2011.03.28

▽ユニクロの本質とは?――『ユニクロ帝国の光と影』

横田増生『ユニクロ帝国の光と影』(文藝春秋)

本書は、『アマゾン・ドット・コムの光と影』などで知られるジャーナリストの横田増生が、ユニクロと、その経営者である柳井正の本質にせまったものである。

叙述の多くは、ビジネス誌や大手メディアなどで英雄視されている柳井や、賞賛されているユニクロの経営手法に対して、本当はどうなのかということを明らかにすることに費やされている。

中でも、元社員の次のような証言は、ユニクロという会社を端的に現している。

《「ユニクロにはオリジナルのコンセプトというものがない。言い換えれば、洋服を作る上での本質がない。ユニクロのヒット商品である、フリース、ヒートテック、ブラトップとつなげてみても、どういう洋服を作りたい企業なのかさっぱり見えてこない。ユニクロで働いているときは、いつも“一流のニセモノ”を作っているという気持ちから逃れることができなかった。それでも、ユニクロが日本のアパレル業界で圧倒的な強さを維持しているのは、生産管理や工程などについての細かな決めごとを徹底的に実行しているからだ」》(p.56)

いくら柳井正という経営者の考え方や、ユニクロの経営手法について書かれたものを読んでも、何か面白みに欠けるのは、この「哲学の無さ」にあったのだろうと気づかされた。また、柳井の後継者が決まらない最大の理由も、継承すべき理念が無いことに起因していると思われる。

本書は、ニュージャーナリズム的な叙述の手法や、アパレル業界の慣習の説明などで、やや煩雑な部分はあるけれども、これまでメディアで伝えられてこなかったユニクロの「影」の部分は、よくわかった。

[目次]
序章 独自調査によってメスをいれる
第1章 鉄の統率
第2章 服を作るところから売るところまで
第3章 社長更迭劇の舞台裏
第4章 父親の桎梏
第5章 ユニクロで働くということ 国内篇
第6章 ユニクロで働くということ 中国篇
第7章 ZARAという別解
第8章 柳井正に聞く
終章 柳井を辞めさせられるのは柳井だけだ


|

書評2011年」カテゴリの記事