2011.09.07

▽あのケビン・メアが見た『決断できない日本』

ケビン・メア『決断できない日本』(文春新書)

本書は、さまざまな偶然が重なったことによって出版されたといってもいいだろう。

そして、そのおかげで、東日本大震災や福島原発事故に対処した日本政府の舞台裏を、アメリカ側の視点から伺い知ることができるようになった。

著者は、沖縄に関する発言が取りざたされた、元米国務省東アジア・太平洋局日本部長のケビン・メア氏。3月6日に報じられたこの発言について、メア氏は本書において捏造であると反論しているが、この報道をきっかけに米国防省を辞めることを決意した。

しかしその数日後に、大震災と原発事故が発生したため、アメリカによる日本支援の「トモダチ作戦」の国務省タスクフォースのコーディネーターに任命された。

この時の日本政府の対応は、下記のインタビューでも述べられている。

《日本の復興支援にあたるタスクフォースのメンバーは、3月16日未明の時点で、日本政府よりもさきに、原発の炉心が融解していると判断していました。このままでは最悪の場合、メルトダウンして、使用済み核燃料が燃え、放射性物質が広範囲にばらまかれる可能性がある。》
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/18122

アメリカの政府高官は、東京にいるアメリカ人9万人を避難させることも検討したが、混乱を懸念したメア氏の説得で50マイル圏待避にとどめておいたという。

また、東京電力は、3月11日の時点で、在日米軍のヘリで水を運べないかと問い合わせをしてきたというが、このことから冷却装置が破壊されていること、東電は廃炉にしないでしのごうとしていること、東電は日本政府には情報を伝えていないことなどがわかったという。

さらに、日本に貸与できる備品のリストを渡したところ、逆に「質問」が帰ってきたという。

《彼らはもし問題が起きたとき、自分たちがその責任を取ることをおそれて、何も決めようとしなかったのです。まさに決断ができないのです。》
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/18122?page=3

そして、ヘリによる放水作業……。

《この光景を見たときの、アメリカ政府のショックは大変大きかったのです。仮にも大国である日本ができることが、ヘリ1機を飛ばして放水するだけだったのか・・・と。しかもこの放水は、原子炉冷却にはまったく効果がなかったわけですから。》
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/18122?page=3

本書では、原発処理の舞台裏だけでなく、沖縄に関する発言へのメア氏の反論、メア氏の日本との関わりや沖縄基地問題の舞台裏、さらに、歴代首相や有力政治家に対するメア氏の見解が述べられていて興味深い。


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