2011.03.27

▽最悪の事態が起きた場合は?――『原発事故…その時、あなたは!』

瀬尾健『原発事故…その時、あなたは!』(風媒社)

本書は、1994年に死去した原子力学者の瀬尾健が存命中に行ったシミュレーションをまとめたもので、出版は1995年と少し古い。

日本でチェルノブイリ級の原発事故が起きたとしたら、という前提で、どの地域がどれくらいの放射能被害を受けるかについて、16ヶ所の原発基地ごとにシミュレーションしたものを図示している。また、高速増殖炉もんじゅと、核燃料の輸送中の事故のシミュレーションも加えられている。

日本の原発ではチェルノブイリ型の事故は起きないとされているし、騒ぎすぎるのはよくないとは思うが、原因はなんであれ最悪の事態が起きた場合には、どの程度の被害が予測されうるかを確認するという点では、見ておいても損はないと思う。

瀬尾氏のシミュレーションでは、福島で採用されているBWR(沸騰水型原発)については、BWR2というケースを想定している。それは、

《【BWR2】炉心冷却系が故障。炉心が溶融落下する。蒸気爆発は溶融体が格納容器の床に落下したときに起こり、格納容器が破壊する。》(p.177)

というもの。福島第一原発では、すでに部分的な炉心溶融と、格納容器の一部損壊は起きているが、「BWR2」で想定しているような、全面的な炉心溶融および格納容器の破裂という段階には、まだ至っていないものと思われる。

また、放射能の人体に対する影響についても、瀬尾氏の研究では、チェルノブイリ周辺600km圏内の7500万人の放射線の影響によるガン死は、将来も含めて24万6000人と推計しているのに対して、本書に記されているソ連放射線学界の見解では、ガン死は1168人にとどまっている、とされている。(p.86-87, 92)

また、瀬尾氏は全世界のガン死は将来も含めて70万人との推計を示している。この点については、瀬尾氏の推計が過大なのかもしれないし、公式発表が嘘をついているのかもしれない。

以上のようなことを踏まえた上で、下に、瀬尾氏が行った福島第一原発6号基(110万Kw)が「BWR2」レベルの事故を起こした時の影響についての図(P.35)を示しておきます。瀬尾氏の推計では、福島から見て210度(南南西)の方角の地域では、ガン死は314万人に至ると推計しており、うち東京では213万人としています。

20110327simulation
繰り返しになりますが、これはあくまでも最悪の場合の推計であって、実際の事故はこれほどひどい状態にはなく、また、放射能の影響は、ソ連やIAEA(国際原子力機関)の公式見解よりも大きくみていることに留意してください。

[追記]
瀬尾氏のシミュレーションのいくつか(志賀、福島、浜岡、柏崎、女川、敦賀、もんじゅ、伊方、鳥取、玄海、泊)は、『日本を滅ぼす原発大災害―完全シミュレーション』という本に掲載されているそうです。


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