2012.05.22

▽裸はいつから恥ずかしくなったか――日本人の羞恥心

中野明『裸はいつから恥ずかしくなったか―日本人の羞恥心』(新潮選書)

♪シューチシーン、シューチシーン……

というわけで、本書のテーマは、日本人の裸に対する羞恥心がいつ生まれたのか?

幕末期の日本を訪れた西洋人は、日本人の趣致心のなさに驚き、多くの記録を残しています。

当時の公衆浴場は混浴が当たり前、男女ともに裸のまま湯屋から帰ってくる、屋外で行水する人も多かったそうです。

「日本人には羞恥心はない」と。

こうした西洋人からの批判に耐えられず、明治政府は、混浴の禁止や路上での裸体の禁止などを打ち出していきます。明治二年には混浴禁止令が出されたそうですから、明治政府は、西洋人からの批判をかなり気にしていたと見ることができます。

そして、裸が禁止されるにつれて、その副作用として、裸に対する羞恥心が生まれてくるのですが、しかし文化的な習慣はなかなかかえられるものではなく、それはだいぶ時間がたってからのことのようです。

たとえば女性が下着のパンツ(ズロース)を履くように奨励されるようになったのは、大正12年(1923年)に発生した関東大震災の際に、和服の女性が逃げる時に不便な上、恥ずかしい格好をしなければならなかったことから、洋装化が求められたことがきっかけだそうです。

この後も、有名な白木屋事件などもあったのですが、実際に下着を着用する洋装が定着したのは昭和十年代に入ってからだったそうです。

[目次]
序章 下田公衆浴場
第1章 この国に羞恥心はないのか!?―ペリー一行らが見た混浴ニッポン
第2章 混浴は日本全国で行われていたのか―幕末維新の入浴事情
第3章 日本人にとってのはだか―現代とは異なるはだかへの接し方
第4章 弾圧されるはだか―西洋文明の複眼による裸体観の変容
第5章 複雑化する裸体観―隠すべき裸体と隠さなくてもよい裸体
第6章 五重に隠されるはだか―隠され続ける先にあるもの
終章 裸体隠蔽の限界

[参考]▽『逝きし世の面影』――外国人が見た幕末のニッポン
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/01/post-e17d.html


|

書評2012年」カテゴリの記事