2011.06.18

▽『フェリカの真実』――ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由

立石泰則『フェリカの真実 ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由』(草思社)

本書は、ページ数も少な目で、活字も大きいので、ちょっと外れかなと思って読み始めたのですが、意外と当たりでした。

ただし取り上げているのが非接触型ICカード「フェリカ」という目立たない製品であり、しかも、ソニーがビジネス構築に失敗したという内容で、今ひとつ本書にスポットは当たらなかったようです。

ホントは、こういう失敗の研究の方が有意義なんですけどね。

さて、本書によると、フェリカ開発の端緒は1987年の暮れにまで遡る。宅配業者の小包の仕分けを容易にするための無線タグの開発から始まった。

続いて、鉄道用のICカード乗車券とビル用の入退室管理システムの開発にシフトしたのが1988年。

1992年には入退室管理システムの開発は断念するとともに、香港の地下鉄の入改札システムの開発に力を入れるようになり、1995年に受注を獲得する(生産開始は1997年)。

さらに1999年にシンガポールでもフェリカが採用され、インド、タイ、中国でも受注を勝ち取っている。

続いてソニーは、JR東日本の受注をとろうとしたが誤算が生じた。ICカードの分野では、フェリカは国際規格として、認められなかったのだ。欧州勢の横やりがあったと言われているが、いずれにせよ東日本の入札に応じるには国際規格として認められる必要があった。

そこでソニーは、フェリカのICチップの部分ではなく、通信技術の部分で国際規格として認定された。それがNFC(Near Field Communictions)であり、国際規格取得の問題は解消された。

ここからソニーは、単なるICカードの製造・販売から、フェリカを軸にしたコンテンツのライツ販売のビジネスへと舵を切ろうとします。

フェリカの開発者で本書の主役の一人でもある日下部進は次のように語っています。

《デジタル時代のコンテンツ・ビジネスは、音楽にしろ映画など動画にしろ、視聴を許可するライツ(権利)を売るというまったく新しい売り方をすべきだと考えたのです》(p.122)

以上が、長い前振りで、本書の半分くらいまでが費やされています。そして、後半は、ソニーの新しいコンテンツ・ビジネスの話になるかと思いきや、ソニーのフェリカ事業における迷走ぶりが描かれています。日本の電子マネー事情に通じていないと、読むのに骨が折れるかもしれませんが、よくまとまっているドキュメントだと思います。


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