2012.01.29

▽大停滞

タイラー・コーエン『大停滞』(池村千秋訳、NTT出版)

本書『大停滞』(原題: The Great Stagnation )は、アメリカの経済学者タイラー・コーエンが、当初、電子版で出版したものの、注目が高かったためにペーパー版も出版されたものです。

《さまざまな分野でイノベーションが期待外れとどまっているとしても、少なくともある一つの分野では、大半の人の予想より多くのイノベーションが成し遂げられている。その分野とはインターネットだ。》(p.74)

著者によると、ここ二十年間で唯一のイノベーションであったとも言える「インターネット」を活用する企業の多くは、かつての製造業などと比べると、あまり雇用を創出しない。

また、流通業などでも「中抜き」が起きるために、雇用を減らす可能性もある。さらに、ITや、それを活用した金融業では、一部の優秀な人材がいれば良いので、そこに富は集中し、結果として、普通の人達の賃金は頭打ちとなっていく。これがアメリカなどの先進国を襲う「大停滞」の実態である――

というような、割と腑に落ちる説を展開しています。

また、解説者である若田部昌澄の「日本の場合はデフレが続いていることが停滞の要因ではないか」との問いに対して、コーエンは、「日銀がよい仕事をしているとは思わないけれども、25年も続く停滞が貨幣的要因によるものとは思われない。」(p.162)と答えています。


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