2011.07.17

▽『ユニコード戦記』

小林龍生『ユニコード戦記―文字符号の国際標準化バトル』(東京電機大学出版局)

そういえば、あれ、どうなったんだっけ? というような疑問はいくつもありますが、そのうちの一つが、ユニコードにおける漢字の処理の問題。

十年以上前ですが、次のような文章を書いたことがあります。

▽「ワープロと日本語」――日本語と漢字をめぐる悪戦苦闘
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/1994/10/post-f6a4.html
《中国、台湾、日本の漢字は同じ字でも微妙に形が異なるため、別々のコードをふらざるをえない。また、これまで使用してきた日本独自の漢字コードが使えなくなり、過去の文書データを使用するのに莫大なコストがかかってしまう。》

最近になって発行された、本書『ユニコード戦記』によると、ヴァリエーションセレクター(Variation Selector=VS)という「文字符号の後ろに字形を特定するための枝番号」を付け加えることで、この問題は解決されたそうです。

ただし、この提案がユニコード・コンソーシアムになされたのが1998年頃で、実際に採用されたのが実に2010年末のこと。

本書の著者は、小学館の編集者を経てジャストシステムに入社し、ユニコード・コンソーシアムのメンバーとして奮闘してきました。本書の内容は専門的過ぎて、読むのには少々骨が折れますが、著者と、著者とともにユニコード問題に携わってきた方々の努力には、心の底から敬意を表したいと思います。

[目次]
第1幕 序章
 第1章 参戦
  1 召集令状
  2 緒戦
  3 初戦果
  4 パックス・アメリカーナ
  5 出張の嵐
  6 ルビタグ縁起
  7 情報帝国主義
 第2章 戦友
  1 去りゆく古参兵
  2 バディ参戦
  3 最初の提案
  4 ルビ戦争勃発
  5 先任軍曹
  6 共同議長
 第3章 一九九五年ごろの文字コード
  1 コンピューターの発展と文字コード規格の変貌
  2 日本語情報処理の発展と国際符号化文字集合への蠕動
  3 そして、ぼくの前史

第2幕 国内戦線
 第4章 JIS X 0213と国際整合性
  1 重大ニュース
  2 やっかいな問題
  3 数々のすれちがい
  4 グローバル化への高い代償
 第5章 表外漢字字体表
  1 ユニコード批判の嵐
  2 白熱する議論
  3 深まる議論
  4 答申が残した課題
 第6章 JIS X 0213:2004
  1 表外漢字字体表とJIS漢字規格の整合
  2 残された課題
 第7章 カンバセーション
  1 ピックポケット
  2 ヒデキの激怒
  3 ヨーロッパ縦断一七時間の旅
  4 英会話は女子大で
  5 絶頂期のトレーニング

第3幕 国内戦線
 第8章 CICC活動
  1 ミャンマー文字 —希有な成功例—
  2 クメール問題 —外人部隊の跋扈—
  3 クメール問題 —前言撤回—
  4 CICCによる実証実験
 第9章 SC2議長
  1 SC2議長就任
  2 議長の息抜き
  3 ISO/IEC 14651 —英語とフランス語版の整合性—
  4 ミスターインビジブル
  5 SEIとマイノリティスクリプト
  5 SC2議長にできること
 第10章 ヒデキとぼくは何と戦ってきたか
  1 文字コードと自然言語との関係
  2 ユニコード批判の中心に位置するもの
  3 人名漢字のアポリア

第4幕 終章
 第11章 最後の戦い
  1 封印されたヴァリエーションセレクター
  2 ヴァリエーションセレクター、漢字適用への道
  3 汎用電子情報交換環境整備プログラムとIVS
  4 戦いの行方

あとがき
付録


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