2011.06.28

▽『東京考現学図鑑』――関東大震災から復興していく東京の記録

今和次郎、吉田謙吉『東京考現学図鑑』(泉麻人編著、学習研究社)

「考現学」という言葉があります。考古学に対して作られた言葉で、「いま」を研究する学問なのですが、そもそも考現学は、柳田國男に師事して民俗学の研究をしていた今和次郎(こん・わじろう)らによって、1925年に始められました。

1925年というと、1923年に関東大震災が起きた二年後にあたります。

《一昨年の大震災のあった夏、震災以前、しきりに華美に傾いた東京人の風俗を、是非記録にとっておきたく私は考えた。》(p.8)

今は、大震災以前から、東京の風俗を記録したいと考えていたようですが、実際に、活動を始めた理由は、やはり関東大震災によって、いろいろなものが失われたことが大きかったのだと思います。

そして、今年3月に発生した東日本大震災の直前に出版された本書は、今らの仕事に、コラムニストの泉麻人が解説や現在の東京の調査を加えたものなのですが、本書自体は、東日本大震災の起きる前に企画されていたわけで、そのシンクロニシティに驚いてしまいます。

本書によると、震災前の東京でもっとも栄えていた街は銀座だったのですが、震災以後は、新宿へと東京の中心は移っていったそうです。そして、1927年に新宿の紀伊國屋が、書店業に進出した際の記念行事として、今らの仕事を展示する際に「考現学」という言葉を創り出したのだそうです。

本書には、銀座、浅草、新宿、学生街などの街並みや、そこを行き交う普通の人々の服装や生態がスケッチされています。また、浅草の乞食や風俗街の記録などもあって、多角的に、震災後の東京を浮かび上がらせています。

一般的なフィールドワークの手法だけでなく、カフェーへの潜入調査のようなものがあったり、新宿三越で買い物をしているマダムを尾行したりと、調査の手法そのものも楽しく読むことができます。


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