2012.04.02

▽ワンマン経営者の孤独――『ジブリの哲学』より

鈴木敏夫『ジブリの哲学――変わるものと変わらないもの』(岩波書店)

本書は、スタジオ・ジブリのプロデューサーである鈴木敏夫が、さまざまな媒体に書いたコラムをまとめたもの。正直なところ、一冊の本として読むには、ややまとまりにかける。

ただ、ジブリ作品のパートナーとして、製作にかかわった日本テレビの氏家斉一郞社長(2011年死去)に関する部分は、ワンマン経営者の孤独を感じさせられた。

民俗学者の網野善彦は、氏家と中学時代の同級生だったという。「もののけ姫」の制作を通じて網野と鈴木は知己を得たが、氏家はそのつてを頼って、網野を食事に誘おうとした。しかし、癌を患っていた網野に、「時間が無い」と断られたという。日本を代表するテレビ局の社長にまでのぼりつめながらも、著名な学者にあうことすら叶わなかった――。

徳間書店の徳間康快社長は、ジブリ作品の出資者として、後世に残る映画を生み出してきた。しかし、氏家は、「おれの人生、振り返ると何もやってない」(p.166)と言う。

「読売グループのあらゆるものはすべて正力(松太郎)さんがはじめたもので、それを後輩たちが守ってきた。おれだって、そのひとつをまかされているに過ぎないんだ」(p.166)

高畑勲監督の次回作『かぐや姫』の製作を赤字覚悟で引き受けるが、氏家は、その夢も果たせずに他界してしまった――。


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