2012.03.19

▽震災復興 欺瞞の構図

原田泰『震災復興 欺瞞の構図』(新潮新書)

《私は、東日本大震災で毀損された物的資産は、公的資産と民間資産を合わせて、せいぜい6兆円なのだから、山を削って高台を造ったり、割高な自然エネルギーを使うエコタウンを造ったりなどしなければ、復興増税は必要ないと、非力ながら、一人でキャンペーンを行ってきた。キャンペーンの最中に、私の6兆円しか壊れていないという指摘に賛同して下さる方は多かったが、反論される方はいなかった。》(p.8)

著者によると、政府が震災によって毀損された物的資産を16.9兆円と過大に見積もったのは、これに便乗して増税をしたい、という震災復興とは別の魂胆があった、と指摘する。

実際、野田政権は、消費税増税路線を突き進んでおり、この指摘はうなずける。

奥尻や阪神大震災などの、過去の震災復興の再検証や、なぜ政府は税金を使いたがるのか? など、震災復興の陰に潜む欺瞞を露わにしている。

[目次]
序論・人を助ける復興策とは?

第1章 大増税の口実に使われる大震災
物的資産毀損額16.9兆円説の誤り/結局、いくら壊れたのか/日本人一人当たりの物的資産は966万円/考慮すべき減価償却/自治体の推計から想定される被害額/負債金額からの推計/結語
付論 政府の数字に気をつけろ――物的資産の毀損額 内閣府の推計16.9兆円の誤り/日本政策投資銀行の被害推計の見方/新品で補償するのは不公平/過大な被害推計/民間企業資本ストック額の謎

第2章 過去の震災復旧対策の浪費ぶり
奥尻島では島民一人当たり1620万円使った/阪神淡路大震災は被災者一人当たり4000万円/ゴーストタウンの建設に使われた復興費/浪費だった神戸市のプロジェクト/中越地震はリーズナブルな復興/仮設住宅という高コスト支援策/コスト感覚が欠如した復興計画/戦争中もコストカットを主張したトルーマン/結語

第3章 政府や県が無駄遣いに積極的な理由
国は何に使おうとしているのか/羅列された無関係な対策/2012年度予算案での復興経費/狙い撃ちされた富裕層/復興庁と復興特区/自治体の望む「復興」/費用はどうなるのか/高台移転は高コスト/復興予算は関係ないことに使われる/復興を遅らすだけの議論/農業と漁業の相違点/漁業権とアメリカ占領軍の気遣い/愚かな「創造的復興」/インフラ建設に時間がかかる理由/工事の遅延が最大の目的/意図的に遅らされる震災復興/結語

第4章 最も安上がりで効果的な復興策
組織やビジョンは必要か/東日本復興のツボ/復興と個人財産の復旧/国民一人一人の力を信じよ/進む人口減少/安上がりな復興計画/被害が大きかったのは新興市街地/個人財産復活とモラルハザード/個人への公的援助は問題か/復興資金の調達法/ゴーストタウン効果と円高効果/復興増税長期化の奇妙さ/これまでの赤字はどうする/税と社会保障の一体改革の議論はずれている/デフレ脱却に役立つか/結語

第5章 過去の大震災に学ぶ
震災復興についての6つの論点/デフレが続いた関東大震災後/デフレにしながら個別企業を助けていた/デフレの害悪/成功したインフラ再建/帝都復興院/石橋湛山の帝都復興院論/地盤低下が収まらなかった兵庫県/天変地異の後はデフレが起こる/阪神淡路大震災の被害と復興政策/円高への対処法/結語

第6章 原発事故の教訓
原発依存のルーツ/国家戦略としての原発/植民地との類似性/取り込まれる規制者/情報は規制される側にある/ウソをついているうちに真実が分からなくなってくる/安くなかった原発/効率重視が理由か/本当の発電コスト/原発推進国ほど安いのか/原発を使うほど安くなるか/電力料金低下の理由/CO2問題への対応/利己主義という気概/他人の願望と自らの犠牲/牛肉よりも稲藁が安い/企業と政府の責任/結語

終わりに


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