2011.07.05

▽『危ないデザイン』――あの事件の原因を探る

日経アーキテクチュア『危ないデザイン』(日経BP社)

日経グループの専門誌といえば、時々、すごく渋いけれど、重要な特集をまとめたムックを出すことがあるのですが、

▽『甦る11棟のマンション―阪神大震災・再生への苦闘の記録』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/11-8373.html

本書『危ないデザイン』も、なかなか読みどころの多い一冊です。事件や事故の発生した建築物を紹介しつつ、どういうデザイン、つまり設計が、それらの原因であったのか、そして、どう改善すべきかを図解入りで解説していきます。

2001年に新宿歌舞伎町で起きたビル火災は、避難路であるはずの階段からの出火が原因でしたが、ビルの「設計者は法律をクリアすることで安全が守られたと思い込み、その先に起こるかもしれない危険に対処することを怠った」(p.160)と、本書では指摘しています。本書が発行されたのは2月で、東日本大震災の前でしたが、この指摘は、津波対策や非常用電源の備えを怠った福島第一原発事故にも通じるものといえます。

また本書には、多くの人の記憶に残っている事件・事故に関する建築物も数多く掲載されています。

たとえば、十一人の死者を出した明石市の歩道橋は幅6mでしたが、階段の幅は3mしかなく人が滞留しやすい構造だったそうです。また、六本木ヒルズの回転扉は男児の死亡事故が起きるまでに十二件の事故が発生していたようですし、シンドラー社のエレベーターも死亡事故が起きるまでに不具合が何度も報告されていたそうです。これらの事故は、早く対策を講じていれば、回避できたのかもしれません。

この他にも、落下や衝突の多発する建築物や、外壁などが剥落する事故などの実例が多数紹介されていて、現代の建造物にも、意外と危険なデザインが多いのだということに改めて気づかされます。本書のせいで、ビルの近くを歩くのが、ちょっと怖くなるかもしれませんね。


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