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2012年6月

2012.06.29

▽大人気のフェルメール

朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』(集英社新書ヴィジュアル版)

「真珠の耳飾りの少女」公開 100万人集客するか : J-CASTニュース

フェルメールの名作「真珠の耳飾りの少女」が公開されることで話題になっている「マウリッツハイス美術館展」の開会式が2012年6月29日、東京・上野の東京都美術館で開かれた。午前中のプレスプレビューには400人以上のマスコミ関係者が集まり、前評判通りの盛り上がりを見せた。

『フェルメール全点踏破の旅』の旅は、美術ジャーナリストの著者が、世界に37枚あるとされるフェルメールの絵のうち33枚を観賞した記録である。

フェルメールの絵についての解説とともに、それを自分の目で見たい願う著者の思いが伝わってきて面白い。

世界的に人気の高いフェルメールですが、裏の社会でもなかなか人気が高いようです。同じ著者のデビュー作が、『盗まれたフェルメール』。盗難後の絵の行方も気になりますね。

朽木ゆり子『盗まれたフェルメール』(新潮選書)

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2012.06.26

▽幸せになる百通りの方法

荻原浩『幸せになる百通りの方法』(文藝春秋)

荻原浩の短編集。

節電を強いられた生活を描く「原発がともす灯の下で」
オレオレ詐欺の「俺だよ、俺。」
ブログと出版をめぐるあれこれを描いた「今日もみんなつながっている。」
お見合いパーティーの「出逢いのジャングル」
リストラを言い出せない男の話「ベンチマン」
歴女に振り回される「歴史がいっぱい」
自己啓発を描いた表題作の「幸せになる百通りの方法」

どれも現実を切り取ろうと試みているものの、そもそも、その現実自体がふわふわとしたとらえどころのないものであるために、ふわふわとした不思議なあじわいを醸し出した短編集になっています。

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2012.06.24

▽『テイクダウン』――若き天才日本人学者vs超大物ハッカー

下村努xジョン・マーコフ高島俊男『テイクダウン―若き天才日本人学者vs超大物ハッカー〈上〉』(近藤純夫訳、徳間書店)

下村努xジョン・マーコフ高島俊男『テイクダウン―若き天才日本人学者vs超大物ハッカー〈下〉』(近藤純夫訳、徳間書店)

いわゆる「ハッカーもの」のノンフィクションとしては、古典の部類に入る傑作。

1995年のこと、ケビン・ミトニックという伝説の「ハッカー」――厳密に言えば「クラッカー」――が、コンピューター・セキュリティの専門家のコンピューターに侵入を繰り返した。

この専門家は、下村努という在米日本人で、2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩の息子である。

1995年というと、Windows95が発売され、ようやく一般の人がパソコンに触れるようになった頃で、本書で描かれている世界は、やや古めの「コンピューター・ネットワークの世界」ですが、それでも、見えない敵を追い詰めていく、手に汗握るスリリングな展開が楽しめます。

本書は、ケビン・ミトニックを追い詰めていく下村の視点で描かれていますが、ミトニックの視点で描かれた映画『ザ・ハッカー』も公開されています。

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2012.06.23

▽小池和男『高品質日本の起源』――発言する職場はこうして生まれた

小池和男『高品質日本の起源―発言する職場はこうして生まれた』(日本経済新聞出版社)

《ふつう一国の国際競争力はすぐれたリーダーやエリート、また革新的な研究開発による、と考えられている。もちろんそれに誤りははない。だが、それに勝るともおとらぬ他の枢要な要素が、職場の中堅層の働きではないだろうか。どれほどすぐれた開発・設計でもそれを故障のすくない、高い品質の製品に仕上げ、また周到なサービスとして提供するのは、職場の中堅層である。》(p.i)

著者のこの意見自体に異論があるわけではない。しかし、本書の論証は戦前の日本の企業や労働組合の実態に費やされている。

最近の日本の家電メーカーの失速ぶりを見るにつけ、やはり中堅層よりも、「すぐれたリーダーやエリート、また革新的な研究開発」が、重要ではないか、と思わざるをえない。

[目次]
はしがき
 序 章 職場からの発言は競争力の根幹

第I部 品質への職場の発言
 第1章 なぜ品質に注目するか
 第2章 綿紡績業研究にみる興亡の歴史
 第3章 ふたつの統計観察
 第4章 職場の問題と変化
 第5章 鐘紡は例外か――内部文章から読み解く

第II部 定期昇給制の出現――生産労働者に
 第6章 知られざる定期昇給の重要性
 第7章 戦前日本の大企業にみる定期昇給

第III部 知られざる貢献――戦前昭和期の労働組合
 第8章 過小評価されつづけてきた戦前の労働組合
 第9章 つよい組合とはなにか――団体交渉と解雇
 第10章 生産の工夫の軌跡を追う
 第11章 目配りのきいた共済活動
 第12章 争議のメカニズム解剖
 第13章 戦争と労働組合
 終 章 国際競争力の源泉


文献

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▽福島原発の真実――最高幹部の独白

今西憲之+週刊朝日取材班『福島原発の真実 最高幹部の独白』(朝日新聞出版)

《2号機の内視鏡の映像を見たゼネコンの人は、「錆などの状況から、燃料棒を取り出す10年後まで建屋は大丈夫なのか疑問だ」と言ってました。》(p.200)

「フクイチ」こと、福島第一原子力発電所――。

そのフクイチの「最高幹部」に、週刊朝日とジャーナリストの今西憲之が迫ったのが本書である。もちろん「最高幹部」の素性はまったく明らかにされていない。

しかし、今西が「最高幹部」の手引きでフクイチに潜入して撮った写真は、週刊朝日に掲載され、原発事故のすさまじさを印象づけた。それは、東電が大手メディア向けに組んだ撮影ツアーで撮らされた写真とは、まったく違うものであった。

本書には、東電が隠そうとした「真実」を伝えようとする「最高幹部」の言葉であふれている――。

《本店の記者会見を見ていると、よくこんな尊大な態度ができるものだと思うこともあります。同じ東京電力の一員として、情けなく、腹立たしく、悲しい。》(p.206)

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2012.06.21

▽中国の大盗賊・完全版

高島俊男『中国の大盗賊・完全版』(講談社現代新書)

著者によると、中国における王朝の交代には、さまざまなパターンがあるという。

まず、前王朝から譲りを受けて新王朝が建てられることを、「禅譲」という(漢の献帝に譲られた魏など)。また、暴力によって奪われることを、「放伐」といい、王朝の有力な武将によるもの(唐や宋)、異民族によるもの(元や清)、そして、盗賊によるもの、に区別される。

本書によると、「盗賊」の定義は、

《 一、官以外の、
 二、武装した、
 三、実力で要求を通そうとする、
 四、集団》(p.21)

という。そして、中国の王朝の多くは、この盗賊によって、奪われたものだという。

つまり、本書は、漢の劉邦、明の朱元璋、明を倒し「順」を建てたものの長続きしなかった李自成、清代に「太平天国」を建てた洪秀全、そして、中華人民共和国を建国した毛沢東の五人の「大盗賊」を描いたものである。

「完全版」とは、1989年に刊行された初版では、縮小されていた毛沢東の項の分量を、当初予定に復元したという意味らしい。

なるほど、こういう見方もできるのか、と中国に対する新しい視点も与えてくれます。

[目次]
序章 「盗賊」とはどういうものか
第1章 元祖盗賊皇帝―陳勝・劉邦
第2章 玉座に登った乞食坊主―朱元璋
第3章 人気は抜群われらの闖王―李自成
第4章 十字架かついだ落第書生―洪秀全
第5章 これぞキワメツケ最後の盗賊皇帝―毛沢東

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2012.06.20

▽麻生幾『極秘捜査』――政府・警察・自衛隊の「対オウム事件ファイル」

麻生幾『極秘捜査―政府・警察・自衛隊の「対オウム事件ファイル」』(文春文庫)

本書は、スパイ小説の第一人者である麻生幾が、1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件と、それに対する警察側の対応を描いたノンフィクション。

当時のことを知っている者としては、特に、驚くような新事実があるわけでもなく、また、ディティールが細かすぎるきらいはあるものの、それでもあの時の騒然とした雰囲気はまざまざと思い起こされます。

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2012.06.19

▽宇野常寛『ゼロ年代の想像力』

宇野常寛『ゼロ年代の想像力』(ハヤカワ文庫)

気鋭の評論家、宇野常寛が2008年に上梓した、日本のサブ・カルチャー総まくり本の文庫版。

1995年に起きた、阪神大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件から、新世紀エヴァンゲリオンを経て、池袋ウエストゲートパークや平成仮面ライダーまでのほぼ十年の文化状況を俯瞰する。

サブカルチャーのまとめとしてはよくできていると思う。しかし、平成ライダー各作品の人気の高低を、その作品のメッセージのみと結びつけるのは、やや牽強付会の嫌いがある。また、考察において、好不況といった経済的な側面が、あまり意識されていないのも気にかかる。

[目次]
第 一 章 問題設定――九〇年代からゼロ年代へ/「失われた十年」の向こう側
第 二 章 データベースの生む排除型社会――「動物化」の時代とコミュニケーションの回復可能性
第 三 章 「引きこもり/心理主義」の九〇年代――喪失と絶望の想像力
第 四 章 「九五年の思想」をめぐって――否定神学的モラルのあとさき
第 五 章 戦わなければ、生き残れない――サヴァイヴ系の系譜
第 六 章 私たちは今、どこにいるのか――決断主義のゼロ年代の現実認知
第 七 章 宮藤官九郎はなぜ「地名」にこだわるのか――(郊外型)中間共同体の再構成
第 八 章 ふたつの『野ブタ。』のあいだで――木皿泉と動員ゲームの離脱可能性
第 九 章 解体者としてのよしながふみ――二十四年組から遠く離れて
第 十 章 肥大する母性のディストピア――空転するマチズモと高橋留美子の「重力」
第十一章 「成熟」をめぐって――新教養主義の可能性と限界
第十二章 仮面ライダーにとって「変身」とは何か――「正義」と「成熟」の問題系
第十三章 昭和ノスタルジアとレイプ・ファンタジー――物語への態度をめぐって
第十四章 「青春」はどこに存在するか――「ブルーハーツ」から「パーランマウム」へ
第十五章 脱「キャラクター」論――ケータイ小説と「物語」の逆襲
第十六章 時代を祝福/葬送するために――「決断主義のゼロ年代」を超えて
特別ロング・インタビュー ゼロ年代の想像力、その後
固有名索引

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▽佐木隆三『わたしが出会った殺人者たち』

佐木隆三『わたしが出会った殺人者たち』(新潮社)

すごいタイトルの本ですが……。

これはジャーナリストの佐木隆三が、取材を通して、まさに「出会った殺人者たち」十八人についての印象記をまとめたものです。

いま話題のオウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫については、四女の本『私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか』に記された、三人の娘たちとの接見時に起きた衝撃の事件が紹介されています。

《「父はスエットパンツの中から自分の性器を取り出し、マスターベーションを始めたのです」》(p.173)

この四女や著者の印象では、麻原死刑囚は、「偽痴呆症」の状態とのことです。

[目次]
まえがき
第一章 『復讐するは我にあり』の西口彰
第二章 『曠野へ 死刑囚の手記から』の川辺敏幸
第三章 『千葉大女医殺人事件』の藤田正
第四章 『悪女の涙 逃亡十五年』の福田和子
第五章 『連続幼女誘拐殺人事件』の宮崎勤
第六章 『別府三億円保険金殺人事件』の荒木虎美
第七章 『身分帳』の山川一こと田村明義
第八章 『一〇八号――連続射殺事件』の永山則夫
第九章 『和歌山毒カレー事件』の林真須美
第十章 『オウム真理教事件』の麻原彰晃こと松本智津夫
第十一章 『トビ職仲間と五人殺し』の木村繁治
第十二章 『黒い満月の前夜に』の尊・卑属
第十三章 『中洲美人ママ連続夫殺し』の高橋裕子
第十四章 『奈良女児誘拐殺人事件』の小林薫
第十五章 『深川通り魔殺人事件』の川俣軍司
第十六章 『大阪池田小大量殺人事件』の宅間守
第十七章 『下関駅通り魔殺人事件』の上部康明
第十八章 『偉大なる祖国アメリカ』の安田幸行
あとがき

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2012.06.15

▽グーグル――追われる立場から追う立場へ

スティーブン・レヴィ『グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ』(仲達志、池村千秋訳、阪急コミュニケーションズ)

追われる立場から、追う立場へ――。

十年一昔とはいうものの、その十年の間にネット企業の頂点に躍り出て、さらに、後進のフェースブックを追う立場へと転落したグーグル。

そのグーグルの内部に潜り込んで、グーグルの秘密を描いたのが本書である。

グーグルといえば、検索しようとする単語に関連すると思われる単語を自動的に表示する機能があるが、これが個人のプライバシーに関わる大きな問題を引き起こしている。

《こうした不満やクレームの処理を任されたのは、2000年にグーグルに入社し、小さなマーケティング部門に所属するデニーズ・グリフィンだ。グーグルに掘り起こされた情報がどのように人々の感情を傷つけ、ときには実害を及ぼしているかに関する話を聞いて、彼女はしばしば胸が張り裂けるような思いをした。》(p.269)

一見、鉄面皮のようなグーグルだが、その向こう側には、こうした生の感情を持つ人間が存在することが伺える。

本書を読むと、グーグルのイメージが少しかわることは間違いない。

[目次]
プロローグ Googleを「検索」する
01章 グーグルが定義する世界―ある検索エンジンの半生
02章 グーグル経済学―莫大な収益を生み出す「方程式」とは
03章 邪悪になるな―グーグルはどのように企業文化を築いたのか
04章 グーグルのクラウドビジネス―全世界に存在するあらゆる文書を保存する
05章 未知の世界への挑戦―グーグルフォンとグーグルTV
06章 谷歌―中国でぶつかった道徳上のジレンマ
07章 グーグルの政治学―グーグルにとっていいことは、人々にとっていいことか
エピローグ 追われる立場から追う立場へ

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▽いまだ下山せず!

泉康子『いまだ下山せず!』(宝島SUGOI文庫)

本書は、1986年12月に、槍ヶ岳で起きた「のらくろ岳友会」のメンバーの遭難を描いたノンフィクションです。

著者は、「のらくろ岳友会」を創設したOGとして、遭難事故に関わることになります。その顛末を、当事者としての感情に流されることなく、できる限り事実や証言を積み重ねて、遭難事故の真相に迫っていった労作です。

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2012.06.10

▽バイエルの謎

安田寛『バイエルの謎: 日本文化になったピアノ教則本』(音楽之友社)

「バイエル」といえば、音楽に疎い私でも知ってる、有名なピアノの教則本です。「バイエル」という言葉は、ピアノの世界だけでなく、他の分野でも「入門書」という意味で使われる、ある種の代名詞となっています。

しかし――。

1980年代後半になると、この「バイエル」が、「日本でしか使われていない」、「本国ドイツでは忘れられた存在」、「バイエルは三流の作曲家」というバッシングにさらされます。

しかも、音楽家バイエルに関する記述はほとんど残されておらず、バイエルは実在したのか? という疑問すら浮かんできます。

そんなバイエルの、日本、ヨーロッパ、そしてアメリカにおける歴史をたどったのが本書です。ちょっとした歴史ミステリーの趣に加えて、明治以来の日本の音楽史が綴られた読み応えのある一冊です。

[目次]
プロローグ バイエル文化の謎

第一の封印

第一章 バイエルをめぐる日本人の愛憎
 バイエル不在説
 長く使われた理由
 懐かしい風景
 バッシング
 偽の伝記

第二章 バイエルを日本に持ってきたのは誰だ?
 定説
 ハイエル・メトデ貳拾冊
 エメリース弐拾冊
 メーソンに宛てた書簡
 音楽院・ピアノ・メソッド
 音楽院の便覧
 編集したのは誰か

第三章 初版はいつ出版されたのか?
 ムジカノーヴァ
 ホフマイスター音楽図書月刊目録
 初版の値段

第四章 バイエル偽名説
 万国音楽家列伝
 酷評
 写真の出現

第五章 チェルニー・バイエル同一人物説
 推薦状
 推薦は本物か
 原著で裏を取る
 したたかな広告

第二の封印

第六章 バイエル初版
 ウィーンでは人気があったバイエル
 万霊節
 ニュルンベルクのマイスタージンガー
 王室音楽御用達出版者

第七章 驚異の多作家
 ショット社
 門外不出
 ショット社出版目録
 重複した作品番号
 バイエル併用曲集

第八章 最古のバイエル
 ニューオーリンズの初版
 教会と市役所と城のある小さな都市
 マニュアル
 イェール大学

第九章 エディション研究
 初版復元
 姿を現した初版
 本物

第三の封印

第十章 静かにした手
 バイエル受容史
 異常な拡張
 模倣
 天才ピアノ教育家
 レーライン・ピアノ教則本
 音楽新報
 クララ・シューマン
 和音聴音
 いろおんぷ
 体系

第十一章 シュークリーム
 合本
 番外曲
 歴史的経緯
 お楽しみ曲
 整理
 解答

第四の封印

第十二章 改築申請書
 終焉
 宣託
 死亡証明書
 住所録
 聖ランペルティ教会
 洗礼記録
 旅は終わらない

第十三章 最後の秘密
 新しい情報
 先祖の地
 プロテスタント教会音楽
 断絶
 家族の歴史
 受け継がれるもの
 母と子と
 讃美歌集とオルガン
 教会歴

エピローグ 百四十八年後の弔辞
本文注
資料写真
あとがき

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2012.06.09

▽巨大津波は生態系をどう変えたか――生きものたちの東日本大震災

永幡嘉之『巨大津波は生態系をどう変えたか―生きものたちの東日本大震災』(ブルーバックス)

2011年3月11日に東北地方をおそった津波。

この津波によって、東北地方沿岸の生態系は大きな影響を受けた。

たとえば、天敵が消えたためにアブラムシが大量発生する。しかし、後を追うように、このアブラムシを捕食するテントウムシが大量発生する。増えすぎたテントウムシは、アブラムシを食い尽くすと、今度は、羽化途中にトンボに襲いかかる――。

しかしその後、アブラムシもテントウムシも、個体数は均衡し目立たなくなったという。

津波というインパクトによってバランスの崩れた生態系の姿を写真によって切り取った貴重な記録である。

[目次]
第1章 東北地方の生態系
第2章 変容した地形
第3章 蝕まれた水辺
第4章 蝕まれた大地
第5章 津波がもたらした異観
第6章 湿地の生きものたちのその後
第7章 砂浜の生きものたちのその後
第8章 巨大津波は生態系をどう変えたか

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2012.06.08

▽昆虫顔面図鑑[日本編]

海野和男『昆虫顔面図鑑 日本編』(実業之日本社)

昆虫の顔をドアップに撮影した昆虫顔面写真集。

何という企画でもないのですが、昆虫の顔が、イメージどおりだったり、そうではなかったり、見ていて楽しくなる写真集です。

著者による解説や補足的に掲載されている写真も、昆虫のリアルな生態を教えてくれます。

姉妹編として[海外編]もあります。

海野和男『昆虫顔面図鑑 海外編』(実業之日本社)

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2012.06.07

▽図表と地図で知るヒトラー政権下のドイツ

クリス・マクナブ『図表と地図で知る ヒトラー政権下のドイツ』(松尾恭子訳、原書房)

ヒトラー時代のドイツを、地図や図表を使って、わかりやすく解説したもの。著者のクリス・マクナブは、イギリスの軍事史などを専門とする作家である。

特に新しい事実が盛り込まれているわけではありませんが、第三章の経済の項目をみると、ヒトラーは、疲弊したドイツ経済の救世主として登場したことが改めてわかります。

もちろんそれは軍事的な拡張政策とセットになった軍需産業の伸長によるもので、いずれ破綻することはわかりきっていたはずのことなのですが。

[目次]
第1章 第三帝国の歴史
 新しい国際秩序 1918-1933年
 権力掌握 1933-1939年
 領土拡張 1939-1942年
 敗北と崩壊 1942-1944年
 終焉 1945年とその後

第2章 領土
 併合
 ポーランドの占領体制
 西ヨーロッパの占領 1940-1944年
 ソ連侵攻
 中央集権国家
 占領と搾取 1939-1945年

第3章 経済
 経済と雇用 1933-1939年
 商業と工業 1933-1945年
 兵器生産
 労働条件と食糧事情

第4章 政権と指導者
 党と国家
 組織と政策決定
 指導者としてのヒトラー

第5章 警察と司法
 警察権力
 裁判
 警察の任務

第6章 国防軍
 軍の復活 1919-1939年
 陸軍
 陸軍の戦力 1939-1945年
 海軍
 空軍
 敗北の理由と犠牲

第7章 民族政策
 迫害
 ホロコースト

第8章 社会政策
 青少年政策
 教育政策
 女性政策
 歓喜力行団

第9章 スポーツ・芸術文化・宗教
 スポーツ
 党大会
 芸術文化
 ラジオと新聞
 宗教
 古代信仰とシンボルマーク

索引

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2012.06.05

▽オウム真理教に惹かれた人々――村上春樹『雑文集』より

村上春樹『雑文集』(新潮社)

《オウム真理教に帰依した何人かの人々にインタビューしたとき、僕は彼ら全員にひとつ共通の質問をした。「あなたは思春期に小説を熱心に読みましたか?」。答えはだいたい決まっていた。ノーだ。》(p.204)

村上春樹は、地下鉄サリン事件の被害者やその遺族にインタビューした『アンダーグラウンド』と、オウム真理教の元信者たちにインタビューした『約束された場所で』の二つを発表している。

こうしたインタビューを通じて、オウム真理教の信者の多くは、小説というフィクションに対する免疫がなかったことに気がつく。フィクション馴れしていない彼らは、麻原彰晃の提示する虚構を、事実といっしょくたにして受け入れてしまったのではないか――。

と、村上春樹は分析している。

[目次]
序文・解説など
あいさつ・メッセージなど
音楽について
『アンダーグラウンド』をめぐって
翻訳すること、翻訳されること
人物について
目にしたこと、心に思ったこと
質問とその回答
短いフィクション―『夜のくもざる』アウトテイク
小説を書くということ

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2012.06.01

▽当ブログで売れた本――2012年上半期

当ブログで、2012年初からいままでに売れた本十傑を紹介します。

まあ、ランキングをつけるほどは売れていないので、あくまでも十傑ということで・・・・・・。

まずは、最近また注目を集めているのがレシピサイトの「クックパッド」。

▽日本最大のレシピサイト「クックパッド」の作り方
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/05/post-65fd.html

この「クックパッド」については、ビジネス・モデルを解説する記事もよく読まれています。

[参考]クックパッドのビジネス・モデル
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/news/2011/05/post-b35e.html

続いて、当ブログでは定番中の定番としてコンスタントに売れてるのが、「シビックプライド」。

▽シビックプライド――ヨーロッパにおけるケーススタディ
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-d65f.html

本書で取り上げられている10のケーススタディのうち6つがイギリスなのですが、エリザベス女王の即位60周年記念やロンドン五輪などによって、イギリスへの注目が高まっていることの現れかもしれません。

そして、これまた定番なのが、「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか」。

▽インテル・インサイドとアップル・アウトサイド――技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/11/post-feeb.html

相次いで報道されている日本の家電メーカー敗戦の原因を論理的に分析した不朽の名著と言ってよいでしょう。

▽『日本の地方財閥30家 知られざる経済名門』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/03/post-1c2a.html

がんばれニッポンというわけではないのでしょうが、「日本の地方財閥」を紹介した本書も売れています。

▽大鹿靖明『メルトダウン』――福島第一原発事故ドキュメントの決定版
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/02/post-b55c.html

原発関連では、本書が注目を集めています。あまたある福島第一原発の事故調査委員会を上回る取材力が、本書を原発事故に関するドキュメントの決定版というにふさわしいものにしています。

▽飛田――さいごの色街
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/02/post-0c72.html

橋下大阪市長率いる大阪維新ブームの影響というわけではないのでしょうが、大阪の色街を描いた本書も話題になりましたね。

▽年金倒産――企業を脅かす「もう一つの年金問題」
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/01/post-d7ee.html

「税と社会保障の一体改革」やAIJ投資顧問の巨額損失事件に絡んで年金問題がかまびすしいのですが、企業の厚生年金基金にフォーカスを当てた本書は、わかりやすく問題点を解説した良書です。

▽サムライと愚か者――『暗闘オリンパス事件』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/04/post-1b16.html

オリンパス事件の顛末と、日本企業の暗部を描いた本書も読み応えありました。

▽『働かないって、ワクワクしない?』――職場が嫌いな二十五の理由
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/07/post-b1d7.html

この書評もアクセスの多いエントリーの一つです(笑)。

▽ユニクロの本質とは?――『ユニクロ帝国の光と影』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/03/post-fdd6.html

ユニクロの本質を暴いた本書もコンスタントに売れています。

ところで番外なのですが、当ブログでは紹介していないのに売れたものとしては、『POSSE vol.14 間違いだらけ?職場うつ対策の罠』があります。ユニクロの労働環境を紹介した記事が、話題を呼んだとのことです。

[参考]
▽当ブログで売れた本――2009年
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/2009-dd61.html
▽当ブログで売れた本――2010年上半期
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/08/2010-0d88.html
▽当ブログで売れた本――2010年下半期
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/12/2010-9982.html
▽当ブログで売れた本――2011年原発関連
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/05/2011-fe88.html
▽当ブログで売れた本――2011年上半期
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/06/2011-fe42.html
▽2011年に当ブログで売れた本
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/2011-b0d5.html
▽当ブログで紹介した本――東日本大震災・福島原発事故から一年
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/03/post-05d4.html

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▽江戸の性愛術とは?

渡辺信一郎『江戸の性愛術』(新潮選書)

江戸の郭には「おさめかまいじょう」という女郎向けの性の手引き書が残されていたそうです。本書は、その原文と現代語訳を並べて紹介したものです。

現代語訳を読まないと意味はわからないのですが、原文のねっちょりとした言い回しは、なかなか味わいがあるものです(笑)。

内容については、ここでは紹介しませんが、まあ、人間のあくなき性への探求心のどん欲ぶりには驚かされること請け合いです。

また、本書とは関係はないようですが、「おさめかまいじょう」のDVDも発売されているようです。現代人もどん欲やなあ(笑)。

『江戸の性愛術 おさめかまいじょう 技法編』

『江戸の性愛術 おさめかまいじょう 三十六種編』

渡辺信一郎『江戸の性愛術』(新潮選書)
[目次]
第一章 遊女の性技指南書に見る秘技
 一、『おさめかまいじょう』について
 二、新入りの女の女陰検分と水揚げ
 三、男経験のある新入りの女の女陰検分
 四、強靱のまらを堪能させる技法
 五、まら巧者の処理技法
 六、ようたんぼの半立まらに応じる法
 七、いきり過ぎて、萎えたまらの扱い方
 八、すぼけまら(包茎)の扱い方
 九、女は精液を吸い取って滋養とする
 一〇、絶大な馬まらには口と舌を使う
 一一、女郎の「気を遣る」のを止める技法
 一二、馴染みまらに応じる技法
 一三、刺身や道具を使う男への対処法
 一四、乳房間の交合の技法
 一五、口にほおばる技法
 一六、けつ取りの場合の対処技法
 一七、手技で男に気を遣らせる秘法
 一八、交合以外の女陰の曲技
 一九、干瓢を用いる秘法
 二〇、魚の腸管を使う秘法
 二一、凍りこんにゃくや高野豆腐を使う秘法
 二二、「かんぶ紙」を巻いて行う秘法
 二三、枠を嵌めて行う技法
 二四、芋の皮を巻いて行う秘法
 二五、「ぬか六」に対応する秘法
 二六、様々な交合体位、三十六種
 二七、女二人と男一人の技法 その一
 二八、女二人と男一人の技法 その二
 二九、女二人と男一人の技法 その三

第二章 女への大悦
 一、女との肛交
 二、外国の場合

第三章 「張形」の御利益
 一、女の新たなる自己顕示
 二、文献に現れた「張形」
 三、どんな女たちが使用したか
 四、新鉢を割る
 五、月水でも
 六、瞠目すべき秘録によれば
 七、独楽でアクメに至るには
 八、張形を使用する際には
 九、使い方の実際
 一〇、宿下がりとお役御免
 一一、下女などは代用のものを

第四章 江戸のバイアグラ
 一、提灯で餅を搗く
 二、常々の補腎薬の色々
 三、女が取り乱す「蝋丸」
 四、女が叫春する「女悦丸」
 五、世界に冠たる勃起薬「長命丸」
 六、バイアグラと同等「危檣丸」

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▽石川九楊の一日一書

石川九楊『一日一書』(二弦社)

書家の石川九楊は2001年から京都新聞の一面に「一日一書」という連載コラムを担当していた。紙に書かれたり、木や石などに彫られたりした文字の写真とともに、解説風のコラムがつくという体裁で、たいへんな労作である。

なんと、2001年版に続いて、2002年版、2003年版、さらに選り抜き版も上梓されている。

石川九楊『一日一書〈02〉』(二弦社)

石川九楊『一日一書〈03〉』(二弦社)

石川九楊『選りぬき一日一書』(新潮文庫)

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