2012.04.16

▽階級都市

橋本健二『階級都市』(ちくま新書)

「階級」というと、一時期は。古めかしい言葉になってしまったが、「格差社会」という言葉の普及とともに、また注目を集める言葉になってしまった。

一億層中流の幻想が崩れた後に浮かんできた格差社会の行き着く先は階級社会ではないか? そして、それは、東京という街のあり方をかえるのではないか? というのが本書の考察の中心に据えられている。

《グローバル・シティが形成される過程で、これらの地域は変容を迫られる。製造業の衰退により、都心近くの工場は廃業したり、移転したりする。失業や家賃の高騰により、住民は転居を余儀なくされる。そうでなくても、再開発を目的としたさまざまな圧力によって追い出しをかけられる。跡地には高所得者を対象とした住宅や商業施設が建てられ、ここにグローバル・シティのエリート層が移り住む。》(p.38)

これらの地域とは、大都市の中心から離れた自営業者や低所得者がすむ「下町」と呼ばれる地域のことであり、ここにグローバル化した経済のエリートが再開発の名の下に移り住んでくることである。こうした下町内部に格差が生じることを「ジェントリフィケーション」と呼ぶ。

著者はジェントリフィケーション自体が「悪いこと」であるという前提で論を進めているようだが、はたしてそうだろうか。ジェントリフィケーションが、上り坂の経済で起きているならば、それは再開発であり土地の有効活用と言えるのではないか。

本質的な問題は、日本経済が坂を下っていることではないだろうか。


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