2011.06.20

▽『東電帝国』――その失敗の本質

志村嘉一郎『東電帝国その失敗の本質』(文春新書)

本書のあとがきによると、4月1日に執筆が決まり、原稿の締切が4月20日の突貫工事だったという。それでも、内容が、類書の引けをとらないのは、著者が、朝日新聞でながらく電力担当記者をしていたおかげである。

しかも、朝日新聞退社後しばらくして、いわゆる「原子力村」からはじき出されてしまい、研究者としての道を歩んでいたことが、歯に衣着せぬ本書が生まれた伏線となっている。

特に、第二章の「朝日が原発賛成に転向した日」は、原子力村がどのようにマスコミを味方につけていったかが、マスコミの内部からの証言として綴られており、とても興味深い。

また、これまで公に出来なかった事実も本書には盛り込まれている。その中でもとりわけ驚いたのが、中部電力が浜岡原子力発電所の原子炉設計の技術者を採用しようとした時のエピソード。東京大学大学院の原子力工学で博士号を取得した院生を、中部電力は、なんと「三年間の契約社員で」(p.198)採用しようとしたという。

浮き世離れした電力業界の実態を描いた労作である。


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