2013.04.23

▽破産した自治体再建の実態――『医療にたかるな』

村上智彦『医療にたかるな』(新潮新書)

2006年6月に財政破綻が明らかになった北海道夕張市――。

かつては炭坑の街として栄えた夕張市が財政破綻した後に、その夕張市の医療再生を担った著者が、どこに問題があったかについて率直に述べたものである。

《北海道の人間にとって、かつて夕張と言えば「もっともお金持ちで栄えている地域」でした。……落盤事故が起こるのは事実ですが、危険な作業への代償として、労働者たちは下にも置かぬ扱いを受け、家賃や暖房費はもとより、光熱費、水道代といった公共サービス、はては映画館の入場券まで、すべて無料で提供されました。もちろん医療費もすべて無料です。……この頃に、夕張の人たちは「何でもかんでも会社が丸抱えで生活の面倒を看るのが当たり前」という生活に慣れてしまい、歪んだ権利意識を持つようになってしまったのです。》(pp.77-78)

いったん身についてしまった「たかり体質」は、容易にぬぐい去れる物ではないことが、本書を読むとよくわかる。

[目次]
はじめに

第1章 日本の医療はなぜ「高い」のか?
1.「医療費が高い地域」に同情するな
過剰医療への宣戦布告/医療過疎地での診療所開業/日本一医療費の高い町
2.健康意識は「施し」からは生まれない
「ケア」と「キュア」/患者を減らす方法/一次予防がもっとも安い/注射信仰を逆手に/行政の動かし方/格差をつければ公平になる/保険制度とフリーアクセス/「施し」は逆効果
3.医療施設では人の健康は守れない
日本一医療費の安い地域/医療と寿命は無関係/生活習慣こそが問題/予防医療を阻むもの
4.医療批判に隠された「ごまかし」
フィンランドへ/北欧型の福祉政策/高福祉高負担への批判は正当か/医療亡国論のデタラメ/アメリカ型医療には反対/日本の医療は世界一/検査マニアの勘違い/恥知らずの高齢者たち

第2章 医療を壊す「敵」の正体
1.夕張を破綻させた「たかり体質」
北海道の土地柄/北海道人の気質/北海道の医療の特徴/夕張市の真実/“炭都”で育まれた「たかり体質」
2.既得権益を死守する「政治」「行政」
四面楚歌の夕張入り/決断しない政治/無責任な行政/夕張を蝕んだ労働組合/醜悪な権益確保
3.「マスコミ」の自作自演構造
マスコミの習性/救急拒否事件の真実/ウェブ雑誌の反論手記/思考停止が生み出す自作自演
4.責任回避と権力欲に走る「医療者」
医療関係者のリスク恐怖症/縦割りとリスク回避の構造/権力欲に転ぶ人たち/若月先生も妨害された/官がいいか民がいいか/オランダのビュルトツォルホ
5.「市民」という名の妖怪が徘徊する
歪んだ権利意識/夕張市民の非常識/「ニーズ」と「ウォンツ」/ニーズはアンケートで決めるものではない/「知らなかった」は免罪符にならない/自立した市民とは

第3章 「戦う医療」から、「ささえる医療」へ
1.高齢者医療は「死」を前提に組み立てよ
人は必ず死ぬ/「戦う医療」の限界/「胃ろう」は是か非か/家族との話し合い/口腔ケアの知られざる効果/リスクと向き合う/カリフォルニアの親戚
2.医療を超えた「ケア」を実践せよ
「ささえる医療」とは/老健と在宅医療/在宅の驚くべき効果/コミュニケーションが大事
3.行政への「丸投げ」は卒業せよ
厚生労働省の医療行政/制度は現場から変える/病院死と在宅死/孤独死の問題
4.日本人よ、「公」になれ
「ささえる医療」の担い手/まずは見学から/斜めのつながりを/公の精神

おわりに


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