2012.03.18

▽知的財産権侵害を防ぐのが狙い――『TPP 知財戦争の始まり』

渡辺惣樹『TPP 知財戦争の始まり』(草思社)

TPPにおけるアメリカの真の狙いは何か? について解き明かしたのが本書『TPP 知財戦争の始まり』である。

いま、オバマ大統領が米国民から期待されていることは、雇用を創出することと、アメリカの将来を託す産業を育成すること、の二つである。そして、この二つの目的を達成するために、オバマ大統領がTPPにおいて狙っていることは、巷間いわれているような、農業を含む自由貿易体制の構築ではない、と著者は指摘する。

現在のアメリカの稼ぎ頭は、サービス部門であり、それは金融サービスによる収入と、特許料や著作権料などの知的財産権からの収入である。

そして、TPPには、ブルネイとベトナムという二つの小国が参加しているが、実は、この二国は、知的財産権の侵害においては大国であるという。つまり、TPPを通じて、この二国の著作権侵害をコントロールできるメカニズムを構築するのが、TPPの真の狙いである、と著者は指摘する。

さらに、このメカニズムがうまく機能するようになったら、その次のターゲットは、知的財産権侵害の超大国である中国になる、というのが著者の見立てである。

ある試算によると、中国における、著作権の侵害、特許の悪用、商標の悪用などによって、アメリカは482億ドル(約四兆円)の損害を被っている。この損失を取り返すことができれば、それはアメリカにとっては大きな成長分野になるのである。

そして、このメカニズムにうまく乗ることができるのならば、日本にとっても大きなメリットがあるようだ。

[目次]
1章 影のプランナーを探せ
2章 コメの自由化は“目くらまし”
3章 知的財産権の輸出こそが本命
4章 ルール無視の大国、中国
5章 アメリカの宣戦布告
6章 アメリカの生存をかけた通商戦争
7章 アメリカ型法システムの実際
8章 企業vs.国家の紛争解決システム(ISD条項)の構築
9章 中国の横暴を抑え込むルールづくり
10章 TPP参加で日本の将来はどうなる


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