2011.12.02

▽日本人をやめる方法

杉本良夫『日本人をやめる方法』(ほんの木)

世界的にも著名な文化人類学者である杉本良夫(豪ラ・トローブ大学名誉教授)が、1989年に書いたエッセイなどをまとめたのが本書で、発行は1990年。

《「日本人をやめる」とは、日本国籍を放棄するということを直接意味しているのではない。むしろ、日本社会を息苦しくさせている構造、日本文化のなかで自由や自発性を奪いがちな仕組み、日本人の習慣のなかの望ましくない要素などをゴメンだとする行為全般を指している。これには、「闘争」と「逃走」のふたつのあり方があると思う。もちろん、日本国内に住んで、日常生活のレベルで抵抗するという「闘争」の道が、本筋である。私は日本から「逃走」するという亜流の道の方を選んだが、そちらの方がよろしいなどという気は毛頭ない。》(p.20)

そして、著者の体験してきた、「亜流の「逃走」型の方に焦点をすえて書いてみた」(同)のが本書である。

しかし、もとになったエッセイが書かれた1989年というと日本経済が絶頂期にあった頃で、世界中が日本礼賛論に包まれていた頃。そして、「失われた20年」を経て、日本礼賛論は消え去ったものの、本書で指摘されているような「日本社会を息苦しくさせている構造」は、かわっていないどころか、より強固になっている気もします……。


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