2012.04.11

▽木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか?

増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)

本書は、日本のプロレス界に君臨した力道山と、柔道出身のレスラー木村政彦のリアル・ファイトの真相を探るノンフィクション。今年の大宅壮一ノンフィクション賞受賞作でもある。

二段組み700ページにものぼる大著だが、そもそも、主題となった試合について知らない人も多いだろうから、プロローグ、第一章、そして、第二十七章以降を読んでしまった方が話は早い。

そして、この試合はYoutubeでも見ることができるので、本書を読みながら、試合内容を確認できる。

試合の途中から、力道山はリアル・ファイトに転じたことが明らかにわかるが、なぜ、そんな事態に至ったのか? という疑問を軸に、柔道家として木村の人生、日本柔道界の草創期の歴史、そして、力道山時代のプロレスが描かれている。

タイトルの「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」は、試合後しばらくの間、力道山を殺そうと刃物を持って、力道山の跡をつけ回そうとしていた木村が、なぜ思いとどまったか、という問いで本書のもう一つの主題である。

木村の死後に日本でも一世を風靡したグレイシー柔術に、木村は大きな遺産を残していたことも記されている。木村の得意技だった「腕緘み」は、グレイシー柔術では、キムラロック、あるいは、単にキムラと呼ばれている。

《私はあえて断言する。
 あのとき、もし木村政彦がはじめから真剣勝負のつもりでリングに上がっていれば、間違いなく力道山に勝っていたと。決め技は、もちろん得意のキムラロックである。》(p.29)


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