2012.01.09

▽『ザ・ラストバンカー』――時代に翻弄された銀行マン

西川善文『ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録』(講談社)

《今まで私を含めて誰も住友銀行関係者は語ってこなかったことがある。この機会にあえて申し上げよう。イトマン事件は磯田さんが長女の園子さんをことのほか可愛がったために泥沼化したのだと私は思う。》(p.120)

本書は、住友銀行(現・三井住友銀行)の頭取、日本郵政の初代社長をつとめた西川善文による回顧録。

著者は、普通の銀行マンとは異なって、営業畑の経験はほとんどなく、安宅産業、イトマン、住専と、もっぱら不良債権の処理に携わってきた。30年以上も不良債権処理にかかわったことから、「不良債権と寝た男」とさえ呼ばれた。

特にイトマン事件については、当時の住友銀行頭取の磯田一郎の責任を厳しく批判している。イトマンが絡んだ不明朗な絵画取引には、磯田の長女が勤務する会社が一枚噛んでおり、このことが磯田の判断を誤らせたのではないか、と指摘している。

また、イトマン事件を引き起こす遠因となった平和相互銀行の買収も、磯田が意図した効果はあまり得られなかったという。

本書には、暴露本的な内容はあまりないが、それでも住友銀行を内側から率直に描いており、住友銀行を通史的に把握する上では役に立つ。

[参考]▽『イトマン・住銀事件』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/1994/11/post-84c4.html

[目次]
第一章 バンカー西川の誕生
第二章 宿命の安宅産業
第三章 磯田一郎の時代
第四章 不良債権と寝た男
第五章 トップダウンとスピード感
第六章 日本郵政社長の苦闘
第七章 裏切りの郵政民営化


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