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2011年5月

2011.05.31

▽『セックスメディア30年史』

萩上チキ『セックスメディア30年史 欲望の革命児たち』(ちくま新書)

本書の著者は1981年生まれの30歳。それがセックスメディアの30年史についてものすとは(笑)。それに「メディア」というタイトルの割には、出会い系サイトという「コミュニケーション」に関する考察があったり、性具や性風俗に章が割かれていたりして、やや羊頭狗肉な感は否めない。

狭義のセックスメディアに関しては、《第3章 何がエロ本を「殺した」か?》と、《第4章 「エロは無料」の衝撃》が興味深い。もともとエロに関しては、アングラな分野でもあることからデータや証言が乏しいので、本書のインタビューは貴重な資料といえよう。

第3章では、エロビデオを紹介する情報誌『オレンジ通信』の編集者がエロ本の盛衰を、また、エロ本を専門に扱う芳賀書店の社長がエロ本を売る側の事情を語っている。

また、第4章では、アダルト動画のサンプルを配布するサイトの紹介するサイト『動画ファイルナビゲーター(動ナビ)』の管理人、そして、アダルト・コンテンツを販売する『DMM.R18』というサイト運営者の証言がある。

これらは、エロビデオ情報誌→アダルト動画サイトを紹介するサイト、エロ本専門店→アダルト・コンテンツ販売サイト、という変遷ととらえ直すこともできる。本書は、このあたりをもっと深掘りしても良かったのではないだろうか。

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2011.05.30

▽『ニッポンの書評』

豊崎由美『ニッポンの書評』(光文社新書)

書評講座の講師もつとめている著者が、PR誌に連載した書評に関する考察をまとめたもの。15のテーマと対談で、著者の書評に対する心構えが書かれている。

また、書評ブログやAmazonのカスタマーレビューに対する考察は、活字サイドからのネット社会への批判と読めるし、書評をめぐる国際比較も詳しく、まさに「ニッポンの書評」をあるがままに浮かび上がらせていて面白い。

[目次]
第1講 大八車(小説)を押すことが書評家の役目
第2講 粗筋紹介も立派な書評
第3講 書評の「読み物」としての面白さ
第4講 書評の文字数
第5講 日本と海外、書評の違い
第6講 「ネタばらし」はどこまで許されるのか
第7講 「ネタばらし」問題日本篇
第8講 書評の読み比べ―その人にしか書けない書評とは
第9講 「援用」は両刃の剣―『聖家族』評読み比べ
第10講 プロの書評と感想文の違い
第11講 Amazonのカスタマーレビュー
第12講 新聞書評を採点してみる
第13講 『IQ84』一・二巻の書評読み比べ
第14講 引き続き、『IQ84』の書評をめぐって
第15講 トヨザキ流書評の書き方
対談 ガラパゴス的ニッポンの書評―その来歴と行方

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2011.05.14

▽『原発労働記』(『原発ジプシー』改題)

堀江邦夫『原発労働記』(講談社文庫)

講談社文庫版の『原発ジプシー』は、ながらく絶版だったのですが、加筆修正が施された上で『原発労働記』として再刊されました。

1978年から79年にかけて、美浜、福島第一、敦賀の三つの原発で働いた潜入ルポです。もちろん記述されている作業の内容自体は古いものなのですが、電力会社の社員と、協力会社と呼ばれる外部企業や、その下請けの社員という構造自体は、まったく、かわっていません。

そして、巻末の「跋にかえて」で著者は、電力会社の社員と、外部企業や下請け社員との間には、被ばく量に大きな差があるという事実を示した上で、次のような問題を指摘しています。

《放射線が人体に与える影響のほどについては、現在においてもまだよくわかってはいない》(p.360)

[参考]▽当ブログで売れた本――2011年原発関連
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/05/2011-fe88.html

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2011.05.13

▽吉村昭『関東大震災』

吉村昭『関東大震災』(文春文庫)

1923年(大正12年)に発生した関東大震災――。
その十八年前の明治38年に、今村明常助教授は、地震は百周年を周期として発生すること、明治38年が安政の江戸大地震からちょうど50年にあたること、それゆえに、今後50年以内に東京が大地震に襲われること、そして、その場合には死者数は十万から二十万を超えること、を予想した。この予測は、社会にセンセーションを巻き起こしたものの、地震学者からは非難された。
しかし――。

《萎縮した思いで日々を過ごしてきた今村は、破壊されつくした地震計を見渡しながら、自分の予想が確実に的中したと思った。大地は、依然として激しく揺れ続けている。勝ったという優越感が、かれの胸を熱くした。》(p.45)

本書は吉村昭が関東大震災で何が起きたか? を多角的に描き出した傑作ですが、すでに関東大震災から87年がたっており、また、関東大震災が起きるんじゃないのか、と思ってしまいます……。

[目次]
「大地震は六十年ごとに起る」
 群発地震
 今村説vs大森説
地震発生―二十万の死者
 大正十二年九月一日
 激震地の災害
 東京の家屋倒壊
 本所被服廟跡・三万八千万名の死者
 浅草区吉原公園・娼婦たちの死
 避難場所・上野公園
第二の悲劇―人心の錯乱
 “大津波”“富士山爆発”流言の拡大
 朝鮮人来襲説
 自警団
 列車輸送
 新聞報道
 大杉栄事件
 大杉事件と軍法会議
復興へ
 死体処理
 バラック街
 犯罪の多発
 大森教授の死
あとがき

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2011.05.04

▽15万人の命はなぜ奪われたのか――『イラク崩壊』

吉岡 一『イラク崩壊―米軍占領下、15万人の命はなぜ奪われたのか』(合同出版)

イラク戦争の現地ルポといえば、アメリカやヨーロッパのジャーナリストによるものが多いのですが、本書は、日本人による本格的なイラク戦争のルポです。

著者は、朝日新聞の中東アフリカ総局特派員を務めたこともある吉岡一。

イラク人だけで15万人もの死者を出したイラク戦争――、そして、イスラム過激派だけでなく、イラクの一般大衆や、中東の民衆をテロリストの範疇に押し込めていく米国のイラク支配の異常さを観察するうちに、著者はイラク戦争について次のような感想を持つようになります。

《イラク戦争の真の目的は、我々が普通に考えていたこと以外の何かだったのではないか。「対テロ戦争」も「石油利権」も「中東民主化」も実は脇役、付随的な役回りにすぎず、本当の狙いは実はもっと別のところにあるのではないか、と。》(p.18)

著者は、中東におけるイスラエルの振る舞い、そして、その背後にアメリカの存在があることを指摘した上で、次のような結論を導き出しています。

《実はイラク戦争の陰で、同じ唯一神を巡る複数の宗教イデオロギー同士が衝突し、のたうち回っていたのかもしれない。》(p.390)

そう。

だからアメリカ軍がイラクから撤退しても、ビンラディンを暗殺しても、この争いは収拾がつかないのではないか、と思ってしまいます。

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▽『CIA 失敗の研究』

落合浩太郎『CIA 失敗の研究』(文春新書)

アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンの死亡は、当のアルカイダによっても確認されたようです。今回の暗殺計画でもCIAが活躍したことでしょう。

2005年に上梓された本書『CIA 失敗の研究』では、CIAの二つの失敗が指摘されています。一つ目は、冷戦が終わった後に、国家間の戦争よりも、テロとの戦いが重大な脅威となりつつあったのに、それに対応することが遅れたこと。その帰結として、9.11のテロがもたらされます。このテロを、CIAやブッシュ大統領周辺は、事前に知っていてわざとやらせたのではないか? という疑惑がありますが、本書を読む限りでは、むしろ、断片的な情報はつかんでいたのに、組織的な対応ができなかったようです。

そして、この失敗が尾を引いて、「イラクのフセイン大統領はアルカイダとビンラディンを支援している」、「イラクは大量破壊兵器を隠し持っている」というブッシュ政権の見立てに迎合した調査報告をでっち上げてしまいます。これが二つ目の失敗。

アフガニスタン戦争までは、国際世論の支持もあったかと思いますが、さすがに、イラク戦争は無理筋でした。

ちなみに本書によると、現在のCIAは昔のように独自判断で要人の暗殺を行うことは認められておらず、大統領の決定による文書が必要とのこと。ビンラディンに関しては、なんと9.11の三年前に当時のクリントン大統領が署名した暗殺命令書が存在し、ブッシュ、オバマと引き継がれてきたのだそうです。

こうしてみると9.11テロは、自らが暗殺対象としていた相手の力量を過小評価した結果、思いもよらないテロを仕掛けられた、ということができますね。

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2011.05.03

▽『ブッシュの戦争』

ボブ・ウッドワード『ブッシュの戦争』 (伏見威蕃訳、日本経済新聞社)

十年一昔とは言いますが、もうあれから十年もたつのか……と感慨深いものがあります。

本書『ブッシュの戦争』は、2001年9月11日に起きたテロに、当時のブッシュ政権の面々がどう対処したかを記録したドキュメンタリーです。

著者は、ウォーターゲート事件をスクープしたボブ・ウッドワードで、圧倒的な取材力によって、9.11からの百日間を緻密に再現しています。今読んでも、当時のことをまざまざと思い出させます。

9.11からの百日間というと、ニューヨークのツインタワーへのテロ発生から、オサマ・ビンラディンとアルカイダ潜伏しているとされるアフガニスタンに米軍が侵攻し、首都カブールを陥落させるところまで、となります。

ここまでのテロとの戦いは、国際的にも支持されていたと思いますが、ここから先がいけませんでした。アルカイダの背後には、イラクのフセインがいるはずだ、イラクは大量破壊兵器を隠し持っているはずだ、とテロとの戦いを拡大させていくところで本書は終わります。

では、イラク戦争はどうなったのでしょうか?

テロとの戦いを始めた十年後となる今年の末までに、イラクから米軍は完全に撤退しますが、イラクの治安状態は必ずしも安定したものとは言い難い状況にあります。サダム・フセインは捕獲して処刑したものの、イラク戦争は正義の戦争とは言い難いものであり、アメリカの威信は大きく傷ついたままです。また、アフリカから中東にかけてのイスラム世界も大きく揺らいでいます。ビンラディンの殺害が、新たな混乱の火種にならなければよいのですが……。

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2011.05.02

▽『大仏破壊―ビンラディン、9・11へのプレリュード』

高木徹『大仏破壊―ビンラディン、9・11へのプレリュード』 (文春文庫)

国際テロ組織アルカイダの指導者であるオサマ・ビンラディンが殺害されたというニュースが流れています。

ビンラディンに関しては、病死説も流れていたので、私は、すでに死んでいるものだと思っていました。時折流れてくるビンラディンのメッセージは、アルカイダのメンバーの創作だと思っていました。

ですから、今回のニュースを聞いて、ビンラディンはまだ生きていたのか! という驚きとともに、もしかしたら人違いかもしれないのでは? という疑念も拭い去れません。もうしばらく事態の推移を見たいと思います。

さて、本書は、2001年に発生した9.11テロの半年前に、アフガニスタンにあるバーミヤンの大仏がタリバン政権によって破壊されたという事件の背景にせまったものです。

当時のアフガニスタンを支配していたタリバンは、宗教的には真面目な政権で、庶民からもある程度の支持は得ていたようです。イスラム原理主義の抑圧的な政権というイメージは、欧米のメディアによって流されたもののようです。

しかし、そのタリバン政権は、国際的なテロ組織であるアルカイダとオサマ・ビンラディンが寄生するかたちで乗っ取られた、というのが著者の見立てです。

彼らによって破壊されたバーミヤンの大仏は、二つの大仏が並んで立っているもので、それは、9.11のツイン・タワー破壊へのプレリュードではなかったか――など、隠された事実が掘り起こされていて、今でも興味深く読むことができます。

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2011.05.01

▽当ブログで売れた本――2011年原発関連

2011年3月11日の大震災以来、原発関連の本が売れています。まあ、ランキングをつけるほどは売れていないので、あくまでも十傑ということで・・・・・・。

▽最悪の事態が起きた場合は?――『原発事故…その時、あなたは!』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-88e4.html
▽『日本を滅ぼす原発大災害―完全シミュレーション』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-88e4.html
▽パニックにならないためにも――『放射能で首都圏消滅―誰も知らない震災対策』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/post-9bf4.html
▽柏崎刈羽「震度7」の警告
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/7-ac7d.html
▽『原子炉時限爆弾』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-6cdf.html
▽『チェルノブイリ―アメリカ人医師の体験』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/post-3770.html
▽『朽ちていった命』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/post-9d7f.html
▽『地震と社会』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/post-3c76.html
▽『甦る11棟のマンション―阪神大震災・再生への苦闘の記録』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/11-8373.html
▽大震災と原発と新聞と――『巨怪伝』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-8445.html

以上の10冊のうち、『原発事故…その時、あなたは!』、『日本を滅ぼす原発大災害―完全シミュレーション』、『放射能で首都圏消滅―誰も知らない震災対策』の3冊はよく売れていますね。

あと、当ブログでは紹介していないのですが、売れた本を紹介しておきます。ながらく絶版となっていた『原発ジプシー』は、5月に新装改訂版が出版されるとのこと。

▽堀江邦夫『原発ジプシー』(講談社文庫)

▽有馬哲夫『原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史』(新潮新書)

▽『隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ』

▽『これから起こる原発事故~原発問題の専門家から警告』(別冊宝島1469)

▽小林圭二、西尾漠 『プルトニウム発電の恐怖―プルサーマルの危険なウソ』(創史社)

田中三彦『原発はなぜ危険か―元設計技師の証言』(岩波新書)

高木仁三郎『原発事故はなぜくりかえすのか』(岩波新書)

高木仁三郎『プルトニウムの未来―2041年からのメッセージ』 (岩波新書)

▽七沢潔『原発事故を問う―チェルノブイリから、もんじゅへ』 (岩波新書)

広瀬隆『東京に原発を!』(集英社文庫)

広瀬隆『新版 危険な話―チェルノブイリと日本の運命』(新潮文庫)

広瀬隆『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(集英社新書)

日下公人、武田邦彦『つくられた「環境問題」―NHKの環境報道に騙されるな!』(WAC BUNKO)

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