2012.02.12

▽黒澤明と『用心棒』

都築政昭『黒澤明と『用心棒』―ドキュメント・風と椿と三十郎』(朝日ソノラマ)

黒澤明がつくった娯楽チャンバラ映画『用心棒』(1961年公開)と、その続編『椿三十郎』(1962年公開)の製作の舞台裏を描いたドキュメント。

黒澤神話を肯定的にとらえた黒澤ファン向けの内容が中心ですが、カメラマンをめぐるくだりは、ちょっと興味を引きます。

『用心棒』の撮影に際して、黒澤明は出世作『羅生門』でコンビを組んだカメラマン宮川一夫を招聘します。宮川は、溝口健二、市川昆、小津安二郎などの名監督の撮影をしてきたカメラマンの巨匠です。

しかし『用心棒』を撮影に入っていた頃の黒澤は、望遠レンズを備えた二台のカメラで同時に撮影する方式を採用するようになっていました。

そのため、宮川の絵作りのこだわりは反映されず、二番手カメラマンだった斉藤孝雄が望遠レンズを使って自由奔放に撮影した絵を黒澤は好むようになったそうです。

その結果、宮川がカメラマンとしての人生を回顧した本の中では、『用心棒』については一言も触れてなく、また、『椿三十郎』の撮影にも参加しなかったそうです。


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