2011.08.09

▽『職業としての大学教授』

潮木守一『職業としての大学教授』 (中公叢書)

本書は、日本と、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの大学教授の取り巻く状況を比較することで、日本の大学教育のあり方を問うものである。

本書に先行する研究として、1965年に新堀通也によって発表された『日本の大学教授市場―学閥の研究』(教育の時代叢書)がある。

この『日本の大学教授市場』において、欧米の大学では、助手、助教授、教授と上に行くほど人数が減る「ピラミッド型」なのに対して、日本では人数が同じ「煙突型」であると指摘している。

《新堀は大学教員の人的構造が煙突型になっており、エスカレーター式に教授まで昇進できる点に、日本の学界のぬるま湯性の原因があると告発した。》(p.191)

その後の変遷を、改めて研究したのが本書である。そして、驚くべきことに、欧米ではピラミッド型が維持されているのに対して、日本では、煙突型どころか教授の方が人数の多い「逆ピラミッド型」にすらなっていると指摘する。この原因について著者は、

《ひとえにすべての昇進人事、採用人事が共通な基準を欠いたまま、外部の目に晒されることなく、仲間うちの評価で行われてきたからである。》(p.191)

終身雇用と年功序列いう日本的な雇用制度の弊害が、大学にまで及んできている例といえよう。

本書は、各国の大学制度や教授の選抜制度についてコンパクトにまとめられており、特に欧米の大学の事例は、日本の大学改革を進める際に参考になる点も多いと思う。

[目次]
第1章 欧米のピラミッド型は変化したのか
 イギリスではどう変化したのか
 フランスの場合
 ドイツの場合
 アメリカの場合
 日本の場合
第2章 日本型大学社会の形成
第3章 大学教師の値段はどうやって決まるのか
 ドイツの教授資格試験
 ジュニア教授制度
 フランスのコンクール方式
 内部昇進禁止の原則 
 消滅した助手ポスト
 アメリカの方式
 イギリスでの昇進制度
 揺れる内部昇進禁止の原則 
第4章 博士になるための茨の道
 博士号をとるには
 日本のケース
 ドイツのケース
 博士課程の生活費調達
 フランスのケース
 フランスでの博士号の経済的価値
 アメリカのケース
 博士課程修了の見返り
 イギリスのケース
第5章 変化を続ける大学
終 章
あとがき


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