2011.04.14

▽生き残る判断 生き残れない行動

アマンダ・リプリー『生き残る判断 生き残れない行動』 (岡真知子訳、光文社)

大震災の後は、この手の本が気になってしまいます。いまさら、という気もしますが……。

著者のアマンダ・リプリーは、米タイム誌の女性シニア・ライター。2001年に起きた9.11テロの三周年の行事において、WTCビルから生還できた人たちの証言を聞いているうちに、事故や災害から生還できた人と生還できなかった人の思考や行動のどこに違いがあったのだろうか? という疑問を抱いて調査を開始します。

著者によると、生還に向けての三段階のプロセスがあるそうです。まず、起きたことを認めようとしない「否認」。自分だけは助かる、と楽観的に考え、身に迫っている危険を受け入れない人は、かなりいるそうです。

続いて、第二段階が「思考」。起きている事象について、どう対処すべきかについて考える段階で、「否認」の段階を抜けて、早く「思考」の段階へ移れるかが生還へのカギを握っています。そして、第三段階が生還への行動を起こす「決定的瞬間」。

本書は、9.11テロのほか、ハリケーン「カトリーナ」、ポトマック川の旅客機墜落事故、スマトラ沖地震など、さまざまな事故や災害の生還者の証言を集めていて興味深く読めます。

[目次]
序文「人生は融けた金属のごとくなって」
 知ってもらいたいと生存者が望んでいること
 救助犬の問題
 運など当てにならない
 生存への行程

第一部 否認
第一章 立ち遅れ 北タワーでのぐずついた行動
 「心配するな。それはきみの想像だよ!」
 「ビルから出ろ!」
 赤い服の女性
 四・五キロのプランター
第二章 リスク ニューオーリンズにおける賭け
 死角
 野球のバットと十字架
 リスクの科学
 恐怖のヒエラルキー
 自信過剰
 不安を感じない男
 まずあなた自身のマスクをしっかりつけよ

第二部 思考
第三章 恐怖 人質の体と心
 恐怖の生理学
 想像上の航空機墜落
 ウサギの穴へ
 拳銃の名人ができるまで
 生存ゾーン
 視野狭窄
 脳を大きくすること
 戦闘でのラマーズ法
 人質犯人
第四章 非常時の回復力 エルサレムで冷静さを保つ
 生存者のプロフィール
 微妙な差異
 特殊部隊の兵士は常人ではない
 トンプソン家の双子
 むき出しのわたしの脳
第五章 集団思考 ビバリーヒルズ・サパークラブ火災でのそれぞれの役割
 「わたしは生き残りました。あなたも生き残っていることを願っています」
 ビバリーヒルズ火災の社会学
 数が多ければそれだけ安全
 結婚式
 避難の科学
 煙は目に入る
 バスボーイについていく
 従順な群集
 グランド・バイユー方式
 二つの町の物語

第三部 決定的瞬間
第六章 パニック 聖地で殺到した群集
 倒れた女性
 群集の物理学
 パニックの必要条件
 実験室のパニック
 家具販売店イケアでの悲劇
 一人のパニック
第七章 麻痺 フランス語の授業で死んだふりをする
 催眠状態
 災害時の行動停止
 「ぼくは人間ではありませんでした」
 沈みゆく船でタバコを一服
 麻痺状態からの脱出
第八章 英雄的行為 ポトマック川での自殺未遂
 「これは小型飛行機ではない」
 機上の英雄
 電気を帯びたような冷たさ
 英雄を心理分析する
 「彼はどんどん近づいてきたんです」
 英雄のデータベース
 夢想についての問題
結論 新たな直感を生みだす
 「ワーテルローからじかに聞こえてくるような声」
 退化
 「何を実践できるか想像してみてください
 恐怖をものともせずに
 テディベアと車椅子

著者覚え書き
訳者あとがき


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