2012.03.27

▽無料ビジネスの時代

吉本佳生『無料ビジネスの時代: 消費不況に立ち向かう価格戦略』(ちくま新書)

本書は、無料ビジネス、いわゆる「フリーミアム」のビジネスについて、さまざまな分野で成功している事例を集めて分類したり、競合関係にある他のビジネス・モデルとの比較も行われており、入門書としてはきわめてよくできたものである。

本書で取り上げられている無料ビジネスは、無料コーヒー・サービス、テーマ・パークの無料アトラクション、携帯電話の無料ゲームなどである。

本書が秀逸なところは、今ひとつ盛り上がっていない分野も取り上げている点であり、それは何かというと、「出版」である。電子書籍では、クリス・アンダーセンの「FREE」が紙の本の出版前に電子版の無料公開を行い話題を集めました。しかし、話題になる本自体少なく電子書籍はあまり盛り上がっていません。

著者は、電子書籍の無料ビジネスがあまりうまくいかない理由として、次のように明快に述べています。

《日本の出版ビジネスは、すでに大規模な無料ビジネスをおこなっている。全国にある書店そのものが、まさに無料ビジネスだからです。》(p.219)

そしてまた著者は、無料で本を貸し出す図書館についても言及しています。もし仮に図書館でどのような本が人気があるか、というデータがTUTAYAのように活用できたら、それは出版業界にとって大きな武器になるのではないか、と。もちろん、個人情報の保護という法律の壁がありますが、しかし、無料ビジネスをテコにすれば、出版業界にも生き残りのみちがありそうです。

[目次]
第1章 無料ビジネスとは?―2タイプのコーヒー無料から考える
第2章 共同購入型クーポンvs.無料ビジネス―生き残るのは?
第3章 TDLとUSJのアトラクション無料―入場料金値上げとの関係
第4章 予算制約vs.時間制約―消費者のどこをまず狙うか?
第5章 ケータイと無料ビジネス―本質は個人向けファイナンス
第6章 消費不況と無料―無料ビジネスが日本経済を救う?
第7章 電子書籍と無料ビジネス―期待はずれに終わりやすい理由


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