2011.07.18

▽『市町村合併で「地名」を殺すな』――「さいたま市」は最低の地名だそうです

片岡正人『市町村合併で「地名」を殺すな』(洋泉社)

《「平成の大合併」によって誕生している新しい自治体名は、まさに現代日本の「知的レベル」をそのまま反映している。このままでは、日本は子供だましのテーマパークのような国になってしまう。》(p.2)

なんとも過激なタイトルの本書ですが、平成の大合併によってつくられた新地名の多くはおかしい、と指摘した上で、どう命名すべきだったか、の代替案まで提示するという念の入りようが素晴らしい。

この手の、何かに苦言を呈すタイプの本は、主張そのものには共感できても、読んでいくうちに、辟易してしまうことが多いのですが、本書の爆走ぶりは最後まで徹底していて、ある種の爽快感すらあります。

私自身も、平成の大合併という政策自体には賛成していますが、その過程で伝統のある地名が失われるのはどうなんだろう? と感じていました。同様のことを、イギリスから日本の自治体に派遣された女性が、投書というかたちで意見表明して、話題になったこともあったかと思います。

さて、本書の著者は、読売新聞の記者で、同紙の夕刊文化面に連載されたものがベースとなっています。著者は、つけてはいけない地名として、具体的な例をあげていきます。

・「さくら市」などの「カナ地名」。
・縁起の良いもの、イメージの良いものにあやかった「瑞祥地名」。たとえば「大和」や「瑞穂」。
・かつての「飛騨国」の一部が「飛騨市」を名乗るというように、ごく一部の地域に大きな地名を使う「僭称」。
・企業名や商品名のようなインパクトを狙った「CI地名」。「ゆとり」という言葉に引っかけた「湯陶里市」を候補に入れた自治体があった。
・著名人にあやかった「人名地名」。大リーグで活躍する松井にあやかって「松井市」や「ゴジラ市」が候補に挙がった。
・合併した自治体の名称の一部を組み合わせた「合成地名」。これは明治以来推奨されてきたこともあり、「国分寺」と「立川」の間だから「国立」、「大森」と「蒲田」を足した「大田区」など枚挙にいとまがない。

そして、著者によると、最低の新地名は、「さいたま市」だそうです。まず「カナ地名」であること、また、埼玉県という大きな地名をごく一部の地域に使っている「僭称」が該当します。さらに、

《もともと「埼玉」は「さきたま」と読み、現在の行田市に今も地名が残る「埼玉」が地名の発祥の地である。従って、市町村で「埼玉」「さいたま」「さきたま」を名乗れるのは、行田市しかないのだ。これは地名の盗用であり、断じて許されることではない。》(p.65)

というわけで、「さいたま市」は三つの誤りを犯した最低の新地名なのだそうです。

また、古い地名には、過去に地震などの災害があったことを示唆するものも多く、そうした実用的な面からも、安易な新地名の創出は避けるべき、とのことです。


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