2011.09.04

▽『サイボーグとして生きる』

マイケル・コロスト『サイボーグとして生きる』 (椿正晴訳、ソフトバンククリエイティブ)

『サイボーグとして生きる』――。

えー、なんか大げさなタイトルなんですが、どういう内容の本かというと、著者のマイケル・コロストは、生まれつき耳が悪くて補聴器をつけて育てられたのですが、36歳になって完全に聴力を失ってしまいます。そこで、コンピューター制御の人工内耳システムを搭載した「インプラント」を頭蓋骨に埋め込んで、ふたたび聴力を獲得します。本書は、その顛末を綴ったものです。

人工内耳システムを「サイボーグ」と呼ぶには、やや大げさかもしれませんが、それまで使用していた補聴器よりも、ずっとはっきりと聴くことができるようになったそうです。

《それまで刺激されたことのなかった聴神経が電気刺激を受けるようになったため、聴覚皮質で神経細胞が四方八方に樹状突起を伸ばし、新たなシナプス結合が次々と形成された。その結果、失聴してから三年後の二〇〇四年には、ぼくの脳内に以前とはまったく異なる神経回路ネットワークが構築されていたのだ。》(p.275)

著者のマイケル・コロストは、文学好きのコンピュータおたくでして、本書でも、自身の恋愛についても包み隠さず綴っています。失われた青春を取り戻そうとする中年男性の姿がユーモラスに描かれていて、青春SFのような趣で、なかなか楽しく読むことができます。


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