2012.08.04

▽愛しのボルチモア――『シーズン・チケット』

ロジャー・エンジェル『シーズン・チケット』(玉木正之訳、東京書籍)

《しかし、「みなさん、ほんとうに、ありがとう……」と話しはじめた彼の声は、そこで途切れ、彼は、マイクの前を離れてダイヤモンドのほうに向かって少し歩き出し、そこで俯いたまま片手を顔の前で動かせた。彼は、泣いていたのである。》(p.102)

いかにもアメリカンな感じのコラムですが、本書は、アメリカの野球コラムニストとして著名なロジャー・エンジェルが書いた野球コラムを集めたもの。

これらのコラムが書かれた時期は、1983年から87年にかけてであり、よほどの大リーグ通でないと、誰の何について書かれた話なのか、さっぱりわかりません。しかし、フィクションを読むくらいの覚悟で読んでみると、いかにもな文体も含めて、楽しめること請け合いです。

本書は1988年に刊行された"Season Ticket"の前半部分であり、後半も、同じシリーズで邦訳が出されています。ちなみに、シーズン・チケットとは、一シーズンを通して使える入場券のことです。

ロジャー・エンジェル『球場へいこう』(棚橋志行訳、東京書籍)


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