2012.04.18

▽『仁義なき日本沈没』――東宝VS.東映の戦後サバイバル

春日太一『仁義なき日本沈没: 東宝VS.東映の戦後サバイバル』(新潮新書)

1973年1月に公開された映画『仁義なき戦い』。そして、同じ年の12月に公開された『日本沈没』。

この二本のヒット作は、それぞれ東映と東宝という二つの映画会社に大きな転機をもたらした。

『仁義なき戦い』以降の東映は、撮影所を維持するためにテレビの時代劇制作を請け負うようになる。一方の東宝は、それまでの二本立て興行に、自社制作の映画を上映するブロック・ブッキングから、外部プロダクションを起用した大作一本立てのフリー・ブッキングへとシフトした。

本書は、終戦直後の東宝争議と、東映の前身である東横映画の苦闘から始まり、1973年を画期としつつ、日本の映画産業が斜陽の時期をいかに対応していったかを綴った記録である。

[目次]
はじめに

第一章 二つの戦後 東宝争議と東横映画
I 東宝争議
終戦/自由主義の牙城/東宝争議のはじまり/理想郷の建設/クーデター/労使対立/第三次東宝争議/兵糧攻め/米軍vs.撮影所

II 東映の誕生
東横映画/大日本映画党/独立への道/撮影所から夜逃げ/東映の誕生/大川の「改革」/東映はらわんと/東映と東宝の提携、そして決裂

第二章 時代劇戦争
日本映画の活況/二本立て興行の確立/『笛吹童子』の大ヒット/徹底した娯楽主義/美しきスターたち/東宝の製作再開/『七人の侍』/黒澤プロの誕生/東映時代劇の否定/リアルな殺陣/驕る東映/『椿三十郎』の一騎打ち/黒澤ショック

第三章 岡田茂と藤本真澄の斜陽期サバイバル
鬼の岡田/岡田茂の改革/任侠映画のスタート/藤本真澄の善良性/エロと暴力/岡田の若手抜擢/若手を拒む藤本/時代を見失う藤本/組合の復活/大作の復活/三船プロ陥落/止まらない不振/孤塁を守る「八・一五」シリーズ『軍閥』/頭は空っぽだ!/藤本奪権運動/力尽きる八・一五『沖縄決戦』/東映のお家騒動/岡田茂、社長になる/砧の問題/藤本真澄、社長になる/行きづまる任侠映画/藤純子の引退/お蔵と不入り/勝プロの快進撃/八・一五の終焉/黄昏のゴジラ

第四章 戦後日本の総決算 『仁義なき戦い』から『日本沈没』へ
『仁義なき戦い』のスタート/脚本のバイタリティ/深作欣二、京都へ/衝撃の深作演出/『日本沈没』のスタート/最高のチーム/リアルを作る/木村大作の台頭/戦後社会の生きにくさ/現代日本への警鐘/虚しい死

最終章 幸福な関係の終焉
二本立て興行の終わり/フリーブッキングの時代へ/東宝映画の合理化/プロダクションの苦悩/東映の手詰まり/映画村のスタート/テレビへの進出/藤本真澄の最期/「昔はよかった」

おわりに

主な参考文献


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