2011.07.15

▽『下町ロケット』――中小企業の戦い

池井戸潤『下町ロケット』(小学館)

第145回の直木賞受賞作。

エンジン部品の開発・製造を行っている大田区の町工場、佃製作所のもとに、ある日一通の訴状が届いた。容赦の無い法廷戦略を駆使して、ライバル企業を叩き潰すことで知られるナカシマ工業からだ。佃製作所の特許申請の穴をついて、特許侵害を主張し、多額の賠償金を要求してきた。佃製作所を追い詰めて、特許ごと乗っ取るのが真の狙いだ。

この裁判の成り行きを見つめるもう一つの大企業があった。ロケット開発を進めている帝国重工も、佃製作所の持つ別の特許を奪い取る必要があった。佃製作所の弱みにつけ込んで、特許を買い叩こうとする帝国重工。

さて、この二つの戦いはどうなるのか――。

まあ、この先は、小説なんで、読んでお楽しみにというところですが、この二つのエピソードは、日本の企業社会の負の側面が現れています。それは、中小企業が、いくらユニークな技術を開発して特許を取得しても、それを大企業があの手この手を使って奪い取ろうとすることです。中小企業であろうと、対等なパートナーと認めて、業務提携するなり、適正な使用料を払うなりすればいいのに、弱みを探して追い込んで、奪い取ろうとする。

日本のベンチャーは、イグジット(出口)戦略が立てられない、とよく言われるのは、こういうことも背景にあると思います。

[参考]
▽奥田英朗の『最悪』は、ホリエモンの『成金』と比べてみると面白い
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-741b.html


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