だが、高水準の福祉や社会保障を維持するためには、常に、産業構造を高度化・転換し、持続的な経済成長を追求していく必要がある。我々は、企業活動を支える産業政策面ではスウェーデンが「小さな政府」であるという事実を銘記すべきだろう。》(p.76)

[目次]
はじめに--本書の問題意識
序 章 スウェーデン・モデルとは何か
第1章 高い国際競争力の源泉は何か
第2章 女性の活用による共働き社会の実現
第3章 厳しい競争社会を支える独自の雇用・賃金システム
第4章 就労インセンティブを重視する福祉・社会保障制度
第5章 明確な受益と負担の関係
終 章 スウェーデンから見た日本の未来への提言
おわりに

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2011.03.16

▽日石・土田爆弾事件40年目の真相

『創』2011年41月号

1971年に起きた爆弾テロ、日石事件と土田事件は、赤軍派系の活動家が逮捕・起訴されたものの、結局、1985年に無罪が決まった。今月号の『創』の記事によると、事件は、ブント戦旗派(日向派)の裏部隊によるものだったという。事件関係者の刑事・民事の時効などが終了したことが確認されており、近々、中島修による事件の手記が刊行される予定という。

[目次]
【特集 新聞社の徹底研究】
◆〈座談会〉新聞産業の危機とジャーナリズムの行方 原壽雄×桂敬一×河内孝×藤森研
◆朝日新聞社が掲げる「紙も、電子も」 篠田博之
◆読売新聞社が無借金で新社屋建設の驚愕 丸山昇
◆毎日新聞社の3度目の紙面「改革」 長岡義幸
◆日経新聞「電子版」とグループ戦略 伊藤隆紹
◆産経新聞社のデジタル化と出版戦略 道田陽一
<辛辣座談会>記者会見開放の新局面と記者クラブ制の崩壊 上杉隆×江川紹子×畠山理仁

◇都条例改定問題のその後も続く攻防戦 長岡義幸
◇『週刊現代』八百長告発執筆者の提言 大相撲八百長騒動仕掛けた警察の真の狙い 武田頼政
◇<布川冤罪事件当事者座談会> 40年以上にわたった布川事件冤罪を晴らす闘い 杉山卓男×桜井昌司×井手洋子
◇警察の捜査は一時肉薄しながらなぜ誤ったのか 日石・土田爆弾事件の40年目の真相 中島修
◇出版後、千葉拘置所のリアクションも 前代未聞の公判前獄中出版 市橋達也逃亡手記の経緯 浅野健一
永六輔×矢崎泰久のぢぢ放談 第21回 大相撲なんて知らない!

<巻頭グラビア>
◇風刺天国 〝相撲ルーレット/マニフェストは”嘘も方便”/他〟 マッド・アマノ
◇東京Street! 〝上野、新宿、渋谷――都会の死角〟 篝一光
◇今月のカラクリ雑誌 〝ターゲットを絞り込む〟 今柊二
◇連赤・永田洋子死刑囚の遺体/布川事件を撮った映画/『くじけないで』の大化け

<連載コラム>
◇タレント文化人 筆刀両断! 〝池上彰〟 佐高信
◇言論の覚悟 〝表現者の覚悟〟 鈴木邦男
◇「こころの時代」解体新書 〝日本人はなぜ謝らなくなったのか〟 香山リカ
◇ナショナリズムという病理 〝日沖関係の分水嶺となる鳩山由紀夫の「方便」発言〟 佐藤優
◇ドキュメント雨宮☆革命 〝「ニート祭り」に参加して……大川豊
◇バカ裁判傍聴記 〝証拠がないと物が言えない〟 阿曽山大噴火

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▽『甦る11棟のマンション―阪神大震災・再生への苦闘の記録』

日経アーキテクチュア『甦る11棟のマンション―阪神大震災・再生への苦闘の記録』(日経BP社)

1995年1月に起きた阪神・淡路大震災では、約180棟の分譲マンションが、全壊または半壊以上の被害を受けた。このうち1996年春までに建て替えまたは大規模補修の決議を行い、夏までに着工できたのは、わずか20棟弱だったという。

本書は、11棟のマンションがどのように復興のプロセスを辿ったのかを紹介している。映画監督の大森一樹は、復旧したマンションの自治会議長をつとめており、「マンションのキャラクター」、つまり、マンションそれぞれの特性、そして「被害の状況」を、できるだけ早く把握することが重要である、と語っている。

1997年1月発行のため、法律などの情報は古いかもしれないが、それでも参考になる部分は多いと思われる。

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2011.03.15

▽『軍事とロジスティクス』

江畑謙介『軍事とロジスティクス』(日経BP社)

軍事評論家の江畑謙介(2009年死去)が、流通業向けの業界誌に連載した軍事活動におけるロジスティクスの情報をまとめたもの(2008年出版)。軍事活動だけではなく、災害時の復興においても、ロジスティクスの確保が、いかに重要かが痛切に思い返されます。

[目次]
はじめに
 戦いにおいて、第一にして最も重要なこと
 ロジスティクスを「後方」と訳す自衛隊
 「鉄の山」を築き、動かした昔のロジスティクス
 情報ネットワークと無線タグの利用
 変わるロジスティクス
 センス・アンド・レスポンド補給と環境への配慮

第1章 イラク戦争とロジスティクス
ロジスティクスと新技術
 「成功」とされたイラク戦争のロジスティクス
 「軍事におくる革命」とロジスティクス
 RFIDタグの実用化
 アセッツ・ヴィジビリティ
湾岸戦争とイラク戦争の教訓
 湾岸戦争の教訓が生きたイラク戦争
 イラク戦争で活用された米軍補給システム
 イラク戦争の反省点
 多くの欠陥を露呈したイギリス軍のロジスティクス
 問題になった装備品の不足
 遅れていたイギリス軍のロジスティクス・システム
 イタリア軍のロジスティクス
威力を発揮した長距離輸送能力
 米軍輸送手段に対する評価
 即応可能な政府保管のRRF船隊
 高い評価を受けた最新型C-17輸送機
イラク戦争第2段階のロジスティクス
 不足した治安維持部隊の兵力
 在欧米陸軍部隊のイラク派遣
 装備の整備と修理
 狙われる補給部隊
 緊急装甲防御対策の実施
 コンボイ防衛訓練とシミュレーター
 手製爆弾(IED)の脅威
 MRAP計画
 航空輸送需要の増大と航空自衛隊の空輸支援
 浄水装置、再生エネルギーの活用
砂漠地帯におくるロジスティクス
 砂漠地帯の特殊性
 砂漠におくる保守・整備作業
    
第2章 アフガニスタンの戦いとロジスティクス
特殊部隊に対するロジスティクス
 非対称型の戦い
 想像力で仕様を決める
ISAF正規軍部隊へのロジスティクス
 ロード・トゥー・アフガニスタン
 フォース・プロバイダー・モジュール
 アフガニスタンにおくる米・英軍のロジスティクス組織
 戦況の悪化とNATO軍装備の変化
NATOのアフガニスタン・ロジスティクス
 NAMSA(NATO整備供給局)
 NATOの戦略空輸能力強化
 海・空輸送手段の統合調整機能
オペレーション・マウンテン・スラスト
 非NATO加盟国軍との共同作戦
 「マウンテン・スラスト」の教訓

第3章 軍事ロジスティクスの民間委託
急増する軍任務の民間委託
 クローズアップされた戦場の民間会社
 冷戦終了後に急増したアウトソーシング
 兵士一人に一人の民間契約社員
 艦隊補給から情報分析まで
 LOGCAP
経費削減と官組織との競争
 経費削減と公務員グループとの競争
 補給廠、工廠の民間委託
急成長するロジスティクスの民間請負企業
 軍人を事務室から戦場に
 噴出したハリバートン社問題
 軍とのロジスティクス契約増大の裏で
 再度問題になったイラクでの民間契約
 現地契約会社実態把握の難しさ
イギリスとカナダの民間委託
 英軍の海外展開支援を請け負ったKBR社
 独立採算制の英空軍航空機整備組織
 カナダ国防省に踏み台にされたTBG社
 海外派遣カナダ軍に対する民間ロジスティクス契約
民間委託の問題と不安要因
 軍業務の民間委託で生じる問題
 企業が契約違反をするとき

第4章 米軍海外展開戦略とロジスティクス
新たな脅威と米軍戦略
 米国に対する新たな脅威
 遠隔の地に米軍を投入する方法
米軍の全世界事前備蓄
 装備の事前陸上備蓄と海上備蓄
 功を奏した中東方面用の事前備蓄
 中東諸国の負担で造られた米軍事前備蓄施設
 事前備蓄の長所と短所
 威力を発揮した海兵隊の海上事前備蓄
 海兵隊の事前集積船部隊
 米陸軍と空軍の事前備蓄船部隊
 国家が保有する戦略海上輸送部隊
シー・ベイシング構想
 外国領の基地に依存しない米軍作戦の実現
 シー・ベース構成部隊
 MPF[F]に求められる機能
 コンテナ船改造型MPF[F]
各国が導入し始めた多目的ロジスティクス艦
 英海軍のロジスティクス艦船計画
 各国が導入を図る多目的艦
洋上補給と近代化上の問題
 グラマラスでなかった洋上補給
 現用洋上補給方式の問題点
 洋上移送量の増加とコンテナ輸送化
 トータルな洋上補給システムの改革
 コンテナ化
 洋上補給のコンテナ化における問題

第5章 軍事輸送システム
軍事輸送のパレット化とコンテナ化
 パレットのスマート化と暗視装置
 軍事ロジスティクスのコンテナ化
 緊急展開用コンテナと輸送システム
戦うトラック
 トラックへの緊急装甲防御対策
 トラックに装甲防御を施す難しさ
 トラックの装甲で先行した欧州
 人員輸送用防御コンテナと民間トラックの装甲防御
次世代の海上輸送システム
 高速輸送艦HSV
 陸海共通型JHSV計画とRSLS
 モジュール型コーズウェイ・システム
新しい航空技術と輸送システム
 限界に達した在来型大型機と新しい航空技術
 ハイブリッド型飛行船とチルトローター輸送機
 欧州の輸送型飛行船計画
 小型輸送機とC-130の後継輸送機
 垂直離着陸型大型輸送機
 無人輸送機
 パラシュート精密投下装置JPADS

第6章 これからの軍事ロジスティクス
ロジスティクス状況のリアルタイム把握
 スニーカー・ネットからの脱却
 ロジスティクス共通運用状況の把握(LCOP)
「感知と対応」型ロジスティクス
 センス・アンド・レスポンド
 能力を基本とする統合型ロジスティクス組織
無線タグの実用化と進歩
 RFIDタグの種類
 事前対策型ロジスティクス
 英軍とNATOにおくるRFIDタグの応用
 次世代アクティブRFIDタグの開発
各国軍隊の次世代ロジスティクス・システム
 米陸軍のロジスティクス近代化計画(LMP)
 英国防ロジスティクス機構の再改編
 イスラエル軍のロジスティクス組織改革

おわりに

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▽『何かのために』

一色正春『何かのために sengoku38の告白』(朝日新聞出版)

sengoku38 というハンドル・ネームの方が本名よりも有名な著者が、あの動画をなぜ、どうやって Youtube に投稿したかを綴ったもので、しごくまっとうな事を主張されています。本書の教訓は、情報は秘匿せずに公開すべし、ということに尽きると思います。

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2011.03.10

▽なぜシリコンバレーは繁栄しているのか――『現代の二都物語』

アナリー・サクセニアン『現代の二都物語 なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか』(山形浩生訳、日経BP社)

本書の副題は、「なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか」というものですが、この「ボストン・ルート128」とは、アメリカ東部のボストンを囲むように走る国道128号線のことで、アメリカ西部のシリコンバレーとともに、エレクトロニクスの技術革新を担ってきました。

タイトルの「現代の二都物語」とは、シリコンバレーとボストン・ルート128の二つの都市のことであり、なぜシリコンバレーが優位に立ち、ボストン・ルート128が没落していったのかを考察したのが本書です。

原著は1994年に上梓され、1995年に大前健一による邦訳が出版されましたが、絶版となったため、2009年にふたたび新訳として出版されました。

シリコンバレーにしろ、ボストン・ルート128にしろ、1970年代に隆盛をほこったものの、1980年代には、どちらも停滞期を迎えます。半導体製造企業の多かったシリコンバレーは、半導体メモリ市場を日本企業に奪われ、ミニコン・メーカーの多かったルート128は、ワークステーションやパソコンなどにユーザーを奪われていました。

しかし、本書の書かれた1990年代前半では、シリコンバレーは復活し、ルート128は沈んだままでした。それはどうしてか? というのが本書の中心テーマです。

著者は、ボストン・ルート128の企業は、一社ですべてを生産する垂直統合型を指向しますが、シリコンバレーの企業は、自社の得意とする製品や技術以外は、他社から調達する水平分業型を指向している、と指摘します。

ボストン・ルート128の企業は、自社技術にこだわるあまりに、技術革新のスピードについていけず、常に、複数の企業による最新技術のコラボレーションによって技術革新を進めていくシリコンバレーに敗れてしまいます。

そして、垂直統合を維持しようとして没落していったボストン・ルート128の企業は、日本のエレクトロニクス企業とも重なります。1990年代半ばに、本書の最初の邦訳判が出版された際には、日本の企業や自治体の関係者に与えたインパクは大きかったようで、日本にもシリコンバレーを創出させようとする試みはいくつもあったようです。しかし、そうした試みが、あまりうまくいっていないようなのが残念ですね。

[参考]
▽よくあるガラパゴス批判とは一線を画す
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2008/12/post-581c.html
▽なぜ負けたのか?――『日本「半導体」敗戦』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-b1e8.html
▽インテル・インサイドとアップル・アウトサイド――技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/11/post-feeb.html
▽iPodは何を変えたのか? を振り返る
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/02/ipod-7562.html
▽『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』が教えてくれたこと
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/12/post-b8b1.html

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2011.03.09

▽あの名画はどうなった――『消えた名画を探して』

糸井恵『消えた名画を探して』(時事通信社)

以前、『バブルの肖像』という本を紹介しましたが、

▽バブルの肖像
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/02/post-c9a1.html

その中で、参考文献として紹介されていたのが本書です。

昭和の時代、日本経済の興隆とともに、海外の美術マーケットにもジャパン・マネーが流れ込むようになり、世界的にも注目を集めるようになりました。しかし、日本人や日本企業が買い集めた美術品は、バブルの崩壊とともに、人目につかなくなってしまいます。

たとえば、1990年に日本人が8250万ドルの史上最高値で落札した『医師ガシェの肖像』は、2000年にアメリカの複数の美術館で開催されたゴッホ展では展示されませんでした。

《いわくのついてしまった高価な美術品については、売り手も書い手も取引を秘密裏に運ぼうとする。晴れて手に入れた新しい所有者も、いつまでも「〇〇年に〇〇ドルを記録した作品」と言われるのを嫌って表に出したがらない。》(p.6)

本書は、そんな消えた名画がいまどこにあるかを探し求めるルポですが、日本経済の消長を絵画を切り口にして描いた優れた経済史となっています。

[目次]
はじめに
 ゴッホ「肖像画」展になかった絵
 アートの「失われた十年間」
第l章 歴史は繰り返す
 日本人コレクターの原点
 「松方コレクション」の成り立ち
 「松方コレクション」その後
第二章 日本の美術マーケット、「ひまわり」前後
 「ひまわり」が日本人を変えた
 「ひまわり」以前、日本のマーケットのしくみ
 美術マーケットの民主化始まる
 不動産に投資するように絵に投資する
第三章 ロンドン、そしてニューヨーク――オークションの世界
 美術品のオークションとは何か
 近代的なオークションヘ
 日本人と欧米のオークション
 「ひまわり」落札のかげで
第四章 日本人は美女を奪った醜い金持ちの老人か
 悲しみの花嫁
 史上初、日本とパリを結ぶ衛星中継オークション
 「ピエレットの婚礼」日本へ
 その値段
 新しい持ち主
 各地を巡る
 日本オートポリス、暗転
 「ピエレットの婚礼」はどこへ?
 「レイク」
 「千代田生命保険」によるオートポリス・コレクション処理
第五章 ガシェ医師の冒険
 憂鬱な顔の男
 ガシェ医師とはだれか
 「医師ガシェの肖像」
 世界一・史上最高の値段
 「医師ガシェの肖像」を買ったのはだれだ
 斉藤「棺桶発言」の波紋
 消えたガシェ医師
 ゴッホとガシェ医師の人気、衰えず
 「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」
第六章 バブルがはじけ、スキャンダルが残った――史上最大の美術犯罪
 バブルはじける
 イトマン事件とは何か
 イトマン絵画取引の背後にあったもの
 「絵画取引」の犯罪性
 「イトマン絵画」の行方
 一九九二年冬、ニューヨーク
 二〇〇〇年春、再びニューヨーク
第七章 ワイエス・コレクションはどこへ
 ワイエスの「レヴィン・コレクション」
 オークション以前
 「レヴィン・コレクション」、ニューヨークに帰る
第八章 会社が消え、銀行が消えて、絵も消えた
 あの画廊はどうなった?
 名古屋の名門ディーラーシップ
 ミロを「カローラ」になぞらえた男
 一兆円の男
 イ・アイ・イの失速と「高橋コレクション」
 長銀の終わり
 「名画まとめ買い」のアイチ
第九章 日本の「焼け残り品」バーゲンセール、大繁盛
 二〇〇一年春、見覚えのある絵が……
 「焼け残り品」バーゲンセール
 「塩漬け絵画」とは何か
 「もう待てない」、美術品が日本を出ていく
 還流、始まる
 ピカソの名品がまたひとつ……
 コンテンポラリーアートも、印象派も
 一九九七年に起きていたこと
 福岡からサンフランシスコへ
 日本を去る伝統美術
 「処分」できるもの、できないもの
第十章 アルバカーキの素朴な疑問
 ニューメキシコ州、アルバカーキ美術館
 「氷漬け」絵画で展覧会を
 「絶対に不可能だ」
 素朴な疑問
 来歴(画歴)の問題
第十一章 消えた名画を探して
 名画は蒸発したのか
 秋葉原のダリ、磐梯に現る
 オートポリス・コレクションから県立美術館へ
 お得意様は公立美術館
 意外なところに、意外な絵が
 政府、対策を講じる
 落ち着き先は国立博物館
 二十一世紀、東京都の実験始まる?
 買ったけれども家がない
 青森県の「アレコ」
 大阪の百五十億円コレクション
 公立美術館、予算なし
 私立美術館がつぶれ始めた
 アートをレンタル、名古屋ボストン美術館に行く
 美術館へ行こう
第十二章 インターネットで世界が変わる
 アート・マーケットのネット革命
 マーケットの「民主化」再び
第十三章 美術マーケットの新世紀
 世界の二大オークション会社、スキャンダルに揺れる
 オークション会社、手数料談合スキャンダルの意味
するもの
 一方、東京では
 日本と欧米、世代交代の波
おわりに
 みんな美術館が欲しかった
 「ひまわり」は日本に永住するか
 美術品流出は必然の「トレンド」
 アートの新しい態度
 これからの美術マーケット

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2011.03.08

▽江青のその後

福島香織『危ない中国 点撃! 福島香織の「北京趣聞博客」』(産経新聞出版)

とりあえず、本書の長いタイトルを説明します。まず、「点撃」には「クリック」とルビが振られています。「福島香織」は、本書の著者であり、産経新聞の中国総局の記者です(2009年に退社)。さらに、「趣聞」は「こねた」で、「博客」は「ブログ」だそうです。

要するに、著者が北京にいた間に書いていたブログ( http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/ )を、読者の反響も含めて再構成したのが本書ということになります(2007年発売)。

本書の八割近くもページが割かれているのが、中国における食の安全の問題です。中でも、ミンチ肉に段ボールを混ぜることでボリュームを増した「段ボール肉まん」を巡る騒動は記憶に残る事件です。さらに著者は、北京テレビによる「やらせ」と「謝罪」について、さまざまな推理を加えることで、中国における当局とマスコミの関係をかいま見せてくれます。

さて、本書の最後の方には、短いですが興味深い記事も掲載されています。それは、劉少奇の妻の王光美さんについてのルポで、王さんは、文革時代の1967年に逮捕され、文革が集結した1979年まで投獄されていました。

王さんが逮捕された背景には、毛沢東の妻の江青が、王さんに嫉妬したからではないか、と言われているそうです。王さんは、12年間の獄中生活を耐え抜きました。

一方、文革を主導した「四人組」の一人として裁判にかけられた江青は、1981年に死刑判決を受け、後に無期懲役に減刑されましたが、1991年に自殺したそうです。

[参考]▽紅衛兵とは何だったのか?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-a038.html

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▽紅衛兵とは何だったのか?

陳凱歌『私の紅衛兵時代-ある映画監督の青春』(刈間文俊訳、講談社新書)

唐亜明『ビートルズを知らなかった紅衛兵―中国革命のなかの一家の記録』 (同時代ライブラリー)

以前、レスリー・チャンの伝記を紹介しましたが、

▽レスリー・チャンの生涯が語るもの
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/08/post-c910.html

彼が主演した映画『覇王別姫』(邦題:『さらば、わが愛 覇王別姫』)の監督、陳凱歌が書いたのが『私の紅衛兵時代』です。

『覇王別姫』の中でも、文革時代の紅衛兵の暴れている様子が描かれていましたが、そもそも、どうしてああいった事態にいたってしまったのか? については、よくわからない部分もあります。

大躍進政策の失敗で失脚しかかった毛沢東が、紅衛兵というかたちで大衆を動員して行った権力闘争だった、というのが、まあ、通説といったところなんでしょうか。それでも、政治家の思惑だけで、そんなに大衆を扇動できるものなのか、という疑問も残ります。

唐亜明の『ビートルズを知らなかった紅衛兵』で描かれているのは、辛亥革命以降の唐一家の歴史であって、文革の時代についても、紅衛兵として活動した自分や兄弟、そして両親の受けた体験などを綴っています。

著者が、1989年に、二十年前に下放された村を訪問した際に、ある村人から言われた言葉は、印象に残ります。

《「あの文革では、被害者も加害者も区別できない。悪いこと全部を林彪と四人組のせいにするのはおかしい」》(p.353)

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2011.03.07

▽『ジミーの誕生日』

猪瀬直樹『ジミーの誕生日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』(文藝春秋)

ジミーとは、いまの天皇が皇太子の頃に、英語の授業の時に、先生からつけられた呼び名である。1948年のジミーの誕生日には、巣鴨プリズンにおいて、東条英機ら、いわゆるA級戦犯が、絞首刑に処せられた。

この事実の背後には、将来、天皇誕生日となる日に、死の刻印をするという、マッカーサーの意図があったのではないか、という説を検証しています。

[参考]▽ワシントンハイツ――アメリカ人と日本人が遭った時
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/01/post-4cf9.html

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2011.03.04

▽『ザッポス伝説』

トニー・シェイ『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』(本荘修二監訳、ダイヤモンド社)

本書は、ノンフィクションのビジネス書として売れてるようなので読んでみました。

まず、著者のトニー・シェイは、アメリカ生まれアメリカ育ちの台湾系アメリカ人。両親は、台湾からの移民だそうです。

ハーバード大学でコンピュータ・サイエンスを学び、オラクルに入社。オラクルに在職中に、ウェブサイトを連携させるネットワーク広告システム会社のリンクエクスチェンジを設立。このリンクエクスチェンジは、1999年にマイクロソフトに2億6500万ドルで買収されました。この当時、トニー・シェイは、まだ24歳だったそうです。

さらに、同じ年に、本書のタイトルにもなっているオンライン靴屋のザッポス( http://www.zappos.com/ )の創業にかかわります。このザッポスも、年商10億ドルにまで成長させ、2009年に、アマゾンに12億ドルで買収されます。

本書は、トニー・シェイの生い立ち、ザッポスの成長過程について、ザッポスのビジョンの三部からなっています。

もともとトニー・シェイのブログや電子メールなどをまとめたもののため、ちょっとまとまりに欠いている嫌いはあります。また、そもそもザッポス自体が日本ではサービスを行っていないこともあって、本書で初めてザッポスのことを知った人には、わかりにくい点もありますね。

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2011.03.01

▽奥田英朗の『最悪』は、ホリエモンの『成金』と比べてみると面白い

奥田英朗『最悪』 (講談社文庫)

ずいぶんと前に買ったまま本棚の奥に眠っていた奥田英朗『最悪』をひょんなことから読み始めて、あることに気がついたので、書いてみます。

読んだのは文庫判だったのですが、『最悪』の単行本が上梓されたのが1999年ですから、小説の舞台は、まあ、バブル崩壊後の1990年代後半といったところ。

三人の登場人物が、それぞれ最悪の境遇に追い込まれていくところがストーリーの骨格をなしています。

ネタバレにならない程度に、三人を紹介すると、川谷信二郎は川崎で町工場を経営している40代の男、藤崎みどりは、川谷の住んでいる地区にある銀行の支店で窓口業務をしているOL。そして、無職のチンピラである野村和也。

川谷の経営する町工場は、大手メーカーのひ孫請けくらいの存在で、バブル崩壊後の不況の中で、さまざまな問題を抱えています。そんな中で、川谷は、少しだけ自分の会社を大きくしようという夢を持ったことから、逆に、歯車は悪い方へ悪い方へと回り始めます。

また、銀行につとめる藤崎みどりは、古くさい体質の残る銀行でトラブルを抱え、悩み、そして最悪の事態に巻き込まれてしまいます。

無職のチンピラについてはおいておきますが、上記の二人は、製造業と金融という、かつての日本における花形産業のまっただ中にいた二人なわけです。そして、その二人が、必ずしも本人の責任とはいえないようなトラブルに巻き込まれてしまいます。特に、川谷は、昔だったら町工場の経営者が普通に抱いたはずの夢が、つまづきのきっかけとなってしまいます。

しかも、トラブルの原因を作った人たちに、大きな罰が与えられて終わるというカタルシスもなく、主人公の三人も、最悪の事態は免れたかもしれないが、かといって、ハッピーエンドでもない、という煮え切らない結末を迎えます。

1999年に発売された本書が話題になり、ベストセラーになったことを知ると、これが当時の時代の気分だったのかなあ、と思わざるをえません。要するに、「もう坂の上の雲は無いから夢を見るな、だけど、そう簡単に最悪に陥ることも無いんだよ」といったような……。

ところで先日、当ブログでは、ホリエモンこと堀江貴文の『成金』を紹介しました。

▽『成金』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/02/post-cdea.html

この『成金』を、『最悪』と比較してみると、非常に面白い。

まず、『成金』も、1990年代後半が舞台で、主人公たちは、だまされて、自分たちの作った会社の経営権を失います。しかし、彼らは、そんなことにはへこたれず、自分たちをだました相手に対しては、きっちりと仕返しをしようとします。さらに、『成金』の主人公は、ITビジネスという「坂の上の雲」を見据えたところで終わります。

もちろん『成金』も小説ですが、1990年代後半から2000年頃のIT業界の時代の空気は、かなりうまく再現できていたと思います。『最悪』に漂うドンヨリとした気分と、『成金』に貫かれている爽快感の違いは、おそらくは描かれている業界、つまり製造業+銀行業とIT業界の違いとも言えます。

同じ日本の同じ時代を描いているのに、業界によって、ここまで感じ方が違うのかを味わえる好対照な二冊といえますね。

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