2012.09.08

▽東電撤退の真実――『原発危機 官邸からの証言』

福山哲郎『原発危機 官邸からの証言』(ちくま新書)

本書は、菅内閣で官房副長官をつとめた福山哲郎が、東日本大震災と福島原発事故に対応した際に記録した「福山ノート」をもとに構成されている。

官房副長官は、政府の危機対応に際しては、総理大臣、官房長官に次ぐナンバースリーの地位にあり、官邸サイドの証言として貴重なものである。

この「福山ノート」の内容については、すでにさまざまなかたちで伝えられているが、

▽大鹿靖明『メルトダウン』――福島第一原発事故ドキュメントの決定版
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/02/post-b55c.html

やはり焦点となるのは、福島原発事故における東電撤退の真実につきるだろう。

3月12日の一号基爆発、13日の3号基爆発と続き、14日夕方には、1~4号基すべてが危機的な状況に陥っていた。

この頃には、東電の清水正孝社長から、複数の官邸メンバーや海江田経産大臣に、「撤退したい」との電話がかかってくるようになる。

この要請については、後に、さまざまな事故調査委員会で取り上げられるが、東電の言い分は、「全面撤退ではなく、一部撤退だった」というもの。

しかし、福山によると、官邸は「全面撤退」と受け留めたという。15日の午前3時に、菅首相に伝え「撤退はありえない」ことを確認。午前4時に、官邸を訪れた清水社長にそれを伝え、午前5時半には、今度は、菅首相が東電に乗り込んでいく。ちょうどこの頃、2号基のサプレッションチェンバーと、4号基の建屋が爆発した――。

この時、菅首相ではなかったら、歴史はどうなっていたのだろうか? 菅首相だったからこそ、東電撤退を阻止できたのではないか?

政治家には、それぞれの天命があると信じている私としては、支持率低下と、献金問題で退陣寸前まで追い込まれていた菅首相が、3月11日の大震災発生でかろうじて延命し、そして、与えられた役割を果たしたのだろう――と思いたいところである。


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