2011.05.04

▽15万人の命はなぜ奪われたのか――『イラク崩壊』

吉岡 一『イラク崩壊―米軍占領下、15万人の命はなぜ奪われたのか』(合同出版)

イラク戦争の現地ルポといえば、アメリカやヨーロッパのジャーナリストによるものが多いのですが、本書は、日本人による本格的なイラク戦争のルポです。

著者は、朝日新聞の中東アフリカ総局特派員を務めたこともある吉岡一。

イラク人だけで15万人もの死者を出したイラク戦争――、そして、イスラム過激派だけでなく、イラクの一般大衆や、中東の民衆をテロリストの範疇に押し込めていく米国のイラク支配の異常さを観察するうちに、著者はイラク戦争について次のような感想を持つようになります。

《イラク戦争の真の目的は、我々が普通に考えていたこと以外の何かだったのではないか。「対テロ戦争」も「石油利権」も「中東民主化」も実は脇役、付随的な役回りにすぎず、本当の狙いは実はもっと別のところにあるのではないか、と。》(p.18)

著者は、中東におけるイスラエルの振る舞い、そして、その背後にアメリカの存在があることを指摘した上で、次のような結論を導き出しています。

《実はイラク戦争の陰で、同じ唯一神を巡る複数の宗教イデオロギー同士が衝突し、のたうち回っていたのかもしれない。》(p.390)

そう。

だからアメリカ軍がイラクから撤退しても、ビンラディンを暗殺しても、この争いは収拾がつかないのではないか、と思ってしまいます。


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