2012.06.10

▽バイエルの謎

安田寛『バイエルの謎: 日本文化になったピアノ教則本』(音楽之友社)

「バイエル」といえば、音楽に疎い私でも知ってる、有名なピアノの教則本です。「バイエル」という言葉は、ピアノの世界だけでなく、他の分野でも「入門書」という意味で使われる、ある種の代名詞となっています。

しかし――。

1980年代後半になると、この「バイエル」が、「日本でしか使われていない」、「本国ドイツでは忘れられた存在」、「バイエルは三流の作曲家」というバッシングにさらされます。

しかも、音楽家バイエルに関する記述はほとんど残されておらず、バイエルは実在したのか? という疑問すら浮かんできます。

そんなバイエルの、日本、ヨーロッパ、そしてアメリカにおける歴史をたどったのが本書です。ちょっとした歴史ミステリーの趣に加えて、明治以来の日本の音楽史が綴られた読み応えのある一冊です。

[目次]
プロローグ バイエル文化の謎

第一の封印

第一章 バイエルをめぐる日本人の愛憎
 バイエル不在説
 長く使われた理由
 懐かしい風景
 バッシング
 偽の伝記

第二章 バイエルを日本に持ってきたのは誰だ?
 定説
 ハイエル・メトデ貳拾冊
 エメリース弐拾冊
 メーソンに宛てた書簡
 音楽院・ピアノ・メソッド
 音楽院の便覧
 編集したのは誰か

第三章 初版はいつ出版されたのか?
 ムジカノーヴァ
 ホフマイスター音楽図書月刊目録
 初版の値段

第四章 バイエル偽名説
 万国音楽家列伝
 酷評
 写真の出現

第五章 チェルニー・バイエル同一人物説
 推薦状
 推薦は本物か
 原著で裏を取る
 したたかな広告

第二の封印

第六章 バイエル初版
 ウィーンでは人気があったバイエル
 万霊節
 ニュルンベルクのマイスタージンガー
 王室音楽御用達出版者

第七章 驚異の多作家
 ショット社
 門外不出
 ショット社出版目録
 重複した作品番号
 バイエル併用曲集

第八章 最古のバイエル
 ニューオーリンズの初版
 教会と市役所と城のある小さな都市
 マニュアル
 イェール大学

第九章 エディション研究
 初版復元
 姿を現した初版
 本物

第三の封印

第十章 静かにした手
 バイエル受容史
 異常な拡張
 模倣
 天才ピアノ教育家
 レーライン・ピアノ教則本
 音楽新報
 クララ・シューマン
 和音聴音
 いろおんぷ
 体系

第十一章 シュークリーム
 合本
 番外曲
 歴史的経緯
 お楽しみ曲
 整理
 解答

第四の封印

第十二章 改築申請書
 終焉
 宣託
 死亡証明書
 住所録
 聖ランペルティ教会
 洗礼記録
 旅は終わらない

第十三章 最後の秘密
 新しい情報
 先祖の地
 プロテスタント教会音楽
 断絶
 家族の歴史
 受け継がれるもの
 母と子と
 讃美歌集とオルガン
 教会歴

エピローグ 百四十八年後の弔辞
本文注
資料写真
あとがき


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