2011.04.27

▽『突然、僕は殺人犯にされた~ネット中傷被害を受けた10年間』

スマイリーキクチ『突然、僕は殺人犯にされた~ネット中傷被害を受けた10年間』 (竹書房)

スマイリーキクチというお笑い芸人が、ある有名な殺人事件の犯人である、とネットで誹謗中傷された事件。2009年2月には、書き込みを行った複数の人物が摘発されました。

このニュースを聞いた時は、ネットの風評被害に対して警察も動くようになったんだな、と思ったのですが、スマイリーキクチ自身によって書かれた本書によると、そこに至るまでには、長い長い道のりがあったことがわかります。

では、どうしてこういう風評被害がやまないのか? 私は以前、岡田斗司夫の次のような言葉を紹介しています。

▽岡田斗司夫が語るネット社会の欠陥
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/05/post-7378.html
《「訂正責任は被害者の側にある」ということにされちゃっている。これは人間性が低いからとか、頭が悪いからではなく「ネット社会が持つ本質的な欠陥」なんですよ。》(p.119)

いったんネットに悪い噂がばらまかれると、それを訂正する責任は、被害者の側にあることにされてしまう。スマイリーキクチの件では、元刑事の書いた本が、風評被害に拍車をかけてしまいます。

では、こういう書き込みをする人たちの動機はなんなんでしょうか。私は、以前、初音ミクに代表されるネットのコラボレーションを「満足の交換」という概念で説明したことがあります。

「初音ミク」ムーブメントから考えるCGMの弱点
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2007/11/cgm-4803.html
《CGMは、「効用の交換」、つまり「満足の交換」によって支えられていると考えています。それも、かなり非対称かつ間接的な「満足」の交換の体系によってなりたっていると捉えています。》

上記のエントリーではネットのCGMの良い面に焦点をあてているために触れませんでしたが、現実には、他人にマイナスの効用をぶつけることでプラスの効用を得る、つまり、他人に不満足を与えて歪んだ満足を得るタイプの人間がいる、というのは理解してもらえると思います。

本書は、なかなか重い現実が描かれていて、読むのもつらい部分があるのですが、それでも、著者の毅然とした態度が良い結果をもたらした、希望の見える一冊です。

[目次]
第一章 :突然の誹謗中傷
第二章 :謎の本
第三章 :ひとすじの光明
第四章 :正体判明
第五章 :重圧、そして新たなる敵
第六章 :スゴロク
特別付録:ネット中傷被害に遭った場合の対処マニュアル


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