2011.05.03

▽『ブッシュの戦争』

ボブ・ウッドワード『ブッシュの戦争』 (伏見威蕃訳、日本経済新聞社)

十年一昔とは言いますが、もうあれから十年もたつのか……と感慨深いものがあります。

本書『ブッシュの戦争』は、2001年9月11日に起きたテロに、当時のブッシュ政権の面々がどう対処したかを記録したドキュメンタリーです。

著者は、ウォーターゲート事件をスクープしたボブ・ウッドワードで、圧倒的な取材力によって、9.11からの百日間を緻密に再現しています。今読んでも、当時のことをまざまざと思い出させます。

9.11からの百日間というと、ニューヨークのツインタワーへのテロ発生から、オサマ・ビンラディンとアルカイダ潜伏しているとされるアフガニスタンに米軍が侵攻し、首都カブールを陥落させるところまで、となります。

ここまでのテロとの戦いは、国際的にも支持されていたと思いますが、ここから先がいけませんでした。アルカイダの背後には、イラクのフセインがいるはずだ、イラクは大量破壊兵器を隠し持っているはずだ、とテロとの戦いを拡大させていくところで本書は終わります。

では、イラク戦争はどうなったのでしょうか?

テロとの戦いを始めた十年後となる今年の末までに、イラクから米軍は完全に撤退しますが、イラクの治安状態は必ずしも安定したものとは言い難い状況にあります。サダム・フセインは捕獲して処刑したものの、イラク戦争は正義の戦争とは言い難いものであり、アメリカの威信は大きく傷ついたままです。また、アフリカから中東にかけてのイスラム世界も大きく揺らいでいます。ビンラディンの殺害が、新たな混乱の火種にならなければよいのですが……。


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