2011.06.30

▽『原発・正力・CIA』

有馬哲夫『原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史』(新潮新書)

「原子力の父」正力松太郎については、佐野眞一の『巨怪伝』を紹介したことがあります。

▽大震災と原発と新聞と
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-8445.html

『巨怪伝』が書かれた頃は、まだCIAの秘密文書が公開されていなかったのですが、本書『原発・正力・CIA』の著者、有馬哲夫氏は、それらを入手して、正力が「ポダム」、「ポジャクポット」というコードネームで呼ばれたCIAのスパイだったことを明らかにします。

読売新聞の社主であり、反共産主義者だった正力は、日本中にマイクロ波通信網を張り巡らせて、テレビやラジオだけでなく、さまざまな通信を行う構想を実現しようとしていた。その一環として1953年に日本初の民放テレビ局として「日本テレビ放送網」が設立された。しかし、このマイクロ構想は、当時の政局や電電公社の反対などにより実現しなかった。

1954年に第五福竜丸の乗組員が被爆する事故が起きると、日本国内の反米・反原発感情が高まった。政治家としての野心に燃える正力は、原子力の平和利用、つまり原子力発電に飛びついた――。

以前、『財政危機と社会保障』という本を紹介しましたが、

▽日本経済の正体(3)――『財政危機と社会保障』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/10/post-048d.html

その時、公共工事のばら巻きだけでなく、社会保障のばら巻きにも田中角栄が関与していたことを知って少々驚きました。つまり、現在問題となっている日本のお金の使い方を規定したのが田中角栄だったわけですが、新聞やテレビ、あるいは原子力発電という戦後の日本の社会インフラを規定したのが正力だった、と言うことができるわけです。

正力は、結局、総理大臣になるという野望は達成できませんでしたが、田中角栄なみの政治力はあったと言えるのかもしれません。


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