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2012年8月

2012.08.28

▽種が絶滅する時――『捕食者なき世界』

ウィリアム・ソウルゼンバーグ『捕食者なき世界』(野中香方子、高槻成紀訳、文藝春秋)

28日に環境省が発表したところによると、ニホンカワウソとツキノワグマが、絶滅種に指定されました。三十年間以上、生息が確認されていないからという。

ニホンカワウソとツキノワグマ「絶滅」: The Voice of Russia

日本の環境省は火曜、公式に、国内に棲んでいる哺乳類のリストから2種目を削除した。「絶滅の危機に瀕している動物のレッド・リスト」から、ニホンカワウソ、九州南部の山林に生息していたツキノワグマが削除された。

28日に環境省が発表したところによると、ニホンカワウソとツキノワグマが、絶滅種に指定されました。三十年間以上、生息が確認されていないからという。1905年にニホンオオカミが絶滅指定されて以来の、絶滅種指定という。

こうした「捕食動物」の絶滅が、生態系のバランスを崩し、生物の多様性を失わせる原因となっている、と主張しているのがウィリアム・ソウルゼンバーグ『捕食者なき世界』である。

食物連鎖の最上位にいる大型捕食動物(トッププレデター)が絶滅すると、それらに捕食されていた「被捕食動物」が無制限に繁殖し、植物などを食い尽くし生態系を破壊すると、やがて、その種も絶滅に向かうという。

こうした現象を防ぐには、トッププレデターを放すことが役に立つだろうとの考えから、アメリカのイエローストン国立公園にオオカミが放たれた。同公園では、その結果、増えすぎたアカシカの個体数の抑制と森林被害の抑制に成功したという。

では、トッププレデターを絶滅に追い込んだものは何かと言えば、それは人間であることは言うまでもないだろう。

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2012.08.19

▽老化物質AGEの正体――『老けたくなければファーストフードを食べるな』

山岸昌一『老けたくなければファーストフードを食べるな』(PHP新書)

糖とタンパク質を加熱すると褐色の物質ができる現象を、その発見者にちなんで「メイラード反応」と呼ぶ。そして、そのメイラード反応と同じような化学反応は、人体の内部でもおこっているという。

人間の体の中にあるタンパク質と糖が結びつくことによってつくられる物質を「終末糖化産物」=AGE(Advanced Glycation End Products)と呼ぶが、これが老化の原因物質ではないか、というのが本書の指摘である。

このAGEが老化の原因物質であるとの主張の当否は、専門家の研究が待たれるところではあるが、糖分やタンパク質の多いファーストフードをあまり食べ過ぎるのはよくない、というのは至極もっともな話です。

特に、清涼飲料水に含まれている果糖(フルクトース)は、AGEをつくりやすく、また、常習性が強いため、健康にもよくないのだそうです。

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▽押井守のゾンビ日記

押井守『ゾンビ日記』(角川春樹事務所)

ある日突然、死んだ人がゾンビ化して徘徊するようになった世界で、主人公の「俺」は銃器を使ってゾンビの頭部を破壊する遊びにとりつかれる。

ストーリーといったのはなく、ただ人間の死や銃器にまつわる蘊蓄が綴られているだけ。作品そのものよりも、なぜ、こんなものが書かれたのか、そこが気になって読み続けてしまう。

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2012.08.18

▽ユリイカ総特集『平成仮面ライダー』

ユリイカ2012年9月臨時増刊号『総特集=平成仮面ライダー 『仮面ライダークウガ』から『仮面ライダーフォーゼ』、そして『仮面ライダーウィザード』へ・・・ヒーローの超克という挑戦』(青土社)

サブカルチャー評論誌ユリイカが「平成仮面ライダー」をフィーチャーした臨時増刊を出して話題になっています。

平成ライダーとは、クウガ、アギト、龍騎、555、剣、響鬼、カブト、電王、キバ、ディケイド、W、オーズ、そして、現在放送中のフォーゼ、来月から放送開始予定のウィザードの十四作。

特に、ディケイドは、それ以前の仮面ライダーに変身できるという能力から、平成ライダー全体への関心を高めることに成功し、ガンバライドという対戦式ゲームのブームに貢献してきました。

そして、《「ライダー批評」という分野をほとんど一人で作り上げた》(p.12)宇野常寛が、脚本家の井上敏樹との対談が、この十四作の世界観の違いを大きく区分しています。

《宇野 等身大の世界に立ち返ってもう一度ヒーローを成り立たせるために試行錯誤するのか、ヒーローなんていない世の中について徹底的に考えるのか、今出ているのはその2パターンなんですよね。高寺さんや塚田さんは前者で、白倉さんや井上さんは後者の方向性だと思うんです。
井上 なかなかいいことを言ってる。たぶんそうだよ。》(p.61)

白倉とは、井上とコンビを組んで、アギトや555、響鬼(30話以降)などを担当した白倉伸一郎プロデューサーであり、高寺はクウガや響鬼(29話まで)のプロデューサーだった高寺成紀(現・高寺重徳)、塚田はW、フォーゼのプロデューサー塚田秀明である。

平成ライダーは、高寺の路線と、白倉の路線のせめぎ合いの中から生まれたものであり、特に、響鬼のシリーズ途中での高寺から白倉へのプロデューサー交代は、そのことを象徴的にあらわしている。

この二人のプロデューサーの双方と仕事をした井上伸一郎角川書店社長の両者の人物評も興味深い。

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▽財政破綻は回避できるか

深尾光洋『財政破綻は回避できるか』(日本経済新聞出版社)

日本の財政問題について、一般向けにわかりやすく書かれている。結論は、消費税の増税を行う一方で、歳出削減、特に社会保障費の削減を進める必要がある、という至極まっとうなもの。

「補論」として、いわゆる「リフレ政策」がゼロ金利下では有効でない理由があげられており、これもまたまっとうな内容である。

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2012.08.17

▽なんだかなァ人生

柳沢 きみお 『なんだかなァ人生』(新潮社)

「翔んだカップル」などのヒット作で知られる漫画家の柳沢きみおが「週刊新潮」でエッセイを連載していた(2010年5月から2011年4月まで)とは知りませんでした。

生い立ちから新人漫画家時代、バブル期に購入したログハウスやマンションのローン返済に苦しむ話など、赤裸々に語られています。ちなみに、この借金の返済は、「特命係長 只野仁」のテレビドラマがヒットした2009年までかかったそうです。

ちょっと興味深いのは、数年前に漫画のケータイ配信が始まった頃のくだり。出版社を通さずに、直接読者に新作を届けられ、さらに新たな収入源になるかも、と期待をよせたのですが、その夢はアッサリと打ち砕かれたそうです。

《まさに悪貨は良貨を駆逐する。変態的な漫画が読まれるだけのダークな世界になってしまい、新作の発表の場として、出版社の代わりにはなれませんでした。ひどくガックリきたものです。》(p.129)

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▽「本当のこと」を伝えない日本の新聞

マーティン・ファクラー『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』(双葉新書)

著者のマーティン・ファクラーは、ニューヨーク・タイムズの東京支局長。1996年からブルームバーグやAP通信などの東京支局で記者として活躍してきた。

そのファクラーが、自身の体験を踏まえて、日本の新聞がいかに「本当のこと」を伝えないかを綴っていく。

本書で批判されているのは、3.11をめぐる大手紙記者の取材や報道、記者クラブの閉鎖性、新聞社と取材対象との距離の取り方や誤報や捏造への対処の日米の違いなど。

ジャーナリストの上杉隆が、これまで主張してきたことと似通っていますが、まあ、同じニューヨーク・タイムズで働いていたからなのでしょう(笑)。

あと、著者は、ルパート・マードックが買収したことでウォールストリートジャーナルの経営が救われたと紹介していますが、マードック買収後の同紙は、ずっとピュリッツァー賞を逃し続けるなど、記事の質の劣化が激しいのですけどね……。

[参考]マードック帝国の落日
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2011/07/post-f736.html

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2012.08.16

▽ニッポン《南の島》大図鑑

加藤庸二『原色 ニッポン《南の島》大図鑑』(阪急コミュニケーションズ)

ニッポンの周辺にある114の島について、豊富な写真をもとに、それぞれの島の魅力を紹介している。

日本の自然や文化の多様性に驚かされます。

いま話題の尖閣諸島については、歴史的な経緯について1ページ割いていますが、竹島は、鹿児島県にある別の竹島(竹の宝庫)が紹介されています(笑)。

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▽わっ! へんな虫――探検昆虫学者の珍虫ファイル

西田賢司『わっ! へんな虫~探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)

探検昆虫学者としてマスコミでも紹介されることのある著者が、コスタリカやその他の地域で見つけられるユニークな昆虫を紹介する一冊。

写真も豊富で、文章も子供でも読めるようにわかりやすく書いてあります。もちろん大人でも楽しめます。

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2012.08.15

▽安田佳生『私、社長ではなくなりました。』――ワイキューブとの7435日

安田佳生『私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日』(プレジデント社)

まだ東日本大震災と福島原発事故による不安が渦巻いていたさなかの2011年3月30日に、民事再生法の適用申請を行った会社があった。

《「期待してフォローしていただいた方、申し訳ありません。できる社長とは言えませんでした。」
 翌三十一日朝の私のツイートである。》(p.186)

倒産のニュースがツィッターで広まり、さらに、それに対する社長のお詫びのツイートがネットニュースで広まったのは、いかにも、このワイキューブらしい事態だったといえるかもしれない。

1990年に創業されたワイキューブは、就職情報誌、就職情報サイト、採用コンサルティング、企業のブランディング支援とビジネスの軸足を少しずつかえながら成長してきた。

就職情報誌に「就ナビ」とつけて、いまはやりの「~ナビ」の先駆けとなったり、いちはやく就職情報サイト「就職コンパス」を開設するなど、先見の明はあったといえる。

また、従来型の電話営業が苦手のために、DMやメルマガを活用。さらに、タクシー広告、雑誌のタイアップ記事、採用に関する書籍、ワイキューブ自体を人気企業ランキング上位に食い込ませる、オフィスにバーやワインセラーをつくるなど、あの手この手で、ワイキューブの名前を売り込んでいく。

社員の給料も実績よりも期待を重視してあげたり、さまざまな福利厚生を提供したり、端から見たら放漫と言わざるをえない経営は、2007年頃には行き詰まる。銀行との交渉によって、債務の見直しを行い、再建の目処がたったところに、2008年秋のリーマンショックが襲いかかる。

結局そこから立ち直れずに、2011年の倒産に至る。

マスコミの注目を集めるような立ち回りのうまさはあったものの、本業の部分で、やっぱりどこか歯車が回っていなかったことはうかがえる。敗軍の将が、率直に語った本書から、学べることも多いと思う。

[目次]
まえがき

1章 満員電車からの脱出
 はじめての疑問
 勉強のできない子だった
 吊り革戦争
 アメリカへ
 シャンパンとイチゴ

2章 営業カバンからの脱出
 リクルート
 あめんぼ、赤いな、アイウエオ
 ワイキューブ
 東京進出
 グアム、そしてラスベガス

3章 劣等感からの脱出
 あせり
 新宿アイランドタワー
 就ナビ創刊
 坂道
 デジタル媒体への賭け

4章 アポ取りからの脱出
 アルバイト部隊の解散
 採用コンサルティング事業
 タクシー広告
 人気企業ランキングへのこだわり
 常識への反抗

5章 資金繰りからの脱出
 借り入れ
 ブランド戦略
 ワインセラー
 徹底した空中戦
 利益が先か、給料が先か

6章 引け目からの脱出
 頭打ち
 銀行回り
 ケチケチ大作戦
 はじめてのリストラへ
 誤算

7章 社長からの脱落
 リーマン・ショック
 再び銀行回り
 民事再生
 ある役員からのひと言
 私、社長ではなくなりました。

あとがき

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2012.08.13

▽素顔を見せた「中の人」たち

古田雄介『中の人 ネット界のトップスター26人の素顔』(アスキー・メディアワークス)

本書は、ネット・ニュース・サイトに2007年6月から2011年11月にかけて100回に渡って連載されたものがベースになっている。

古田雄介の“顔の見えるインターネット”
http://ascii.jp/elem/000/000/046/46114/

これに再取材を加えてまとめたもので、出版は2012年7月。個々の「中の人」については、本書やサイトの記事を読んでもらうとして、私が気になったのは、最近、問題となっている「2ちゃんねるまとめサイト」の管理人が、ほとんど登場していない、という点。

2ちゃんねるまとめサイトの中の人が目指す「透明な管理人」
http://ascii.jp/elem/000/000/414/414426/
《個人サイトで膨大なアクセス数が狙えると言われるジャンルに「2ちゃんねるまとめ」サイトがある。
 膨大な情報の中から面白い書き込みやスレッドを抽出する眼力と継続力が必要だが、その見返りは1日数万から数10万とも噂される多数の閲覧者だ。そうした2ちゃんねるまとめ系で、定番の人気があるサイトのひとつが「ぁゃιぃ(*゚ー゚)NEWS 2nd」だ。》

唯一取り上げられているのが、「ぁゃιぃ(*゚ー゚)NEWS 2nd」だが、同サイトは有名ではあっても、大手とは言い難い。

2ちゃんねるのまとめサイトが転載禁止に
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/news/2012/06/post-9e57.html

上記で指摘されてる5サイトは、月間ページビューが1億にも達したことがあるほどの影響力も存在感も大きかったはず。しかし、同業とも言えるネット・ニュースでさえも、その実態を取材する糸口すら掴めなかったということなのだろう。

[2012年8月15日追記]
上記のエントリーアップした後に、大手まとめサイトの管理人が、別のサイトのインタビューを受けていました。
http://getnews.jp/archives/242477

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2012.08.08

▽世にも奇妙な人体実験の歴史

トレヴァー・ノートン『世にも奇妙な人体実験の歴史』(赤根洋子訳、文藝春秋)

「世にも奇妙な人体実験」ときくと、なにやら恐ろしい本のような気もしますが、内容はいたってまじめ。でも、ちょっとユーモラス。

本書で紹介されている「人体実験」は、自分の体を使って行った「自己実験」。そう、本書に登場する科学者たちは、愛すべきマッドサイエンティストたちなのです。

では、なぜ彼らは自己実験にのめり込んでいったのかというと、それは「自説の正しさを証明するため」なのだそうです(笑)。

[目次]
第1章   淋病と梅毒の両方にかかってしまった医師 ― 性病
第2章   実験だけのつもりが中毒者に ― 麻酔
第3章   インチキ薬から夢の新薬まで ― 薬
第4章   メインディッシュは野獣の死骸 ― 食物
第5章   サナダムシを飲まされた死刑囚 ― 寄生虫
第6章   伝染病患者の黒ゲロを飲んでみたら ― 病原菌
第7章   炭疽菌をばら撒いた研究者 ― 未知の病気
第8章   人生は短く、放射能は長い ― 電磁波とX線
第9章   偏食は命取り ― ビタミン
第10章   ヒルの吸血量は戦争で流れた血よりも多い ― 血液
第11章   自分の心臓にカテーテルを通した医師 ― 心臓
第12章   爆発に身をさらし続けた博士 ― 爆弾と疥癬
第13章   ナチスドイツと闘った科学者たち ― 毒ガスと潜水艦
第14章   プランクトンで命をつないだ漂流者 ― 漂流
第15章   ジョーズに魅せられた男たち ― サメ
第16章   超高圧挑戦し続けた潜水夫 ― 深海
第17章   鳥よりも高く、早く飛べ ― 成層圏と超音速
あとがき  究極の自己犠牲精神をもった科学者たちに感謝
特別集中講義 『人体実験学特論』へようこそ  仲野 徹(大阪大学大学院教授)

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2012.08.05

▽『それでもボクはやってない』――日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!

周防正行『それでもボクはやってない―日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり! 』(幻冬舎)

周防正行監督の映画『それでもボクはやってない』のシナリオ、自作解説、そして、元裁判官との日本の刑事裁判についての徹底対談の三部構成。

映画自体は、さまざまな事件をもとにして構成されていますが、自作解説の「なぜこのシーンをカットしたのか」はシーンごとの意図を解説し、また、元裁判官との対談もさまざまなシーンをふまえたものとなっていて、刑事裁判のあり方について考える上で、非常に読み応えのある内容となっています。

[参考]▽それでもボクはやってない
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/02/post-d18e.html

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2012.08.04

▽映像の著作権

二瓶和紀x宮田ただし『映像の著作権』(太田出版)

インターネットの普及によって、ますます扱いが難しくなってきているのが、著作権。本書は、動画投稿から映像製作まで、さまざま映像に関する著作権をQ&A形式で解説していきます。

具体的な事例をあげて丁寧にわかりやすく、かつ、網羅的に書かれているので、一般の人の入門書としても使えます。

[目次]
序文
Ⅰ 映像と映画
 「映像」と著作権法でいう「映画」はどう違うのか/著作権法には「映像」という言葉はあるのか

Ⅱ 著作権の基礎知識 【映像の著作権を知るための第一歩】
 保護される“著作物”とは/共同著作物とはどういうものか/著作物はいつまで保護されるのか/保護の対象にならない著作物や、自由に使える著作物/著作物の保護に登録は必要か/「著作者」と「著作権者」の違い/著作物は自由に改変できるのか/“著作者の名誉又は声望”を害してはならないとは/映像プロダクションの社員は、著作者になりうるか/“引用”とは/少人数で他人の著作物を自由に使える範囲とは/テレビ番組の録画の学校内での利用/営利を目的としない映画やテレビ番組の上映/「著作隣接権」とはどのような権利か/ネット上では著作権の規制は緩いのか

Ⅲ 映画の著作権の基本のQ&A
[映画の著作物]
 映画の著作物とは/ビデオゲーム(ゲームソフト)は映画の著作物か
[映画の著作者]
 映画の著作者は誰か/映画の著作者はどのように定められたのか/脚本家は映画の著作者になれるのか/企画者と発注者と製作者の関係/クラシカルオーサー、モダンオーサーとは何をいうか
[映画の著作権]
 映画の著作権者は誰か/フリーディレクターには権利はあるのか/フリーカメラマンには権利はあるのか/テレビの「制作・著作」「製作・著作」は何を表わしているのか
[映画の著作権の保護期間]
 旧法と現行法の保護期間はどう違うのか/映画の保護期間の「53年問題」とは何か/映画の保護期間が終了後の原作や脚本の権利は
[映画の著作者人格権]
 著作者人格権不行使の契約では改変に異議申し立てはできないのか/映画化の改変はどこまで許されるのか/「原作」としながら関係ないストーリー展開は許されるのか/公開されない映画に監督の公表権は働かないのか/リメイク権という権利はあるのか
[著作隣接権]
 俳優は映画の著作者ではないのか/ワンチャンス主義とは
[映画の頒布権]
 頒布権とはどのような権利か/ビデオゲーム(ゲームソフト)にも映画の頒布権の規定が適用されるのか

Ⅳ 映像製作と利用のための著作権Q&A
[著作物と著作権関連]
 “新事実”は著作権法で保護されるのか/アイデアは著作権法で保護されるのか/ゲームソフトの連続する静止画は映画か/映像のDVD化の注意点は/タイトルの書は/絵画の写り込みは/旧法時代の写真の保護期間は/ダンスシーンの振り付けは著作物か/舞台セットや照明は著作物か/テレビ・映画のキャラクターは著作物か/SE(サウンドエフェクト/音響効果)は著作物か/番宣・プロモーション目的での公開は可能か/シナリオと原作者の関係は/動画をネット上で公開する場合の注意点/未使用の映像素材の著作権者は誰か/モニターテレビや監視カメラの映像は著作物か/ぬいぐるみや人形、プラモデルの著作権は/著作権消滅の放送映像は許諾が必要か/インターネット掲示板の情報は著作物か/海外の民謡の著作権は/著作権者不明の場合はどうしたらよいか/映画の原作・脚本の表示はどうすべきか/映像におけるコピーライト表記は必要か
[著作者人格権]
 ドラマ化、映画化での原作者の人格権は/映画やテレビ番組の部分利用は問題ないのか/要約した“字幕テロップ”は改変か/デジタル処理による被写体の加工は改変か/完成後(納品後)の作品の改変は可能か/商品名等のモザイク化は許されるのか/外国作品の翻訳での同一性は/差別用語(不適切用語)の処理は/放送コードの法的根拠は
[著作権の制限(引用と使用)]
 映像を引用する場合の「正当な範囲」は/報道における適法引用の可否/他局の政治ニュース番組を引用できるか/映像とテーマ音楽、BGMの同時引用は/音声、音楽を引用する場合の「正当な範囲」/新聞紙面・雑誌誌面のインサートは自由に行なえるか/朗読による引用は可能か/昔の観光用映像の利用は/市販されている地図の利用は/番組宛ての手紙・メールの無断公開は
[著作隣接権]
 コンサート撮影の制限/スポーツパブでのテレビ中継はよいのか/歌番組でのCMやアーカーブのインサート利用/実演家の人格権と著作者の人格権の違いは/歌舞伎の「型」は保護の対象か
[肖像権・パブリシティ権]
 故人の有名人の写真の利用は/有名人の名前の利用は/個人が撮ったニュース映像のブログ掲載/保護期間満了の映像の肖像権は/建築物や電車にパブリシティ権があるか/被取材者の意図に反した編集は許されるのか/公開放送の観覧者、素人参加番組の出演者の肖像権は/写り込んだ「個人情報」は/写り込んだ「プライバシー」は/過去のニュース映像での肖像権処理は/報道目的とはいえ個人の無断撮影は許されるのか
[商標権 商品化されたキャラクター等]
 タレントグッズ、キャラクター文具の撮影に許諾は必要か/モチーフ、テーマとしての商品名の利用は可能か
巻末資料

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▽愛しのボルチモア――『シーズン・チケット』

ロジャー・エンジェル『シーズン・チケット』(玉木正之訳、東京書籍)

《しかし、「みなさん、ほんとうに、ありがとう……」と話しはじめた彼の声は、そこで途切れ、彼は、マイクの前を離れてダイヤモンドのほうに向かって少し歩き出し、そこで俯いたまま片手を顔の前で動かせた。彼は、泣いていたのである。》(p.102)

いかにもアメリカンな感じのコラムですが、本書は、アメリカの野球コラムニストとして著名なロジャー・エンジェルが書いた野球コラムを集めたもの。

これらのコラムが書かれた時期は、1983年から87年にかけてであり、よほどの大リーグ通でないと、誰の何について書かれた話なのか、さっぱりわかりません。しかし、フィクションを読むくらいの覚悟で読んでみると、いかにもな文体も含めて、楽しめること請け合いです。

本書は1988年に刊行された"Season Ticket"の前半部分であり、後半も、同じシリーズで邦訳が出されています。ちなみに、シーズン・チケットとは、一シーズンを通して使える入場券のことです。

ロジャー・エンジェル『球場へいこう』(棚橋志行訳、東京書籍)

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2012.08.03

▽贋作に隠された自殺の真相――『ゴッホの遺言』ドンデン返しつき

小林英樹『ゴッホの遺言―贋作に隠された自殺の真相』(情報センター出版局)

本書の著者は、画家ですが、ゴッホが書いたとされる一枚のスケッチを、一目で贋作と見抜きます。本書の前半は、そのスケッチが贋作であることの論証に費やされます。

そして、後半は、それを踏まえた上で、ゴッホの自殺の真相にまで、切り込んでいきます。ゴッホのことは詳しく知らないのですが、なるほど、と思わせるような説得力はありましたが……。

2009年に出版された完全版と銘打たれた文庫版では、著者の論拠とするある部分が、科学的な検証で否定されてしまった、というドンデン返しがつけ加えられていました。残念。

小林英樹『完全版 - ゴッホの遺言』(中公文庫)

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