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2012年3月

2012.03.31

▽政権交代とは何だったのか?

山口二郎『政権交代とは何だったのか』(岩波新書)

政権交代とは何だったのか?

えーと(笑)。

民主党による政権交代を支持してきた著者による民主党政権への総括の書。

著者は、2010年12月に放送されたのNHKの番組で「リフォーム詐欺の片棒を担いだ詐欺師みたいで大変肩身が狭いをしている」と発言したことで物議を醸しました。

また、最近では、改革を掲げる橋下徹大阪市長に討論番組でボコボコにたたかれたことでも知られています。

さて、本書において、著者は民主党が政権をとってからのダメな点をいろいろとあげていきます。しかし、やはり、民主党という党のなりたちに問題があったと言わざるを得ません。

《民主党自身も一九九八年に現在の形になって以来、政権交代を最大の統合原理として持続してきた。……しかし、自民党政権を終わらせることが唯一の目的であるならば、民主党は総選挙で勝利し、自民党を下野させた瞬間に自らも存在理由を失うことになる。》(p.47-48)

次の総選挙では、民主党が下野するのはほとんど自明のことにようにも思われるのですが、はたして自民党が批判票の受け皿になるのか? それとも新しい政治勢力が登場するのか? おそらく後者になるんだろうと思います。

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2012.03.30

▽プロメテウスの罠

朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠: 明かされなかった福島原発事故の真実』(学研パブリッシング)

朝日新聞に連載されていた時から、なにかと物議を醸していたのが、この『プロメテウスの罠』。ドキュメントとしてのクオリティは、大鹿靖明の『メルトダウン』よりも落ちますが、

▽大鹿靖明『メルトダウン』――福島第一原発事故ドキュメントの決定版
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/02/post-b55c.html

しかし、実名報道に徹した連載小説風のストーリーは、まだ解き明かされていない多くの「謎」を浮かびあがらせることに成功しています。

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2012.03.29

▽コラプティオ

真山仁『コラプティオ』(文藝春秋)

『ハゲタカ』シリーズなどで知られる真山仁は、本書の元になる小説を『別冊文藝春秋』に連載していたが、その最終回の締め切りは、東日本大震災の三日後の2011年3月14日だったという。そのため本書は、震災と福島原発事故を踏まえて大幅に加筆されたようだ。

カリスマ的政治家である宮藤隼人は、国益のために「原発産業を通じた経済復興策」を推進する。著者は、現実の政治家がふがいないことへのイラ立ちからか、リーダーシップを発揮する指導者を登場させるが、ちと現実との乖離が大き過ぎて絵空事のように感じられてしまうのが残念。

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2012.03.28

▽『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』

ひろゆき『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』(扶桑社新書)

本書は、巨大匿名掲示板「2ちゃんねる」の管理人だった「ひろゆき」こと西村博之が2007年上梓した本で、タイトルは、そのものずばり「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」。

本書では、2ちゃんねるが潰れない(潰されない)理由として次のように語っている。

《つまり、2ちゃんねるが消滅したとしても、なにか似たようなサービスが必ず出てくるのです。そして、そのWebサイトにユーザーが集まるという状況になるのではないでしょうか。2ちゃんねる的なサービスは、名前や形を変えつつも残り続ける。》(p.17)

最近、2ちゃんねるを取り巻く状況が大きく動いていますが、仮に、2ちゃんねるが潰れたとしても、似たようなサービスはまた生まれてくるのかもしれません。

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2012.03.27

▽無料ビジネスの時代

吉本佳生『無料ビジネスの時代: 消費不況に立ち向かう価格戦略』(ちくま新書)

本書は、無料ビジネス、いわゆる「フリーミアム」のビジネスについて、さまざまな分野で成功している事例を集めて分類したり、競合関係にある他のビジネス・モデルとの比較も行われており、入門書としてはきわめてよくできたものである。

本書で取り上げられている無料ビジネスは、無料コーヒー・サービス、テーマ・パークの無料アトラクション、携帯電話の無料ゲームなどである。

本書が秀逸なところは、今ひとつ盛り上がっていない分野も取り上げている点であり、それは何かというと、「出版」である。電子書籍では、クリス・アンダーセンの「FREE」が紙の本の出版前に電子版の無料公開を行い話題を集めました。しかし、話題になる本自体少なく電子書籍はあまり盛り上がっていません。

著者は、電子書籍の無料ビジネスがあまりうまくいかない理由として、次のように明快に述べています。

《日本の出版ビジネスは、すでに大規模な無料ビジネスをおこなっている。全国にある書店そのものが、まさに無料ビジネスだからです。》(p.219)

そしてまた著者は、無料で本を貸し出す図書館についても言及しています。もし仮に図書館でどのような本が人気があるか、というデータがTUTAYAのように活用できたら、それは出版業界にとって大きな武器になるのではないか、と。もちろん、個人情報の保護という法律の壁がありますが、しかし、無料ビジネスをテコにすれば、出版業界にも生き残りのみちがありそうです。

[目次]
第1章 無料ビジネスとは?―2タイプのコーヒー無料から考える
第2章 共同購入型クーポンvs.無料ビジネス―生き残るのは?
第3章 TDLとUSJのアトラクション無料―入場料金値上げとの関係
第4章 予算制約vs.時間制約―消費者のどこをまず狙うか?
第5章 ケータイと無料ビジネス―本質は個人向けファイナンス
第6章 消費不況と無料―無料ビジネスが日本経済を救う?
第7章 電子書籍と無料ビジネス―期待はずれに終わりやすい理由

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2012.03.26

▽伝説の「どりこの」

宮島英紀『伝説の「どりこの」 一本の飲み物が日本人を熱狂させた』(角川書店)

ひょんなことから、かつて日本で、「どりこの」という飲み物が一世を風靡したことがあった、と知りました。

そして、インターネットで、「どりこの」について検索してみると、なんと、「どりこの」について調べた本が、割と最近、出版されていたことを知りました。世の中は、不思議な力で動いているもんだ。

さて、この「どりこの」は、果糖やぶどう糖を主要成分とする滋養強壮ドリンクとして、戦前に大ヒットしたそうです。

そして、この「どりこの」を積極的に売っていたのが、大日本雄弁会講談社。そう、いまの講談社です。

出版社がなぜドリンクを? とも疑問に思うのですが、当時の講談社の野間清治社長が非常に強い思い入れをもって売っていたそうです。雑誌との連携によって、また、手軽な栄養分を補給するドリンクとして、爆発的な売れ行きを記録したそうです。

さて、その「どりこの」は、どうなったか? 戦争による物資不足から、原料となるサトウキビが入手できなくなって、生産は中止。

戦後になってから生産を再開したものの、「どりこの」の生みの親である髙橋孝太郎博士は、一切のレシピを残さなかったことから、まさに伝説の飲み物になってしまったそうです。

本書は、現存する「どりこの」を試飲したりと、「どりこの」にまつわる執念のルポになっています。

[参考]どりこの探偵局
http://blog.goo.ne.jp/gendai_premier/c/20f82de8d74bdffce9dac50be28a351b

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2012.03.25

▽銀座と資生堂

戸矢理衣奈『銀座と資生堂 日本を「モダーン」にした会社』(新潮選書)

最近、また「銀座」が注目を集めています。

「銀座」の持つモダンなイメージを、もっともうまくマーケティングに活用してきた企業と言えば、「東京銀座資生堂」のキャッチコピーで知られる「資生堂」をおいて他にないだろう。

本書は、そんな「資生堂」と「銀座」の関わりにフォーカスをあてた研究所。もともとは新橋で創業された資生堂が銀座に移転し、いかに銀座のイメージとともに成長してきたかが明らかにされる。

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2012.03.24

▽アフター・ザ・レッド

朝山実『アフター・ザ・レッド 連合赤軍 兵士たちの40年』(角川書店)

今年は、連合赤軍による「浅間山荘事件」から40年となるため、ふたたび、あの時代の振り返るような書籍も多く出版されるようです。

ただ、本書は、必ずしもそういう流れの中から出てきたわけではないようです。まず、著者は、連合赤軍を描いたマンガ『レッド』の作者である山本直樹に取材をします。

それが、連合赤軍に関わるきっかけであり、連合赤軍兵士たちの「その後」に興味を持つようになった、とのこと。山本直樹のマンガがきっかけだったものの、兵士たちはマンガには親しんでこなかったという。

《取材をしていて気になったのは、彼らの多くがほとんどマンガ文化とは遠いところにいたことだ。……彼らは、意外なほどマンガに親しんではこなかった。サブカルチャーに時間を割いてはいられないほど、「革命」に夢中になっていたということか。その真摯さが、逆に働いたのかもしれない。》(p7)

本書は、「総括」という悲劇を生んだ、あの事件を、改めて「総括」しようという試みなのだろうけども、それは、いまだ果たせていないようにも感じられます。

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2012.03.23

▽メディアの罠

青木理x神保哲生x高田昌幸『メディアの罠』(産学社)

ジャーナリスト三者による鼎談。三人とも、大手メディアで仕事をしたこともあるし、フリーランスとして活動した時期もあることから、両方の立場からジャーナリズムを語ることができる。

三人の共通認識は、インターネットの登場によって、大手メディアも史上初めて市場原理にさらされるようになった。そのため、調査報道などの良質なジャーナリズムは隅に追いやられつつある、という。

悩ましいのは、だからといって、フリーランスのジャーナリズムが活性化しているかというと、そうでもないという点。

[目次]

まえがき 3

第一部 崩壊する大メディア

それぞれの問題意識

神保哲生
ジャーナリズムのノウハウは公共財
大メディアの没落で切らしてはいけない

青木 理
感情的で表層的な批判は無意味
「大メディア後」に残すものを考えよう

高田昌幸
組織の保守化がメディア危機の本質
カギは「取材力をどう回復するか」にある

㈠ 大メディアの保守化と官僚主義
「おれは偉いんだ」 自分と会社を一体化 49
特権一六社 その言論支配は続く 53
新規参入に高い障壁 平然と妨害工作も 57
ちゃんと取材していないことがバレてきた 64
かつては「従軍記者」 今も「従軍記者」 69
思考も記事のスタイルもパターン化 76

㈡ 記者クラブの若い記者vsエリート官僚
エリート官僚は日々記者を「洗脳」する 86
権力に寄り添うクソのような御用記者たち 95
省庁担当の若い記者が官僚に対抗できるか 103
「持ち込みネタ」で当局と一体化する報道 108
記者「室」は死守せよ そして開放せよ 120

㈢ 報道危機の根源は事件報道
記者クラブが変われば報道は変わるか 127
世界的にも超異常な日本の警察報道 130
警察記者クラブが日本の報道をダメにする 139
「リーク」は悪くない 問題は「リーク後」 145

㈣ 取材力の劣化と蔓延する事なかれ主義
批判や提訴を怖れ、自己規制からタブーへ 149
「北朝鮮タブー」と共同通信平壌支局 156
崩れゆく既存メディア 生き残りの道はあるのか 164
ネットは記事のバラ売り 人気上位は「三面記事」 171
「一〇〇部なら怪文書 一〇〇万部なら世論」の本当の意味 176
市場原理の深化と取材力向上 両立は可能か 181

第二部 福島原発事故と報道

それぞれの問題意識

青木 理
今の大メディアは安全運転と自己規制の塊
その病理が原発事故報道で一気に露呈した

高田昌幸
「自由に書けと言われても困る」と戦前の記者
権力に従順な姿勢は何十年も変わっていない

神保哲生
予防原則を全く理解していない大メディア
「上から目線」では再生の道はない

㈠ 事故現場に近づかない本当の理由
「放射能で危険だが現場で取材を」と職務命令できるか 212
現場に近づくのは「非主流」の報道記者 223
当局の指示に従うだけの組織メディア 228
コンプライアンス・ジャーナリズムの病理 235

㈡ 原発タブーと大メディアの官僚化
経済部記者が原発担当の大メディア 242
「原発という既成事実」に切り込めない理由 248
東京発・当局発の報道が日本を覆い尽くす 253
「発表報道」は当局側に立った「偏向報道」 256
「分からないこと」を書けない大メディア 261
電力会社に媚びる新聞社は何を守っているのか 265

㈢ 事故報道で見えた大メディアの限界と今後
黎明期 原発の導入過程を報道できていたか 270
矛盾を突かず「見解一本化」を要望する大メディア 279
「内部文書」のすっぱ抜きがない事情 284
東電会見が溜飲を下げる場に? 会見開放の落とし穴 290
鬼畜米英から一夜で民主主義へ あのときと同じ危険も 301
大メディアの大敗北 教訓を今後に生かせるのか 311

【資 料】
第一部関連
記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解 320
記者会見の全面開放宣言〜記者クラブ改革へ踏み出そう〜 328
記者会見・記者室の完全開放を求めるアピール 331
記者会見・記者室の開放に関する申し入れ 333
【会館開放を求める会 5/18資料】当会申し入れに対する各報道機関からの回答 335

第二部関連
全記録/フクシマのすべて 342
福島原子力発電所事故対策統合本部の共同記者会見の実施について 353
【共同アピール】福島第一原発敷地内と「警戒地域」内での定期的な取材機会の要請 354 
細野豪志原発担当相の現地同行取材に関する申し入れ(11月2日分) 356
細野豪志原発担当相の現地同行取材に関する申し入れ(11月4日分) 357
「官制」極まった福島原発報道=白垣詔男 358

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2012.03.22

▽ドラゴン・タトゥーの女

スティーグ・ラーソン『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上)』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

スティーグ・ラーソン『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(下)』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

まずは、あらすじの紹介を。

《月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家の違法行為を暴く記事を発表した。だが名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れた。そんな折り、大企業グループの前会長ヘンリックから依頼を受ける。およそ40年前、彼の一族が住む孤島で兄の孫娘ハリエットが失踪した事件を調査してほしいというのだ。解決すれば、大物実業家を破滅させる証拠を渡すという。ミカエルは受諾し、困難な調査を開始する。》

なんだか、ヨーロッパの実業界を舞台とした経済サスペンスもののような導入なんですが、下巻からは、過去に発生した、猟奇的な連続殺人事件をめぐるミステリーへと急展開。

一粒で二度おいしい長編ミステリーです。

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2012.03.21

▽あぶない地名

小川豊『あぶない地名 (災害地名ハンドブック)』(三一書房)

東日本大震災以降、地名から、過去に災害あったかどうかを判断する、という類の本が数多く出版され、また、注目を集めてきました。

本書は、地名にまつわる蘊蓄のような部分は少なく、辞書のようにできるだけ多くの地名を収録したハンドブックです。

こういう書を読んでいると、地名を人為的にかえてしまうのは、あまりよくないことなんだな、と思います。

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2012.03.20

▽日本の地方財閥

菊池浩之『日本の地方財閥30家 知られざる経済名門』(平凡社新書)

本書の著者はソフトウェア会社に勤務しつつ、企業集団の研究を発表する在野の研究家。これまでにも、『日本の15大財閥』、『日本の15大同族企業』などを上梓しており、本書は、その第三弾となる。

サラリーマンである著者は、「他社への直接取材を行わないことに決めている」(p.255)ことから、その叙述は、もっぱら膨大に集めた資料に立脚したものとなっている。

章立ては、「地域編」と「事業編」にわけられているが、地方財閥といえども麻生家のように総理大臣を排出したり、「キッコーマン」や「ミツカン」などの全国的に有名な商品を生み出したりとバラエティに富んでいることがわかる。

[目次]
第1部 地域編
甲州財閥(若尾家、根津家)
江州財閥(伊藤忠兵衛家、飯田家)
中京財閥(岡谷家、瀧家、神野家、森村家)
九州財閥(貝島家、麻生家、安川家)
阪神財閥(岩井家、嘉納家、辰馬家、岡崎家、川西家)

第2部 事業編
醤油(茂木家、浜口家、正田家)・酢の部(中埜家)
農林水産の部(田部家、諸戸家、本間家、中部家)
紡績・製糸の部(大原家、片倉家、坂口家)
機械工業の部(島津家、中島家、服部家)

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2012.03.19

▽震災復興 欺瞞の構図

原田泰『震災復興 欺瞞の構図』(新潮新書)

《私は、東日本大震災で毀損された物的資産は、公的資産と民間資産を合わせて、せいぜい6兆円なのだから、山を削って高台を造ったり、割高な自然エネルギーを使うエコタウンを造ったりなどしなければ、復興増税は必要ないと、非力ながら、一人でキャンペーンを行ってきた。キャンペーンの最中に、私の6兆円しか壊れていないという指摘に賛同して下さる方は多かったが、反論される方はいなかった。》(p.8)

著者によると、政府が震災によって毀損された物的資産を16.9兆円と過大に見積もったのは、これに便乗して増税をしたい、という震災復興とは別の魂胆があった、と指摘する。

実際、野田政権は、消費税増税路線を突き進んでおり、この指摘はうなずける。

奥尻や阪神大震災などの、過去の震災復興の再検証や、なぜ政府は税金を使いたがるのか? など、震災復興の陰に潜む欺瞞を露わにしている。

[目次]
序論・人を助ける復興策とは?

第1章 大増税の口実に使われる大震災
物的資産毀損額16.9兆円説の誤り/結局、いくら壊れたのか/日本人一人当たりの物的資産は966万円/考慮すべき減価償却/自治体の推計から想定される被害額/負債金額からの推計/結語
付論 政府の数字に気をつけろ――物的資産の毀損額 内閣府の推計16.9兆円の誤り/日本政策投資銀行の被害推計の見方/新品で補償するのは不公平/過大な被害推計/民間企業資本ストック額の謎

第2章 過去の震災復旧対策の浪費ぶり
奥尻島では島民一人当たり1620万円使った/阪神淡路大震災は被災者一人当たり4000万円/ゴーストタウンの建設に使われた復興費/浪費だった神戸市のプロジェクト/中越地震はリーズナブルな復興/仮設住宅という高コスト支援策/コスト感覚が欠如した復興計画/戦争中もコストカットを主張したトルーマン/結語

第3章 政府や県が無駄遣いに積極的な理由
国は何に使おうとしているのか/羅列された無関係な対策/2012年度予算案での復興経費/狙い撃ちされた富裕層/復興庁と復興特区/自治体の望む「復興」/費用はどうなるのか/高台移転は高コスト/復興予算は関係ないことに使われる/復興を遅らすだけの議論/農業と漁業の相違点/漁業権とアメリカ占領軍の気遣い/愚かな「創造的復興」/インフラ建設に時間がかかる理由/工事の遅延が最大の目的/意図的に遅らされる震災復興/結語

第4章 最も安上がりで効果的な復興策
組織やビジョンは必要か/東日本復興のツボ/復興と個人財産の復旧/国民一人一人の力を信じよ/進む人口減少/安上がりな復興計画/被害が大きかったのは新興市街地/個人財産復活とモラルハザード/個人への公的援助は問題か/復興資金の調達法/ゴーストタウン効果と円高効果/復興増税長期化の奇妙さ/これまでの赤字はどうする/税と社会保障の一体改革の議論はずれている/デフレ脱却に役立つか/結語

第5章 過去の大震災に学ぶ
震災復興についての6つの論点/デフレが続いた関東大震災後/デフレにしながら個別企業を助けていた/デフレの害悪/成功したインフラ再建/帝都復興院/石橋湛山の帝都復興院論/地盤低下が収まらなかった兵庫県/天変地異の後はデフレが起こる/阪神淡路大震災の被害と復興政策/円高への対処法/結語

第6章 原発事故の教訓
原発依存のルーツ/国家戦略としての原発/植民地との類似性/取り込まれる規制者/情報は規制される側にある/ウソをついているうちに真実が分からなくなってくる/安くなかった原発/効率重視が理由か/本当の発電コスト/原発推進国ほど安いのか/原発を使うほど安くなるか/電力料金低下の理由/CO2問題への対応/利己主義という気概/他人の願望と自らの犠牲/牛肉よりも稲藁が安い/企業と政府の責任/結語

終わりに

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2012.03.18

▽知的財産権侵害を防ぐのが狙い――『TPP 知財戦争の始まり』

渡辺惣樹『TPP 知財戦争の始まり』(草思社)

TPPにおけるアメリカの真の狙いは何か? について解き明かしたのが本書『TPP 知財戦争の始まり』である。

いま、オバマ大統領が米国民から期待されていることは、雇用を創出することと、アメリカの将来を託す産業を育成すること、の二つである。そして、この二つの目的を達成するために、オバマ大統領がTPPにおいて狙っていることは、巷間いわれているような、農業を含む自由貿易体制の構築ではない、と著者は指摘する。

現在のアメリカの稼ぎ頭は、サービス部門であり、それは金融サービスによる収入と、特許料や著作権料などの知的財産権からの収入である。

そして、TPPには、ブルネイとベトナムという二つの小国が参加しているが、実は、この二国は、知的財産権の侵害においては大国であるという。つまり、TPPを通じて、この二国の著作権侵害をコントロールできるメカニズムを構築するのが、TPPの真の狙いである、と著者は指摘する。

さらに、このメカニズムがうまく機能するようになったら、その次のターゲットは、知的財産権侵害の超大国である中国になる、というのが著者の見立てである。

ある試算によると、中国における、著作権の侵害、特許の悪用、商標の悪用などによって、アメリカは482億ドル(約四兆円)の損害を被っている。この損失を取り返すことができれば、それはアメリカにとっては大きな成長分野になるのである。

そして、このメカニズムにうまく乗ることができるのならば、日本にとっても大きなメリットがあるようだ。

[目次]
1章 影のプランナーを探せ
2章 コメの自由化は“目くらまし”
3章 知的財産権の輸出こそが本命
4章 ルール無視の大国、中国
5章 アメリカの宣戦布告
6章 アメリカの生存をかけた通商戦争
7章 アメリカ型法システムの実際
8章 企業vs.国家の紛争解決システム(ISD条項)の構築
9章 中国の横暴を抑え込むルールづくり
10章 TPP参加で日本の将来はどうなる

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2012.03.17

▽中国化する日本とは?

與那覇潤『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』(文藝春秋)

本書を、すご~くおおざっぱに要約すると、中国は宋代に「科挙」という制度を導入して、身分制社会から実力性の社会に移行した。「科挙」を支えていたのは、印刷・出版技術であり、当時の中国にしか存在しなかった。

翻って、当時の日本は、宋の後を追うことはなく、身分制社会に閉じこもったままだった。著者はこれを「江戸時代化」と呼ぶ。それ以来、日本社会は、グローバルなスタンダードにあわせることなくきた。

しかし、インターネットをはじめとする情報拡散ツールの普及によって、ついに日本も、身分制社会から実力性の社会に移行するのではないか?

これが著者の言う「中国化する日本」の真意である。たぶん。

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2012.03.16

▽「チーム久夛良木」の美学とは?

西田宗千佳『美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史』(講談社BIZ)

プレイステーション( PlayStation )、プレイステーション2の成功から、PSX、プレイステーション3の失敗までの「チーム久夛良木」の十五年を描いたもの。

いい意味でも悪い意味でも歴史に名を残した久夛良木健がいかにプレイステーションやソニーの経営にコミットしたかを、特に神格化するわけでもなく、貶める意図もなく、過不足なく描いている。

ただ、プレイステーション3を巡る過剰スペックと過大な投資、そして、その失敗の責任を、単に「美学」だけで片付けてよいものかどうか、疑問は残る。

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2012.03.15

▽ボーカロイド現象

『ボーカロイド現象』(PHP研究所)

東日本大震災は、さまざまな領域に「空白」を生み出してしまったような気がします。最近になって、「あれ、こんな本が出ていたのか?」と気がつくこともしばしば。

そんな一冊が、この『ボーカロイド現象』。2007年8月の『初音ミク』登場以来、とどまるところを知らぬボカロ・ブームを概観するために、キーパーソンにインタビューを刊行。

ボカロ・ブームの一つの区切りとして、満を持して上梓されたのですが……。発売が、東日本大震災と福島原発事故の動揺もさめやらぬ2011年4月1日ということもあって、残念ながら、ちょっと埋もれてしまった感はぬぐえません……。

一年遅れですが読んでみると、ボカロに関わってきた主要な人物は、ほぼ網羅されていて決定版と言ってもよい内容です。後から振り返っても、2011年時点の記録としてはよくできていると思います。

[目次]
ボーカロイド紹介
イベント/フィギュア/ゲーム
まえがき

序章 ボーカロイド前史 音楽ビジネス基盤背景
 コンテンツ産業は真の国家戦略になりうるのか?

第一章 ボーカロイドとは
 ボーカロイドが生み出すもの
 "歌声を創る"システム 歌声合成エンジン「VOCALOID」開発秘話 剣持秀紀

第二章 現象の波及とその舞台
 ボーカロイド現象の波及
 ユーザーが主役の新時代テレビ ボーカロイド文化発祥の地「ニコニコ動画」 齋藤光二

第三章 ユーザー同士の「バトンワーク」
 ネットでセッションするバトンワーク
 "歌ってみた"アーティストのメジャー進出 舞台は"インターネット"から"お茶の間"へ 八代富士夫

第四章 立体化するキャラクター
 立体化する仮想アイドル CGデビュー
 「MikuMikuDance」作者の考えるボーカロイド文化への想いとは 樋口優
 「MikuMikuDance」による3DCG作品の祭典「MMD杯」 かんなP
 立体化する仮想アイドル フィギュア表現
 仮想アイドルを手の中に ボーカロイド立体化商品の登場 田中聡

第五章 ゲーム&ライブ
 持って歩ける初音ミク ProjectDIVA
 歌って踊るバーチャルアイドル リズムゲーム「Project DIVA」 内海洋
 会いに行ける初音ミク ミクFES'09(夏)
 セカイに降臨した電子の歌姫 軌跡のステージングの舞台裏 内海洋

第六章 音楽業界への影響
 音楽産業はボーカロイドをどう見たのか?
 ボーカロイド、夢のオリコンチャート1位獲得! 池田俊貴
 ユーザー発信のニコニコ文化 CD商品化に込められた想いは 竹内彰廣
 続く音楽不況 今だからこそレーベルに必要なこととは 村田裕作
 若者はなぜボーカロイドに惹かれるのか?
 ランキング席巻! 高まるボーカロイドカラオケ人気 小林拓人
 カラオケDAMのボーカロイド本格参入 ボカロが「カラオケ」にもたらすモノとは 松下智

終章 海外展開と今後の展望
 海外ではボーカロイドをどう見たのか?
 "キャラクターボーカル"という可能性 「初音ミク」の開発に至った意図とは クリ☆ケン
 「がくっぽいど」「Megpoid」 生みの親が語るボーカロイドの今と未来 村上昇
 VOCALOID、VOICEROID 技術の進化によって変わるセカイ 尾形友秀

VOCALOID年表
用語集
あとがき

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2012.03.14

▽ヤクザもツライよ――『ヤクザ300人とメシを食いました! 』

鈴木智彦『ヤクザ300人とメシを食いました! 』(宝島社)

『ヤクザと原発』で一躍その名を知られるようになったルポライターの鈴木智彦が、ヤクザの素の表情を明らかにする。本書は、2007年に発行された『極道のウラ情報』(宝島社)に加筆・修正を加えたもの。

ルポというよりもトリビア的な内容が多いのですが、ふかしや誇張のないヤクザのありのままの姿が描かれていると思います。

[目次]
まえがき

第1章 突撃! ヤクザの晩御飯
 ヤクザ300人、いや本当は500人とメシを食いました!
  いまや大人数での食事は暴排条例違反に
  今年だけでも200人とメシを食った計算に!?
  見栄っ張りだから「高いものが美味しいもの」
  意外に質素な事務所での食事
  刑務所メシ、それぞれの思い出
  ヤクザはなぜ焼き肉好きなのか?
  若手組長がファミレスを好むわけ
  老舗高級店はヤクザがいなければ潰れてしまう
  一緒にメシを食うのが人たらしの基本
 突撃! ヤクザの晩御飯
 ヤクザの経営する飲食店のヒミツ
 暴力団お断りの店はどこまで本当か?
 極道メシのトリビア――賭場から生まれた「鉄火巻き」

第2章 公開! 極道の私生活
 健康オタクのヤクザが増えてるってホント?
 ヤクザに人気の美容整形外科
 親分たちのユニークなストレス解消法
 ヤクザとオカルトの奇妙な関係
 ヤクザに休暇はあるのか?
 ヤクザは生命保険に入れるのか?
 ヤクザが絶対買わないカーナビ
 ヤクザが入れた「刺青の絵柄」ランキング!
 刑務所の差し入れで大人気の雑誌
 ヤクザのスーパースターが白いスーツを好む理由
 ヤクザのあまりにも過剰な性欲
 増加するヤクザの自殺
 ヤクザの葬式を断るお寺が増えている

 特別漫画――本当にあった極道の話
  (1) 実録! 勝ち組ヤクザの金銭哲学
  (2) ヤクザ組織の福利厚生を拝見!
  (3) 体験! これがヤクザの部屋住みだ

第3章 シノギのトリビア
 こんなにあるヤクザ直営サイト
 ドラッグ相場のリアル経済学
 組事務所の運営費はいくらか?
 ソープランドとヤクザの親密な関係
 ヤクザがいなければカニを食べられない!?
 オタクの聖地「秋葉原」とヤクザの意外な関係
 ヤクザに寄生するカタギたち
 ミカジメ料の時代は終わったか?
 同和利権から宗教にシフトするシノギ
 ヤクザが国際空港を作ったってホント?
 総会屋は絶滅したか?
 フロント企業の賢い見分け方
 東京でフロント企業が一番多い区はどこ?

第4章 暴力のトリビア
 暴力団の防弾グッズ大公開
 ヤクザ恫喝マニュアル
 科学捜査対策に力を入れる現代ヤクザ
 ヤクザの天敵大解剖
 逃亡するヤクザの「潜伏先」ランキング!
 ヤクザが裁判で無罪を主張しないワケ
 マスコミの「抗争報道」はピンボケばかり
 暴力団追放センターは税金ドロボウ
 不良少年の“ケツ持ち”になるヤクザたち

 特別漫画――あなたの知らない極道の世界
  (1) 親分のボディガードに密着!
  (2) これがヤクザの掛け合いだ!
  (3) 刺青を入れてみました!?

第5章 盛り場のオキテ
 六本木「貸し縄張」の真実!
 歌舞伎町が「ヤクザの見本市」になった理由
 名古屋 山口組六代目を生んだ都市の意外な治安事情
 大阪・ミナミとキタ 山口組の寡占化でイビツな勢力争いも
 札幌・ススキノ 観光裏名所「性風俗店」と地元ヤクザの蜜月
 仙台 杜の都はヤミ金の一大拠点だった
 横浜 モダンな港町はフロント企業の巣窟
 福岡 独立組織が群雄割拠する特異な風土

巻末付録――世界遺産にしたい!? ヤクザ史跡ガイド
~聖地「大阪」「広島」のスポット巡り~

あとがき

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2012.03.13

▽『落合戦記』――すべてはここからはじまった

横尾弘一『落合戦記―日本一タフで優しい指揮官の独創的「采配&人心掌握術」』(ダイヤモンド社)

中日ドラゴンズの落合博満前監督といえば、ベンチの中でずっと能面のような顔で戦況を見つめている、というイメージが強いですよね。ニコリともしないで、だまってグラウンドを見ているだけ、という。

ところが、ベースボール・ジャーナリストの横尾弘一が、落合監督一年目(2004年)の全試合に帯同して書いた本書、『落合戦記』では、意外な記述に出くわしました。

《8月27日
 ……シーズン途中から、監督があまりにも笑顔を絶やさないことが注目され、テレビ中継ではベンチにいる監督の表情が映し出されることが多くなった。確かに、選手に話しかけている時はもちろん、戦況を見つめている際にも笑顔がほとんどだ。》(p.255)

あれ……。そう言われてみると、一年目の落合監督は、いつもニコニコしていたような気もします。

仏頂面をするようになったのは、選手が監督の顔色をうかがうようになってることに気がついたから、という発言もどこかで見た記憶もありますね。

とにかく、本書は、就任一年でドラゴンズを優勝に導いた苦労と栄光が詰まったスリリングな一冊です。

なかなか、こういう手間暇をかけた、しかも結果がハッピーエンドなノンフィクションはありませんよね。

[参考]
▽落合監督ご苦労様でした――『采配』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/post-ddf4.html
▽落合博満伝説
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/11/post-e860.html
▽落合が語るコーチング術
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/01/post-c1b2.html

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2012.03.12

▽震災復興

日本経済新聞社編『震災復興 日本経済の記録』(日本経済新聞出版社)

震災を記録した別冊というと一般紙が出版することが多いのですが、本書は、日本経済新聞社による企画。「おわりに」には、

《これは日本経済新聞の記者たちが「つくりたい」と訴えて、できあがった本です。》

とあります。3月12日からの紙面の切り抜きと、記者たちが新たに書き下ろした記事で構成されています。

ニュース記事が中心のため、その時その時の事実がたんたんと並べられていますが、大震災からほぼ一年たって、ようやく日本経済も立ち直りの気配が見えてきたような気もします。

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2012.03.11

▽当ブログで紹介した本――東日本大震災・福島原発事故から一年

日本を揺るがした東日本大震災と福島原発事故が起きてから一年がたちました。そこで、当ブログで紹介した本の中から、あらためて重要な知見や視点をあたえてくれるものを紹介したいと思います。

▽最悪の事態が起きた場合は?――『原発事故…その時、あなたは!』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-88e4.html
▽『朽ちていった命』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/post-9d7f.html
▽内部被曝の真実
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/09/post-41f5.html

▽ヤクザと原発
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/12/post-c21a.html
▽『原発労働記』(『原発ジプシー』改題)
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/05/post-fb07.html
▽震災死――生き証人たちの真実の告白
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/02/post-63c1.html

▽大震災と原発と新聞と――『巨怪伝』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-8445.html
▽『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/02/post-6943.html
▽東日本大震災の流言・デマを検証する
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/07/post-3022.html

▽『原発・正力・CIA』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/06/cia-d1f5.html
▽大新聞と停電と共産主義と
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/07/post-4def.html
▽菅直人という男――山本譲司『獄窓記』より
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/07/post-2d13.html

▽大鹿靖明『メルトダウン』――福島第一原発事故ドキュメントの決定版
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/02/post-b55c.html
▽あのケビン・メアが見た『決断できない日本』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/09/post-07d9.html
▽『日本中枢の崩壊』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/06/post-0342.html

▽『知事抹殺』――福島が焦点だったと改めて思い起こさせる
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/07/post-18be.html
▽『福島原発の真実』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/07/post-fcd4.html
▽『誰が小沢一郎を殺すのか?』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/post-cff7.html

▽『私たちは、原発を止めるには日本を変えなければならないと思っています。』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/01/post-c613.html
▽『原発社会からの離脱』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/01/post-8cc2.html
▽『東電帝国』――その失敗の本質
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/06/post-8160.html

▽吉村昭『関東大震災』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/05/post-116a.html
▽『東京考現学図鑑』――関東大震災から復興していく東京の記録
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/06/post-02a6.html
▽「新都」建設――これしかない日本の未来
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/02/post-794e.html

▽柏崎刈羽「震度7」の警告
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/7-ac7d.html
▽『地震と社会』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/post-3c76.html
▽『「失敗学」事件簿』――あの失敗から何を学ぶか
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/06/post-c197.html

▽グッドモーニング、ゴジラ
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/03/post-9b6c.html
▽ゴジラ音楽と緊急地震速報
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/01/post-ad29.html
▽流離譚――幕末維新を駆け抜けた奥州の安岡家
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/03/post-ce40.html

▽パニックにならないためにも――『放射能で首都圏消滅―誰も知らない震災対策』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/post-9bf4.html
▽生き残る判断 生き残れない行動
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/04/post-4e18.html
▽人類が消えた世界
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/07/post-c59d.html

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2012.03.10

▽アメリカで日本のアニメは、どう見られてきたか?

草薙聡志『アメリカで日本のアニメは、どう見られてきたか?』(徳間書店)

少し古い本で、2003年の刊行。2001年から2003年まで「朝日総研リポート」に連載された「年代記・米国の和製アニメ」をまとめたもの。発行は、徳間書店のスタジオジブリ事業本部(当時)で、資料としても貴重です。

[目次]
1章  ある文化輸出の期待と現実
2章  動く「小説」とテレビ暴力批判
3章  方法としての「国籍抹消」
4章 「異物」の排除と「異質」の受容
5章  玩具の後見と「外科医」たち
6章 「ジャパネスク」の再発見
7章  ゲーム・アダルト・美少女戦士
8章 「ジャパニメーション」から「ポケモン」へ
9章  繁殖する「ポケモン」の後継者たち
10章 「メディア芸術」の国から

[付録資料]アメリカの和製アニメ年譜

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2012.03.09

▽マリオの履歴書――『ニンテンドー・イン・アメリカ』

ジェフ・ライアン『ニンテンドー・イン・アメリカ: 世界を制した驚異の創造力』(林田陽子訳、早川書房)

本書の原題は、"SUPER MARIO: How Nintendo Conqurerd America"で、任天堂のゲームに登場する、あの「マリオ」の変遷を軸に、任天堂が、どのようにアメリカのゲーム市場で勝ち抜いてきたか、を時系列に紹介していくという趣向。

ただ、キャラクターとしてのマリオの紹介、ハードやソフトの技術の変遷、アメリカのゲーム市場の消長、任天堂の開発者達と、いろいろな分野に光を当てようとした結果、ややフォーカスがぼけてしまった嫌いがあって、アメリカのゲーム業界に関する基本的な知識が無い人にはわかりづらい部分があるかも知れませんね。

[目次]
序章 マリオのインサイド・ストーリー

Part 1
第1章 マリオの産声――ニンテンドー・オブ・アメリカの誕生
第2章 マリオの創造主――宮本茂と「ドンキーコング」
第3章 マリオの喧嘩――対ユニバーサル訴訟
第4章 マリオの旅立ち――1983年のビデオゲーム大恐慌

Part 2
第5章 マリオの島――日本とファミコン
第6章 マリオの陽光――「スーパーマリオブラザーズ」とNES
第7章 マリオの爆弾――「ザ・ロスト・レベルズ」
第8章 マリオのスマッシュヒット――「スーパーマリオブラザーズ3」
第9章 マリオの兄弟――NESとゲームボーイ
第10章 マリオのライバル――セガを救ったハリネズミ

Part 3
第11章 マリオの対決――ソニック VS. マリオ
第12章 マリオの銀河――スピンオフの嵐
第13章 マリオのクレヨン――「マリオペイント」
第14章 マリオのアドバンス――ソニーとの短い蜜月
第15章 マリオのカート(リッジ)――バーチャルボーイと3Dの夜明け

Part 4
第16章 マリオの世界――NINTENDO64
第17章 マリオの通信キット――64DD
第18章 マリオの大乱闘――ゲームキューブ
第19章 マリオのタイムマシン――ゲームボーイアドバンス
第20章 マリオのサーガ――@光と影

Part 5
第21章 マリオの革命――ニンテンドーDS
第22章 マリオのプリンセス――Wii
第23章 マリオのパーティ――3DS、あるいは任天堂の歴史における3日間
第24章 マリオの伝説――任天堂の未来

あとがき
参考文献

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2012.03.08

▽山寨革命とは何か?――『中国モノマネ工場』

阿甘『中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃』(日経BP社)

本書は、中国の携帯電話産業について書かれたものなのですが、ざっと読んだだけでは、何が書かれているのか、さっぱりわかりません(笑)。中国人独特の言い回しや比喩などに馴染みがないこともありますが、そもそも中国における携帯電話事業についての知識が乏しいことにも原因があると思います。

まずは、サブタイトルにもある「山寨革命」について解説すべきかもしれませんが、あえて「山寨革命」より前の時代について触れておきます。

本書によると、中国において携帯電話は、まず国外のメーカーによってもたらされました。それは、ノキア、サムスン、ソニー・エリクソン(当時)などで、これらは日本人にも知られているメーカーです。

これらに対抗すべく、1999年頃から中国資本のメーカーが参入しました。これらのメーカーは、半完成品を輸入して自社で組み立て、自社のブランドをつけて販売したことから、中国では「ブランド携帯」と呼ばれているそうです。

この「ブランド携帯」は、2002年、2003年には一世を風靡したのですが、品質が劣ることから2004年に入ると失速、中国メーカーは全社赤字に陥ったそうです。

その二年後に現れたのが、本書の主役である「山寨携帯」です。

さて、ようやく「山寨革命」の話題に入りますが、「山寨」は、日本語では「さんさい」と発音します(中国語ではShan Zhai)。「山寨」の元の意味は、「山の中の要塞」という意味で、さらに「農民による反統制運動」を意味する語として使われるようになり、「北京オリンピックの前後に意味が拡大され、コピー、偽物、ゲリラ、非官製、草の根などを示す言葉として使われ始めた」(p.1)そうです。

「山寨携帯」というのは、特定の携帯電話メーカーをさすのではなく、さまざまな得意分野を持つ個々の企業が有機的に結合して生産する携帯電話群の総称ということになります。

具体的には、メディアテックという台湾の半導体メーカーが作ったチップを採用し、龍旗や聞泰などのデザインハウスが設計を行っています。また、部品の調達、金型の製造、製品の組み立てにも多くの中国企業が関わっていますが、あえてブランドをつけずに販売されています。そういう風に生産された携帯電話群が、「山寨携帯」と呼ばれているわけです。

《山寨携帯のビジネスモデルの主体は一つの会社が一つか二つの工程に集中し、それらの間を市場の紐帯を使ってつなぐというものだ。》(p.54)

「山寨携帯」の生産台数は爆発的に増えている、とのこと。

というようなことを頭に入れてから読むと、本書の内容もすっきりと頭に入ってくると思います。

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2012.03.07

▽2ちゃんねると管理人と削除人と

山田隆司『名誉毀損』(岩波新書)

巨大匿名掲示板と称されることの多い2ちゃんねるですが、違法薬物の密売に関する書き込みに関し、警察からの削除要請を拒み、放置していたことから、違法薬物売買の幇助の疑いがあるとして、警察が捜査に踏み切りました。

▼警視庁が「2ちゃんねる」を捜索 薬物売買書き込みめぐり
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012030701001297.html
《インターネット掲示板サイト「2ちゃんねる」に書き込まれた覚せい剤売買を持ち掛ける記述を削除せず放置した疑いがあるとして、警視庁が麻薬特例法違反(あおり唆し)のほう助容疑で、同サイトの関連会社など約10カ所を家宅捜索していたことが7日、捜査関係者への取材で分かった。》

2ちゃんねるにおける削除人の問題は、過去にも、「動物病院の名誉毀損問題」で、取り沙汰されました。本書『名誉毀損』でも、触れられています。

動物病院が、2ちゃんねるの書き込みによって名誉が毀損された、と訴えた裁判では、書き込みの削除と、賠償金として管理人ひろゆき(当時、現在は元管理人)に400万円の支払いを求める判決がくだされています(2005年最高裁も支持)。

というわけで、今回の捜査で、掲示板の書き込みを削除しないことに対する責任は、名誉毀損だけでなく、違法行為の幇助にも適用されることになりました。これは、2ちゃんねるだけではなく、他のネット・サービスにも影響を与えることは十分考えられます。

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2012.03.06

▽頑張れ! 清盛

三田誠広『清盛』(集英社)

▼「平清盛」またダウンで2度目の13%台
http://www.daily.co.jp/newsflash/2012/03/05/0004861032.shtml
《4日に放送されたNHK大河ドラマ「平清盛」(第9回)の視聴率が、関東地区で前回より1・6ポイント減の13・4%だったことが5日、ビデオリサーチの調べで分かった。
 昨年放送された「江~姫たちの戦国~」では、視聴率13%台は8月14日放送分の1回(13・1%)だけで、これがワーストだった。「平清盛」では13%台は2月12日に続き早くも2度目。》

大河ドラマ「平清盛」は見たことないのですが、視聴率で苦戦中だそうです。画面がもやっとしている、清盛の顔や衣装が汚すぎるなど、いろいろと問題点は指摘されているようですが、そもそもこの時期の歴史は複雑でわかりにくいことにも原因があるのかもしれません。

三田誠広のこの小説は、大河ドラマの原作ではないのですが、平安末期の政治の変遷をコンパクトにまとめた入門書としてはわかりやすいですね。

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2012.03.05

▽「片づく家」のつくり方

『近藤典子が考えた「片づく家」のつくり方』(1週間MOOK)

《家の中で生かされていない空間があるということ。使わないものをしまいっぱなしにして、もはやそこに何が入っているかわからないブラックホール状態の物入れ。使わないものに占領された結果、「家が狭くて……」ということになります。
 では、どうしてそのようなスペースが生まれてくるのかといえば、出し入れしづらかったり、使いたい場所から離れていたり……。そのため
一度出したらそれっきり。結局、収納スペースには、いつも使われないものだけが収納され、いつも使うものはしまう場所のない“家なき子”になってしまうのです。》(p.8)

というわけで、アメニティアドバイザーの近藤典子が、「ものが片づく家」はどのような家なのかを提案しています。ちょっと高級すぎる家のような気もしますが、さまざまな間取りの家が紹介されていて、なかなか面白い。

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2012.03.04

▽『代行返上』

幸田真音『代行返上』(小学館)

『日本国債』などの経済小説で知られる幸田真音が、2003年に発表したのが、この『代行返上』(単行本は2004年発売)。

テーマは、そのものずばり年金の代行返上で、2002年4月の法改正以来の出来事をリアルタイムで追う、というスタイルのノンフィクションに近い小説に仕上がっている。

ただし、著者にも誤算はあったようで、あとがきにおいて次のように述べている。

《書き進めるうちに、市場はまったく予想外の展開を見せた。
 二〇〇三年四月二十八日に最低価格七千六〇三円七六銭をつけた日経平均株価が、十月二十一日には一万一二三八円六三銭をつけるまでに回復した。そして、株価の下落局面では、あれほど心配され、悪者扱いにもされた代行返上が、もはやなにごともなかったかのように、忘れられつつある。》(p.436)

しかし、著者は続けて、「だが、本当の問題はこれからが本番だ」(同)と2004年の時点で警鐘をならしていたが、いままさに年金問題が火を吹きつつある。

[参考]▽年金倒産――企業を脅かす「もう一つの年金問題」
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/01/post-d7ee.html

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2012.03.03

▽グッドモーニング、ゴジラ

樋口尚文『グッドモーニング、ゴジラ 監督本多猪四郎と撮影所の時代 』(国書刊行会)

《ゴジラと水爆を関係づける設定にしても、それはタイムリーな題材でゴジラを登場させるほんのきっかけであって、もとよりテーマをふりかざして反核の説教をしようなどとは少しも思わなかったと本多自身が筆者に語っている。》(p.188)

本書は、ゴジラの監督として知られる本多猪四郎(1993年没)の映画人としてのキャリアを概観するもので、1992年に刊行されたものを、書き換えなしに復刻したものです。

復刻版初版第1刷の発行日は「2011年6月15日」なのですが、日本人にとってゴジラのイメージとは、崩壊する建物や放射能などに深く結びついていることが、改めて思い起こされます。

[目次]グッドモーニング、ゴジラ
第一部 撮影所の時代
 『ジゴマ』の年に生まれて
 森岩雄ともうひとつの「金曜会」
 P・C・L入社と青春の蹉跌
 P・C・Lから東宝映画へ
 山本嘉次郎の「作家」性
 成瀬巳喜男の静かな抵抗
 山中貞雄と『人情紙風船』余話
 滝沢英輔と渡辺邦男のこだわり
 黒澤明、谷口千吉と助監督群像
 プロデューサー・システムと「東宝カラー」
 戦場で見た『馬』
 映画を忘れた争議の嵐

第二部 監督 本多猪四郎
 映画芸術協会と『野良犬』のころ
 デビュー作と『羅生門』
 プロデューサー・システムの再建
 円谷英二との出会い
 『ゴジラ』前夜の模索
 『ゴジラ』の光と影
 量産時代と幻の企画
 特撮との蜜月が終わる
 斜陽期の「ヒットメーカー」として
 廃墟にて
  復刊によせて──二十年後の長いあとがき
  本多猪四郎フィルモグラフィー

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2012.03.02

▽流離譚――幕末維新を駆け抜けた奥州の安岡家

安岡章太郎『流離譚〈上〉』(新潮文庫)

安岡章太郎『流離譚〈下〉』(新潮文庫)

《そして私は咄嗟の間に憶い出した。この嘉助というのは土佐藩の参政吉田東洋を斬って天誅組に加わり、掴まって京都で打ち首になった人だが、その兄の覚之助はやはり勤王党に入って、戊辰の役の時は板垣退助の下で小軍監というのをつとめ、会津で流れ弾に当たって死んだ。》(p.11)

作家の安岡章太郎は、土佐(高知県)出身ですが、東北弁を話す親戚が一軒だけあったそうです。その家の始祖となった兄弟は、明治維新にさまざまなかたちで関わっていました。

本書は、そんな「奥州の安岡家」の記録であり、幕末維新期の「天誅組の変」や「戊辰戦争」の詳細な記録としても読めます。

来年のNHK大河ドラマは、会津が舞台になるそうですが、本作が採用されれば良かったのに、とも思います。

まあ、2010年に『龍馬伝』をやったばかりで、そんなに幕末維新期ばかりをやるわけにはいかないのはわかりますが……。

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2012.03.01

▽さらば松下――『復讐する神話』

立石泰則『復讐する神話 松下幸之助の昭和史』(文春文庫)

2月28日に、かつての松下電器、現在のパナソニックに二つの大きなニュースがありました。

▼「山下跳び」松下電器元社長・山下俊彦さん死去
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120229-OYT1T01122.htm
《77年2月、創業者で当時相談役の松下幸之助氏に指名され、57歳で26人いた取締役のうち下から2番目の「ヒラ取締役」から社長に起用された。》

▼パナソニック、55歳津賀専務が社長昇格へ
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20120229-OYT8T00316.htm
《パナソニックは28日、大坪文雄社長(66)が代表権のある会長となり、後任に津賀一宏専務(55)を昇格させる人事を発表した。
 中村邦夫会長(72)は相談役に退く。》

松下電器(パナソニック)といえば、良くも悪くも日本企業の代表のような存在でした。

1988年に発表された本書『復讐する神話』(文庫版は1992年)の第1章「山下俊彦社長就任劇の謎」では、下から二番目の平の取締役から社長に抜擢された「山下跳び」の舞台裏が描かれています。

そして、第3章「コンピュータ撤退」では、1964年に松下幸之助によってなされたコンピュータ事業からの撤退に疑問が投げかけられています。

当時の日本電気(現NEC)の小林宏治副社長(後に社長に就任)は、「松下さんともあろう人が、この有力な未来部門に見切りをつけるとは、いかにも残念。分からない。コンピュータは今でこそソロバンが合わないが、しかし、これは将来必ず、家庭電器の分野にも不可欠なものになる。松下さんは一体、何を考えていなさるんだろうか」(p.78)と語っている。

まあ、その後のNECの盛衰を見ていると、撤退してもしなくても結果は同じだったと言えなくもないですが(笑)。

ところで、中村邦夫会長の退任は、無謀ともいえるプラズマ・テレビへの投資失敗に対する引責とみられていますが、では、いまのパナソニックには、いったい何が「有力な未来部門」として残されてるのでしょうか? 

実は、ソニーよりももっと危機的な状態に置かれているのではないか? と思います。

[参考]▽ストリンガー戦記――『さよなら! 僕らのソニー』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/post-defe.html

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