2012.02.08

▽「新都」建設――これしかない日本の未来

堺屋太一『「新都」建設―これしかない日本の未来』(文春文庫)

《日本における重大な改革は、政治行政機構の地理的な移転か、外国との戦争による敗戦かによってしか起こっていない。二十一世紀の日本が、平和な社会を保ちつつ新しい時代にふさわしい改革を実現するには、新しい政治行政の中心都市「新都」を建設することであろう。》(p.47)

橋下徹大阪市長のブレーンである堺屋太一が1990年に上梓した『「新都」建設―これしかない日本の未来』(文庫版は1992年)。

1980年代後半の地価高騰を招いたバブル経済を引き起こした原因が東京一極集中にあるとされ、それに対する処方箋として書かれたのが本書である。しかし、その後のバブル崩壊によって東京の地下は下がり、「新都」への期待はしぼんでいった。

つづいて、小泉政権時代になると、ふたたび「遷都」が議題にあげられ、候補地も選定された。その際には、堺屋の主張もふたたび脚光を浴びたが、これもまた、支持を失い、道州制へと議論の焦点が移っていった。

そして――。

東日本大震災を踏まえて、政治、経済、文化の三つが東京に集中することへの懸念から、みたび、首都機能の移転や分散が関心を集めている。これには、大阪都構想を掲げる橋下徹というトリック・スターの存在も大きい。

また、堺屋は、放送、新聞、出版の大手マスコミが東京に集中させられたことが、文化的な閉塞感を生み出している、とも指摘している。

《戦後の新業種新業態の発生や流行したファッションの発生源はほとんどが地方であり、東京は人口比率よりも少ない。ただそれが、「流行」と認められるためには、東京のマスコミに取り上げられた場合に限られる。そしてそのためには、東京の中心部、千代田、中央、港、新宿、渋谷の五区で話題になることが条件になっている。》(p.72)

本書は、二十年以上も前に書かれたものではあるが、いまでも十分通用する知見が得られる。

[参考]
「首都機能移転」論議の終焉――日本のポストモダン Scene4
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2011/03/scene4-d343.html
平成維新とは?――日本のポストモダン Scene8
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2012/02/scene8-e107.html
▽『団塊の世代』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/1994/07/post-26c5.html


|

書評2012年」カテゴリの記事