2012.01.21

▽年金倒産――企業を脅かす「もう一つの年金問題」

宮原英臣『年金倒産 ― 企業を脅かす「もう一つの年金問題」』(プレジデント社)

《役人然とした基金幹部に鼻先であしらわれたり、いかにも業界の重鎮といった風貌の、それだけが存在意義であるかのような高齢の理事長から恫喝まがいの批判を受けたり、あげくの果てには当社の業務妨害にもなりかねない怪文書を発せられたりと、さまざまな苦境に立たされてきた。》(p.219)

本書の著者は、もともとは経営コンサルタントであったが、顧客企業からの相談によって、企業年金にも深く関わるようになった。

企業年金は、国の定めた「厚生年金」と企業独自の「厚生年金基金」にわかれている。厚生年金制度の発足直後は、多くの企業が、「厚生年金」部分の資金運用も代行することで、より多くの運用収入を得ることができた。

しかし、バブル崩壊後には、逆に、この代行部分が損失を抱える「代行割れ」の状態に陥った年金が増えている。

2002年の法改正後は、大企業が単独またはグループで運営していた年金のほとんどは、「代行返上」や「解散」を行った。しかし、中小企業が加盟する「総合型年金基金」では、代行割れのままで「代行返上」や「解散」を行うと、巨額の負担が発生する。

神戸のタクシー会社、三宮自動車交通はこうした負担に耐えきれなかったのが原因で2007年に倒産した。この未払い金は、同じ年金基金に加盟していたタクシー会社が負担しなければならなず、タクシー会社の廃業が相次いだ。

一方、「全日本洋菓子厚生年金基金」は、コスト意識が高く経営体力のあるマクドナルドが加盟していたことや、幸運にも株価が上昇し「代行割れ」を回避できたこともあって、損失を出さずに解散することができた。

年金基金に巣くう天下り官僚の実情についても触れており、企業年金の抱える本当の問題点をわかりやすくかみ砕いて教えてくれる良書である。


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