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2011年11月

2011.11.29

▽2011年に当ブログで売れた本

2011年も、残すところ、あと一ヶ月となりました。ちょっと早いのですが、2011年に当ブログで売れた本十傑を紹介します。

まあ、ランキングをつけるほどは売れていないので、あくまでも十傑ということで・・・・・・。

2011年は、原発、日本中枢の崩壊、落合、の三つのキーワードで象徴されうる年だったと思います。

▽当ブログで売れた本――2011年原発関連
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/05/2011-fe88.html

▽『日本中枢の崩壊』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/06/post-0342.html

▽落合監督ご苦労様でした
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/post-ddf4.html

企業ものでは、あいかわらずアップルとソニー、そして、版元に対して暴挙とも言える2億2000万円ものスラップ訴訟を起こした恥知らずなユニクロの関心が高いですね。

▽iPhoneができるまで――『スティーブ・ジョブズ II』より
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/iphone-ii-0c71.html

▽ストリンガー戦記――『さよなら! 僕らのソニー』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/post-defe.html

▽ユニクロの本質とは?――『ユニクロ帝国の光と影』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-fdd6.html

また、医療関係の本は、当ブログではあまり紹介していないのですが、下記の本や、医療関連の書籍を購入される方も多くいらっしゃいます。

▽『逸脱する医療ビジネス』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/01/post-9b58.html

以下の三つは、当ブログでも定番と言えるもので、コンスタントに売れ続けています。

▽インテル・インサイドとアップル・アウトサイド――技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/11/post-feeb.html

▽シビックプライド――ヨーロッパにおけるケーススタディ
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-d65f.html

クックパッドのビジネス・モデル
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/news/2011/05/post-b35e.html

当ブログで取り上げる本のコンセプトは、基本的には「クロス・カルチュラルなノンフィクション」です。もちろん例外もありますが、ノンフィクションで異文化がクロスするような内容のもの、あるいは、時代の転換点(古い文化と新しい文化が衝突、交錯する時代)を分析するようなもの、が中心です。

献本もお待ちしていますので(笑)、ここをご覧になられている出版社の方がいらっしゃったら、右カラム上の「メール送信」のところをクリックしてご連絡いただければ幸いです。

では、これからもいっそうの内容充実をめざして精進しますので、今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

[参考]
▽当ブログで売れた本――2009年
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/2009-dd61.html
▽当ブログで売れた本――2010年上半期
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/08/2010-0d88.html
▽当ブログで売れた本――2010年下半期
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/12/2010-9982.html
▽当ブログで売れた本――2011年原発関連
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/05/2011-fe88.html
▽当ブログで売れた本――2011年上半期
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/06/2011-fe42.html

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▽TV局所在地と視聴率の意外な相関――『代官山 オトナTSUTAYA計画』

増田宗昭『代官山 オトナTSUTAYA計画』(復刊ドットコム)

前回のエントリーでは、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭の創業からディレクTVの挫折までを紹介しましたが、

▽TSUTAYAの創業とディレクTVの失敗から学んだこと――『情報楽園会社』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/tsutayatv-9c96.html

本書は、その続編とも言えるもので、現在、CCCが代官山で進行中のプロジェクト“オトナTSUTAYA計画”( http://www.ccc.co.jp/daikanyama/ )のコンセプトについて語っているものです。

“オトナTSUTAYA計画”は、代官山の旧水戸徳川家の屋敷があった広大な土地に、TSUTAYAの店舗を核とした文化的なショッピング・モールと公園をつくるというもの。オープンは、当初計画の2011年夏よりも、遅れているようですが……。

本書で興味深かったのは、文化的発信力と立地の関係を考察した第十六章「TV局所在地と視聴率の意外な相関」。

たとえばフジテレビ。1982年から12年連続で「視聴率三冠王」を獲得してきたが、1997年のお台場移転前後から視聴率低下。1994年から2003年までは日本テレビに三冠王の座を奪われた。しかし、その日本テレビも、2003年の汐留移転以降は、視聴率の低迷が続いている。

この2社と対照的なのが、2003年に本社を六本木ヒルズに移転したテレビ朝日。万年4位だった視聴率が急上昇し、2005年にはプライムタイムの視聴率で、初めて2位につけたという。

《見方はさまざまだろうが、私には、本社が位置する場所が番組の質に影響を与えているとしか思えない。……企画とは、すなわち情報の組み合わせだ。だから企画に携わる会社は、情報が流れる場所のできるだけ近くにオフィスを置く必要がある。》(p.132)

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2011.11.28

▽TSUTAYAの創業とディレクTVの失敗から学んだこと――『情報楽園会社』

増田宗昭『情報楽園会社』(復刊ドットコム)

《個人で二百億の負債を背負い、責任を持って会社を運営しようとしても、理解されず、説得できないと悟った時、この戦いは負けるかもしれないと思った。負けるということは、二百億円の借金が残り、CCCを失うということだった。そう思った瞬間から、目で見る風景から立体感がなくなり、写真のように見えるようになった。さらに、においを感じないし、自分で話している声がずっと遠くのほうで聞こえてくる。すべての五感が狂いだし、その当時はたぶん精神的におかしくなっていたんだと思う。
 人生終わったな。そう思った。》(pp.265-266)

本書は、1996年に刊行された『情報楽園会社』に、加筆修正したもので、「TSUTAYAの創業とディレクTVの失敗から学んだこと」というサブタイトルがつけられている。

1996年版では、TSUTAYAの創業から全国展開までの体験談と、これから始まるディレクTVの夢を語ったところで終わっている。しかし、1996年に放送を開始したディレクTVは2000年には終了してしまい、わずか4年の命だった。

成功譚と失敗譚、いずれも示唆に富む一冊である。

[目次]
第1章私の企業事始め
誰もがすぐ理解できるキーワードを探せ
ビデオは本である
「売上げゼロ」からの発想

第2章 カルチュアコンビニエンスの時代
 レンタルビジネスは金融業である
 消費とは選択である
 情報ショップのCD-ROM化

第3章 知的情報革命を見切る
 知的モノ不足の時代
 何を、どう「見切る」か
 これからの市場をリードする世代

第4章 起業家・二つの宇宙
 「内なる宇宙」の声を聴け
 企業を立ち上げていく原則
 サラリーマン時代の十年間

第5章 企画会社だけが生き残る
 企業に組織は必要か
 企画とは何か
 企画会社の条件とは何か
 組織より個人重視の時代

第6章 起業のプログラム
 私の創業精神
 蔦屋書店の出店企画書
 信用をつくる
 「四つの得」と「セオリーC」

第7章 フランチャイズビジネスの考え方
 フランチャイズはなぜ失敗するか
 資本金百万円の会社に一億円のコンピュータ
 フランチャイズ三つのパワー

第8章 ネットワークヴァリューの威力
 情報を共有する仕組み
 文化を売るためのノウハウを売る
 情報をデータベース化する

第9章 経営者の立場、社員の立場
 仮説を立てて失敗しろ
 「やる」といった人間にまかせる
 大事なのは人間としてのハートの奥深さ

第10章 デジタル情報革命と心の時代
 大企業信仰と心の喪失
 精神的なひもじさがいちばんつらい
 私が戦う土俵

第11章 TSUTAYAがつくるネットワーク社会
 マルチメディア化の流れをどう取り込むか
 パッケージからノンパッケージへ
 理解するにはまず体験せよ

第12章 ディレクTVへの進出
 世界最大のビデオレンタルシステム
 レントラックの窮地を救う
 ディレクTVとの衝撃の出会い

第13章 テレビの意味を変えるディレクTV
 二百チャンネルのデジタルテレビ
 マルチメディア時代のビジネスチャンス
 デジタル衛星放送は何が違うか

第14章 私が考える「楽園」づくり
 ゴードン・ムーアが予言した世界
 個人を幸福にする「楽園」づくり
 私自身のための「楽園」

あとがきにかえて

第15章 ディレクTVの失敗から学んだこと
 「楽園」の崩壊
 「楽園」の裏側
 「拒否権」の恐ろしさ
 ディレクTVの失敗で失ったもの
 経営とは失敗の許容である
 ディレクTVの失敗で得られた人脈、そしてナレッジ

本書復刊によせてのあとがき

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▽『弱い日本の強い円』と『日本の破綻を防ぐ2つのプラン』

佐々木融『弱い日本の強い円』(日経プレミアシリーズ)

小黒一正x小林慶一郎『日本の破綻を防ぐ2つのプラン』(日経プレミアシリーズ)

話題の経済書二冊より。

一つ目は、佐々木融『弱い日本の強い円』。為替のわかりにくい部分を、わかりやすく書いてあるものの、やっぱり、どうにもわかりにくい(笑)。というか、そもそも為替を決定づける単一の要因などはないことに、そのわかりにくさは起因するのですが……。

ところで本書の中で気になったのは、103ページの《これを「デフレ」と呼ぶべきか?》のグラフ。

20111128deflation

《ここで指摘したいのは、過去約20数年の間、日本はデフレスパイラルどころか「長期間デフレで悩まされている」と言えるかどうかも微妙な状態にあったということである。実は、単純に「物価が安定していた」だけと言えなくもないのである。》(p.104)

ねぇ……。

もう一点、興味深かったのは、日銀が2001年3月から2006年3月まで実施した量的緩和と円安の関係。

《円キャリー・トレードを背景とした「円安バブル」が本格的に進展していたのは、日銀が量的緩和政策を解除した後だったのである。……日銀の量的緩和政策終了前後で円安が加速していった理由は、日本と他国の金利差が拡大していったからなのである。》(pp.191-193)

なるほど!

もう一冊は、小黒一正x小林慶一郎『日本の破綻を防ぐ2つのプラン』。すでに日本の公的債務は危機的な水準にまできている。本書は、この公的債務の削減を図る2つのプランを提案している。

一つは、世代間の不公平を是正し持続可能な財政・社会保障を構築させるためのもっとも適切な正攻法(プランA)であり、もう一つは、マクロ経済政策による財政破綻の回避とダメージ緩和策(プランB)である。

具体的なプランについては、本書を参照していただきたいが、そもそも、この公的債務が積み上がった根本原因は何だろうか? 本書では、1980年代のバブルが崩壊したことによって発生した数百兆円にものぼる不良債権にあった、と指摘する。

《つまり、日本の90年代の景気対策も、民間のバランスシートの穴を政府部門に移転するプロセスだったと理解することができる。政府負債(国と地方の長期債務残高)は、90年代初めの約250兆円から現在の約850兆円までこの20年で増えている。そのかなりの部分は、バブル崩壊で民間のバランスシートにあいた穴(過剰債務)を政府がかき集めて肩代わりしたものだとみなすことができよう》(pp.165-166)

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2011.11.27

▽『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』

『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』(山と渓谷社)

2009年7月、北海道大雪山系のトムラウシ山で、18人の登山パーティーが暴風雨に遭遇し、ガイドも含め8人が低体温症で凍死するという夏山登山史上最悪の遭難事故が起きた。旅行会社の企画した登山ツアーということもあり、凍死したツアー客はウインドブレーカーなどの軽装だった、と報じられた。

しかし、実際にパーティー参加者に取材した本書によると、参加者の多くは、山登りの経験も豊富で、「参加者の装備にこれといった手落ちは見られなかった」(p.65)という。つまり、この事故は登山初心者の遭難という単純な事故ではなく、その原因は、もっと深いところにあったのではないか。本書が書かれた意図はその点を明らかにすることにある。

犠牲者のご冥福をお祈りするとともに、本書が、同じような事故を繰り返さないための教訓になることを願ってやみません。

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2011.11.23

▽だんしがしんだ――『落語評論はなぜ役に立たないか』

広瀬和生『落語評論はなぜ役に立たないか』(光文社新書)

立川談志の訃報とともに、以前、読んだもののそれっきりになっていた本書を思い出しました。

『落語評論はなぜ役に立たないか』というと、1983年に落語協会を脱退した立川談志が旗揚げした「立川流」は、落語のインナーサークルからははみ出した存在であり、落語評論家は、立川流の落語家を取り上げようとしないからだ、というのが本書の主張です。

立川流ができてから30年以上たっているにもかかわらず、いまだにそういう因習にとらわれているのかと思った次第。

というわけで、偉大な落語家の死に、合掌

[参考]
▽談春が見た志らく
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/01/post-8359.html
▽志らくが語る談志と談春
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/06/post-cb65.html

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2011.11.20

▽落合監督ご苦労様でした――『采配』

落合博満『采配』(ダイヤモンド社)

落合博満監督率いる中日ドラゴンズは、惜しくも日本一は逃してしまいましたが……。

それでも、史上まれに見る低打率の貧打線ながら、それを投手力でしのいで、ペナント・レース、クライマックス・シリーズ、日本シリーズを闘った采配の妙。

8年間で、連続してAクラス、リーグ優勝四回、球団史上初の連覇、日本シリーズ出場五回、日本一一回を記録した落合博満の指揮官としての考え方が凝縮された一冊です。

落合監督は、野手出身の監督ということもあり、ピッチャーに関しては投手コーチの森繁和に全権を委任していたことはよく知られています。試合当日になるまで、誰が先発になるか知らなかったというほどのお任せぶりだったそうです。

しかも、本書によると、森繁和コーチとの接点は、社会人時代の全日本チームで一緒にプレーしたことがある、というだけで、お互いに、それほどよく知った間柄ではなかったそうです。それでも、ピッチャーに関しては任せきってしまったのは、すごいといえばすごい話ですね。

また、2010年の日本シリーズの時に書いたエントリー

▽落合博満伝説
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/11/post-e860.html

で紹介した今中慎二『中日ドラゴンズ論』には、次期監督の高木守道の人となりも触れられています。

後任の高木さんも、いい人なんですけどね……。

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▽ストリンガー戦記――『さよなら! 僕らのソニー』

立石泰則『さよなら! 僕らのソニー』(文春新書)

ジャーナリストの立石泰則は1994年からソニーについての取材を継続して行っている。本書は、出井時代のソニーに期待しながらも、その後を継いだストリンガー時代に失望させられた著者の、ソニーに対する決別の書である。

まあ、まだソニーは復活する可能性も残ってるわけですから、「さよなら!」などと簡単に見捨てちゃあ可哀相だとは思いますが……。

私が、興味深く読んだのは、第六章以降のストリンガー時代の内幕について。

2005年3月、当時の出井社長は、対立する久夛良木副社長と刺し違えるかたちで退任し、ストリンガーを会長兼CEOに任命した。

その頃、ストリンガーはソニーを辞めて家族の住むイギリスでリタイアしようと考えていた。つまり、おおかたの見方はストリンガーは、あくまでもワンポイント・リリーフであった。

《ストリンガー氏をのぞく出井氏を始めソニーの幹部のほぼ全員が、ストリンガー氏のCEO任期を二年ないし三年、長くても数年と見なしていた》(p.214)

しかし、その後、ストリンガーは、着々と自分の腹心の部下を配置するとともに、発言力のあったOBを排除し、ついに2009年に会長と社長を兼務するCEOとして君臨するようになった。本書では、社外取締役を籠絡した、とも指摘されている。

ストリンガーは、ソニーの中核事業だったエレクトロニクスよりも、コンテンツをネットワークで結びつけるビジネスを重視しているが、そのビジネス・モデルは、まだ構築できていないようだ。

さて、ソニーの復活はなるかどうか。

[目次]
第1章 僕らのソニー
第2章 ソニー神話の崩壊
第3章 「ソニーらしい」商品
第4章 「技術のソニー」とテレビ凋落
第5章 ホワッツ・ソニー
第6章 黒船来襲
第7章 ストリンガー独裁
最終章 さよなら! 僕のソニー

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2011.11.15

▽カロリーベース自給率というまやかし

浅川芳裕『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 』(講談社プラスアルファ新書)

少し前に、『日本の農業が必ず復活する45の理由』を紹介しましたが、

▽小沢一郎と農協との戦いとは?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/post-cfee.html

本書『日本は世界5位の農業大国』も、同じ著者によるもので、出版時期は2010年2月で、昨年話題になった本です。

日本の農業は自給率も低く弱々しい……というイメージをデータで覆していきます。特に、「カロリーベースの自給率」という指標を採用しているのは日本だけであり、農業予算を獲得するためだけに農水省がでっち上げた「ヒット商品」だった……。

しかし、本書のように、データと国際比較をもとにしながら、「カロリーベース自給率」なる虚妄を批判しても、それがあいかわらずメディアを賑わせているのは、いったいどういうことなのでしょうか? その理由についても興味がありますね。

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2011.11.14

▽どうする? 日本漁業――『日本の魚は大丈夫か』

勝川俊雄『日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる 』(NHK出版新書)

大震災で被害をうけた三陸の漁業地帯を、これを機に日本の漁業再生へのきっかけにしようというのが本書の趣旨です。

そして、日本漁業復活の参考にしよう! と紹介しているのがノルウェーの漁業です。ノルウェーでは乱獲を防止するために、漁獲量の制限が加えられています。その結果、稚魚はとらずに、高く売れる成魚だけを獲るようになり、漁獲高も増え、漁業資源も復活したとのこと。

これに対して、日本の漁業では漁獲制限がないために、獲れるだけ獲るしかない状態で、稚魚もとってしまうために、漁獲高も増えずに、漁業資源も枯渇しつつあるとのこと。

ノルウェー方式は大いに参考になるところが、そうした漁業改革を阻む存在となっているのが、漁協なんだそうです。

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▽どうする? 日本企業

三品和広『どうする? 日本企業』(東洋経済新報社)

日本企業がだめだめな理由を語る場合には、自動車やエレクトロニクス、IT産業が引き合いに出されることが多いのですが、本書では、時計メーカー、ピアノ・メーカー、鉄鋼業と比較的地味めな企業がケーススタディとして取り上げられます。 
注目の高い花形産業以外では、地味にこつこつと利益を上げているかと思ったら、実は……と、ちょっとガッカリさせられます。

まず、時計メーカーとしてはセイコーのケースが取り上げられます。こまかい話は省力しますが、セイコーは、クォーツ時計でスイスの時計産業を壊滅状態に追い込んだのですが、その後の戦略がまずく、低価格品では中国製品に、ブランド品では複数ブランドを擁するスイスのスウォッチに負けてしまいます。

次にピアノ・メーカーとしてヤマハが取り上げられます。ヤマハは大量生産で廉価なピアノで、高級ブランドのピアノを制しますが、やはり中国のような新興国に追い上げられ、しかも、高級ピアノの音質やブランド力では欧州勢にはかなわない、というジレンマを味わわされています。

最後に鉄鋼業。1989年には鉄の生産量で世界一にたったものの、そのわずか4年後には中国に抜かれてしまいます。その後の鉄鋼メーカーは、雇用を守るためにさまざな多角化事業に手を染めますが、どれもうまくいきません。さらに、半導体製造にも大きな期待をかけましたが、これも世界的に競争の激しい世界で失敗。

あらためて指摘されてみると、なるほどと思わざるをえませんし、日本経済が停滞している理由もよくわかりますね。

[目次]
第1章 本当に成長戦略ですか? 日本が歩んだ衰退の道
第2章 本当にイノベーションですか? 腕時計が刻んだ逆転劇
第3章 本当に品質ですか? ピアノが奏でた狂想曲
第4章 本当に滲み出しですか? 鉄が踏んだ多角化の轍
第5章 本当に新興国ですか? 日本が教えた開国攘夷策
第6章 本当に集団経営ですか?

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2011.11.13

▽建築家ムッソリーニ

パオロ・ニコローゾ『建築家ムッソリーニ―独裁者が夢見たファシズムの都市』(桑木野幸司訳、白水社)

イタリアのベルルスコーニ首相が引退したのを記念して……というわけではありませんが(笑)。

イタリアの独裁者ムッソリーニは、公共建築に莫大な投資を行ったそうです。1920年代、1930年代には、おびただしい量の公共建築や都市計画が実行に移されていったそうですが、それは、ヒトラー時代のドイツをしのぐものであり、他に類例のない規模の投資だったとのこと。

では、その狙いはなんだったか? といえば、イタリアの大衆をファシズムへと強化していくための道具として建築を使ったのだそうです。

《明らかに、当時のイタリアでは、建築と政治のあいだに、強固な同盟関係が結ばれていた。建築は政治の道具となったのだ。建築を通じて、権力は、国民の同意を取りつけてゆく。》(p.10)

独裁者ムッソリーニを通じて、政治と建築の結びつきを解き明かすユニークな一冊です。

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▽小沢一郎と農協との戦いとは?

浅川芳裕 『日本の農業が必ず復活する45の理由』(文藝春秋)

さて、TPP参加騒動も一段落ついたところで、日本の農業と政治との関わりを。

『日本の農業が必ず復活する45の理由』の著者は、農業専門誌の副編集長。本書は、日本の農業の実態をデータをもとに詳述しており、日本の農業は、われわれがもっているイメージよりもずっと力強いものだということがわかります。

さて、私の関心は、政治と農業。もっと言えば、小沢一郎と農協との戦い。では、農協とは何かと言えば、ずばり「自民党の集票マシーン」でした。

《自民党は農協に補助金を流す。その見返りに、農協は農家と職員の票を集めてきます。職員総数約25万人、農家票正組合員数480万人、准組合員数460万人。親類縁者を含めれば、1000万票を超えるような大票田になります。》(pp.186-187)

さらに、一票の格差によって地方の票は2倍、3倍になるため農協票は、政治的にも大きな勢力となります。これを潰すために、2007年の参院選の際に民主党の小沢一郎が編み出した戦略が、日米FTAを締結する一方で、農家への個別所得補償をバラ巻いて農協を骨抜きにするという作戦だった、と著者は指摘します。

そして、2009年の衆院選で勝利した民主党は、さらに、農協を経由して分配される農業土木予算を削減することで、ぎりぎりと農協を締め上げていきます。

さて、この死闘の真の勝者はだれだったか? それは、本書で確認してくださいね。

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2011.11.12

▽iPhoneができるまで――『スティーブ・ジョブズ II』より

ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ I』(井口耕二訳、講談社)

ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ II』(井口耕二訳、講談社)

『スティーブ・ジョブズ』 は、そんなに急いで読みたいわけではないので、いずれ落ち着いた時にでもと思いつつ、IIのiPhoneとiPadに関するところだけを拾い読み。

▽iPodは何を変えたのか? を振り返る
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/02/ipod-7562.html
の続きとなります。

・2005年にiPodの販売が急増すると、音楽プレイヤー機能を搭載した携帯電話に「徹底的にやられる可能性がある」とジョブズは判断した
・まずモトローラのRAZRにiPodを組み込んでROKRをつくったが不満があり、アップル自ら携帯電話をつくることに
・当時タブレット型コンピューター(後のiPad)の開発が進められていたが、これを一時停止し携帯電話の開発に合流
・P1というコードネームでiPodのホイールを使った携帯電話、P2というコードネームでマルチタッチスクリーンを使った携帯電話を製作する
・マルチタッチのトラックパッドを開発していたフィンガワークス社を買収し創業者二人を雇い入れていた(2005年はじめごろ)
・ホイール型のP1とマルチタッチ型のP2の開発を6ヶ月おこなった後、P2に決定した
・さらに9ヶ月間かかって開発したプロトタイプのデザインに不満でやり直し
・2007年1月10日に発表、同年6月に発売
・2007年にふたたびタブレット型コンピューターの開発に着手
・2010年1月27日に発表、同年4月に発売

ソニー・エリクソンが音楽プレイヤー機能を搭載した携帯電話(ウォークマン携帯電話)を発売・ヒットしたのが2005年なので、やはりiPodにとっても脅威だったのですね。

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▽テレビ局衰退の記録――『だからテレビに嫌われる』

堀江貴文x上杉隆『だからテレビに嫌われる』(大和書房)

ライブドア元社長の堀江貴文が、収監前に、ジャーナリストの上杉隆と対談したもので、もっぱら日本のテレビの裏側について語っている。

もうテレビはダメなんじゃない? 的な話がズラズラと続きますが、内容的には、両者のこれまでの発言の集大成のようなもの。

ただ、第6章の「テレビに明日はない?」では、具体的なデータをともなう衝撃的な発言が……。

《堀江 ……弁当なんかも、どんどんダメになってる。
上杉 それは確かに実感する。
堀江 僕は最近よくテレビ局で出る弁当を写メで撮ってるんですけど、テレビ局衰退の記録ですよ。》(p.222)

《堀江 ……収録も3本撮りとか5本撮りとかやっちゃうし。……
上杉 ……僕がレギュラー持ってた最初の頃、10年前はやっぱり8万8888円の8並びとか11万1111円の1並びとかだった。でも、最後の方はテレ朝で一律1万5000円。フジも3万円。今や半減以下だね。》(pp.222-223)

ビックリ(笑)。

[目次]
第1章 僕たちがテレビに嫌われた理由
第2章 実は「言論の自由」がないテレビ局
第3章 3・11以降、テレビは何を伝えなかったか?
第4章 世にもおいしい放送利権
第5章 視聴者とは、誰か?
第6章 テレビに明日はない?

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2011.11.07

▽少年ジャンプと資本主義

三ツ谷誠 『「少年ジャンプ」資本主義』(NTT出版)

前回のエントリーでは、少年サンデーと少年マガジンの創刊時について書かれたものを紹介しました。

▽『サンデーとマガジン』――出版界のたそがれ
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/post-b448.html

『サンデーとマガジン』の第8章「しのびよる黒い影」では、先行する二誌を追い上げる『少年ジャンプ』にも触れられています。

本書『「少年ジャンプ」資本主義』は、少年ジャンプの人気漫画の変遷を、日本の資本主義の発展段階を結びつけて解き明かす、というやや無理のある(笑)テーマに挑戦しています。

本書で紹介されている漫画は、本宮ひろ志の『男一匹ガキ大将』に始まり、『アストロ球団』、『リングにかけろ』、『キン肉マン』、『ドラゴンボール』、『ONE PIECE』などなど。

ある作品が人気を博した事実を、その時々の世相と結びつけ過ぎるのもどうかと思いますが、人気漫画の移り変わりと時代背景をおおざっぱに押さえられるという点では、そこそこ面白く読めますね。

[目次]
巻頭カラー(序文にかえて)「ギャラクテカマグナム」

第1章 『男一匹ガキ大将』の残したもの
 初期の『男一匹ガキ大将』――西海編と水戸のおばばが意味するもの
 高度経済成長がもたらしたものと霊峰富士の決闘
 その後の『男一匹ガキ大将』と万吉が教えてくれたもの

第2章 『アストロ球団』 宿命で結ばれた仲間たち
 永井豪と七〇年代前半、輝く名作群
 『アストロ球団』――宿命の仲間たち
 七〇年代の『少年ジャンプ』

第3章 バブルとその崩壊 八〇年代・九〇年代と『少年ジャンプ』
 『リングにかけろ』と『キン肉マン』――バトルマンガ構造の完成
 『キャプテン翼』――スポーツと資本主義の関係
 『北斗の拳』――求められる神話、求められる王の世界
 『ドラゴンボール』――ジャンプ最高傑作の誕生
 『ドラゴンボール』の世界――神龍と株式会社、無邪気さと資本
 鳥山明と本宮ひろ志

第4章 ゼロ年代のジャンプ 『ONE PIECE』新しい連帯のカタチ
 『ジョジョの奇妙な冒険』――ディオとプッチ神父までの距離(資本主義の成熟)
 『ONE PIECE』――自由な連帯と資本主義の希望 アラバスタ編を中心に
 『ONE PIECE』その二――〈帝国〉と対峙するための連帯 エニエス・ロビー編を中心に
 「少年ジャンプ」資本主義――自由であるための闘争

次号予告(あとがきとして)

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2011.11.06

▽『サンデーとマガジン』――出版界のたそがれ

大野茂 『サンデーとマガジン 創刊と死闘の15年』(光文社新書)

本書は、週刊少年誌の『週刊サンデー』と『週刊マガジン』の創刊から15年くらいまでの期間を、サンデーとマガジンの両編集部間の死闘という視点から描いたものです。

創刊時の裏話も多く、いろいろとなかなか興味深いのですが……、この雰囲気はどこかで味わったことがあるなあ……、と考えると……そうです、あの『プロジェクトX』によく似ています。

NHKで2000年から2005年まで放映されたプロジェクトXは、日本が坂の上の雲をめざして駆け上がっていた昭和の頃の、主に製造業の現場で働いていた名も無き人々にフォーカスを当てた懐古趣味の強い番組でした。そして、それは、日本の製造業の低迷と裏腹の関係にあったといえます。

そして――。

日本の出版界を支えてきた少年漫画誌の裏舞台が、本書のように、ある種のノスタルジーとともに語られるようになったのは、出版界のたそがれと軌を一にしているのではないでしょうか、と思ってしまいます……。

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▽有名建築のその後

日経アーキテクチュア 『有名建築その後』(日経BP社)

またまた日経アーキテクチュアの渋いムックを発見(2009年発売)。これは、日経アーキテクチュアに掲載された、日本を代表する有名建築に関する20の記事の採録がメインコンテンツです。

また、冒頭には、ここ数年の間に話題となった4つの建築物の記事も掲載されています。最近の話題に絡めていうと、大阪府知事と大阪市長のダブル選挙の勝者が支配することになる、大阪府庁舎の歴史的経緯も興味深い。

1926年に竣工した府庁舎は、老朽化のため建て替えを決定。バブルさなかに行われた1989年のコンペでは、黒川紀章の建て替え案が採用されました。

しかし、新別館の南館と北館が完成したところで、大阪府の財政悪化により、建て替えが凍結。2008年になって、「耐震改修」、「建て替え」、「大阪WTC移転」の三案が検討された。橋下知事は、「大阪WTC移転」案を推したものの、WTCの耐震性能に疑問が投げかけられたこともあって、移転案は否決され、現在はふたたび「耐震改修」が検討されている……。

一方、1991年に完成した東京都庁舎は、丹下健三の設計によるもの。完成後二十年近くたち、漏水や空調設備の故障などが多発しているとのこと。

西も東もいろいろと大変なようです。

[参考]
▽『危ないデザイン』――あの事件の原因を探る
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/07/post-3676.html
▽『甦る11棟のマンション―阪神大震災・再生への苦闘の記録』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/11-8373.html

[目次]
【第1部】巻頭インタビュー
-------建築は人々の「記憶の器」
藤森 照信 東京大学 生産技術研究所 教授

【第2部】「今」を切り取る有名建築
-------丸の内の保存活劇と東西庁舎の改修騒動
東京駅丸の内駅舎/東京中央郵便局/東京都庁舎/大阪府庁舎本館

【第3部】「有名建築その後」復刻20選
-------現状の姿とともに建物が刻んだ時を振り返る
<文化・会議施設>
国立西洋美術館本館
神奈川県立近代美術館
アートプラザ(旧・大分県立大分図書館)
国立国会図書館
神奈川県立音楽堂
国立京都国際会館

<スポーツ施設>
国立代々木競技場
東京ドーム

<庁舎・事務所>
名護市庁舎
目黒区総合庁舎(旧・千代田生命本社ビル)
新宿三井ビルディング

<商業施設>
読売会館
ソニービル
キリンプラザ大阪

<住宅>
中銀カプセルタワービル
スカイハウス

<学校・教育施設>
甲子園会館(旧・甲子園ホテル)
名古屋大学豊田講堂

<そのほか>
世界平和記念聖堂
東京タワー

【コラム】あの有名建築の「生みの親」は?
前川 国男/磯崎 新/丹下 健三/村野 藤吾/黒川 紀章/菊竹 清訓

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