2011.04.17

▽『地震と社会』

外岡秀俊『地震と社会〈上〉「阪神大震災」記』(みすず書房)

外岡秀俊『地震と社会〈下〉「阪神大震災」記』(みすず書房)

1995年に阪神大震災が起きた日の夜、AERA編集部に在籍していた外岡秀俊は、その夜に神戸に入り、被災地の状況をレポートした。一年間、AERAに連載を続けた後、『みすず』に場所をかえて、地震と社会を多面的に描き続けた。そして、上下巻あわせて700ページを超える大部となった本書が、1998年に刊行された。

地震予知にはらむ問題、震災のイメージ形成にマスメディアがどのように影響を与えたか、救助の実態はどのようなものだったか、などなど、一つ一つのテーマだけでも一冊の本がかけるほど重厚に、データや証言が積み上げられている。

特に第四章の「崩れた神話」が興味深い。長らく、日本の建築物は耐震性能に優れているためにアメリカやメキシコのように地震で崩落することはないという「安全神話」があったが、それが阪神大震災によって崩壊した。

日本では1923年の関東大震災以来、これを念頭に耐震基準が定められてきた。しかし、ここに落とし穴があったのではないか、と土木学会の河村忠男が指摘している。

《「一つは、『関東大震災級に耐える』という言葉を金科玉条として、予測や評価を怠ったことだ。もう一つは、技術者が傲慢になった過程は、コンピューターが安くなった時代に対応している。解析、設計で最適解を求めることが容易になり、常に自然と対話し、脅威を考えながら計算するという空気が現場から薄れていった」。》(p.223)

[目次]
外岡秀俊『地震と社会〈上〉「阪神大震災」記』(みすず書房)
序章 方法について
第1章 予知の思想
第2章 災害像が形成されるまで
第3章 もう一人、救えなかったか
第4章 崩れた神話
第5章 都市の履歴

外岡秀俊『地震と社会〈下〉「阪神大震災」記』(みすず書房)
第6章 避難と救援
第7章 復興への道
第8章 人の安全保障


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