2011.03.10

▽なぜシリコンバレーは繁栄しているのか――『現代の二都物語』

アナリー・サクセニアン『現代の二都物語 なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか』(山形浩生訳、日経BP社)

本書の副題は、「なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか」というものですが、この「ボストン・ルート128」とは、アメリカ東部のボストンを囲むように走る国道128号線のことで、アメリカ西部のシリコンバレーとともに、エレクトロニクスの技術革新を担ってきました。

タイトルの「現代の二都物語」とは、シリコンバレーとボストン・ルート128の二つの都市のことであり、なぜシリコンバレーが優位に立ち、ボストン・ルート128が没落していったのかを考察したのが本書です。

原著は1994年に上梓され、1995年に大前健一による邦訳が出版されましたが、絶版となったため、2009年にふたたび新訳として出版されました。

シリコンバレーにしろ、ボストン・ルート128にしろ、1970年代に隆盛をほこったものの、1980年代には、どちらも停滞期を迎えます。半導体製造企業の多かったシリコンバレーは、半導体メモリ市場を日本企業に奪われ、ミニコン・メーカーの多かったルート128は、ワークステーションやパソコンなどにユーザーを奪われていました。

しかし、本書の書かれた1990年代前半では、シリコンバレーは復活し、ルート128は沈んだままでした。それはどうしてか? というのが本書の中心テーマです。

著者は、ボストン・ルート128の企業は、一社ですべてを生産する垂直統合型を指向しますが、シリコンバレーの企業は、自社の得意とする製品や技術以外は、他社から調達する水平分業型を指向している、と指摘します。

ボストン・ルート128の企業は、自社技術にこだわるあまりに、技術革新のスピードについていけず、常に、複数の企業による最新技術のコラボレーションによって技術革新を進めていくシリコンバレーに敗れてしまいます。

そして、垂直統合を維持しようとして没落していったボストン・ルート128の企業は、日本のエレクトロニクス企業とも重なります。1990年代半ばに、本書の最初の邦訳判が出版された際には、日本の企業や自治体の関係者に与えたインパクは大きかったようで、日本にもシリコンバレーを創出させようとする試みはいくつもあったようです。しかし、そうした試みが、あまりうまくいっていないようなのが残念ですね。

[参考]
▽よくあるガラパゴス批判とは一線を画す
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2008/12/post-581c.html
▽なぜ負けたのか?――『日本「半導体」敗戦』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-b1e8.html
▽インテル・インサイドとアップル・アウトサイド――技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/11/post-feeb.html
▽iPodは何を変えたのか? を振り返る
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/02/ipod-7562.html
▽『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』が教えてくれたこと
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/12/post-b8b1.html


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