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2013年9月

2013.09.15

▽『いつも一言多いあのアナウンサーのちょっとめったに聞けない話』

長谷川豊『いつも一言多いあのアナウンサーのちょっとめったに聞けない話』(小学館)

ニューヨーク駐在時代に、「横領」の濡れ衣を着せられた民報テレビ局のアナウンサー。日本への帰国命令が出され、アナウンサー職は解かれ、「著作権部」へと左遷された。週刊誌やネット・ニュースでは、「アナウンサーの横領事件」として大々的に報道された。

しかし、「懲罰委員会」の運営方法のおかしさや、社内情報を漏らす人物の存在に気づいた彼は、自分がねらい打ちにされたのではないか、という疑念を抱くようになる。

そして――。

放送局を退社した彼は、自分のブログを使って、自分を陥れた人物への報復を開始する――。

スリリングなビジネス小説のような展開ですが、これは本書に書かれている通りの内容です。実際の文章は、もっと砕けているんですけどね。

ネット社会の一面も綴られていて興味深く読みました。

[目次]
序章 フジテレビを訴えれば済む話か?
ご挨拶 「長谷川豊がお伝えします」
第1章 「はせっち!」―僕がアナウンサーを目指したわけ
第2章 「ジャニ顔を選べ!」―僕は「伝えたい」と思った
第3章 ライブドア騒動と『まる生』事件
第4章 アナウンス室の立場
第5章 「僕でよければ行きましょうか?」
第6章 マイクを奪われた日
第7章 最後の取材活動へ
第8章 真相の深層
第9章 この本の読者の皆様にお届けするもう一つのリポート
終章 そして明日へ―マイクを取り戻した日

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▽『鎮魂』――さらば、愛しの山口組

盛力健児『鎮魂 ~さらば、愛しの山口組』(宝島社)

元暴力団員である著者が、山口組の内情について語ったもの。

ここでは、記憶に残っている二つの事件についての記述を紹介したい。

●1996年7月10日 京都府の理髪店で中野太郎・中野会会長(五代目山口組若頭補佐・当時)らが銃撃される。しかしボディガードが応戦したため、襲撃犯のうち二名が射殺され、中野会長は無傷だった。

その後、山口組と襲撃した会津小鉄会は手打ち。このスピード和解について著者は、

《山口組が(中野襲撃を)了承しとったからですよ。あの散髪屋の(中野襲撃)事件は、宅見が会津にやらせよったんや。宅見が仕組んだんですよ。》(p.203)

●1997年8月28日 神戸市のホテルで宅見勝・山口組若頭(当時)らが銃撃され、宅見と流れ弾に当たった医師が死亡。山口組は、襲撃した中野会を「絶縁」し、中野会は、2005年に解散した。

2005年6月に、山口組内でクーデターが起きた。

《五代目は中野(太郎・中野会長)が宅見(勝・若頭)を殺すのをどこかの時点で“了承”しとった。弘道会はその証拠をつかみよったんや。》(p.246)

[目次]
第1章 大阪戦争
第2章 報復
第3章 血統書つきの野良犬
第4章 山健三羽カラス
第5章 懲役16年
第6章 出所
第7章 「宅見若頭暗殺事件」の深淵
第8章 「クーデター」の真相
第9章 さらば、山口組

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2013.09.14

▽『原子力ムラの陰謀』――機密ファイルが暴く闇

今西憲之+週刊朝日編集部『原子力ムラの陰謀: 機密ファイルが暴く闇』(朝日新聞出版)

1995年に起きた高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏れ事故の際に、謎の死をとげた動燃(現在は日本原子力研究開発機構)幹部が残した膨大な資料によって明るみにされた事実。

それは、1990年代に行われた原子力ムラによる、住民工作、思想調査、マスコミ・政界対策、選挙などの存在を裏付けるものだった。

その実態は本書を読んでいただくとして、西村氏の死について、ちょっと気になる記述がある。西村氏の妻であるトシ子は、夫の死について、「疑念」を抱いていることがわかる。

《トシ子さんは、T氏から〈西村職員の自殺に関する一考察〉という文書を渡された。T氏が西村氏の死の原因について考えをまとめたものだった。……
 そこには「勘異い」という、なぜか遺書と同じ「誤字」が使われていた。
 トシ子さんの疑念は、さらに深まった。》(p.307)

[目次]
プロローグ―「3.11福島原発」の序曲 それは「もんじゅ」事故から始まった
第1章―ウランの里「人形峠」で行われた戦慄の住民思想調査
第2章―動燃裏工作部隊「K機関」を暴く
第3章―梶山静六を大臣に押し上げた原子力ムラ組織ぐるみ選挙
第4章―科学技術庁が指示したNHKへの「やらせ抗議」
第5章―プルトニウム輸送船「あかつき丸」の日米密約
第6章ー動燃「工作」体質の起源
第7章―「もんじゅ」事故前夜の「安全神話」
第8章―もんじゅ事故「隠蔽」極秘記録と西村氏「怪死」の真相
あとがき

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2013.09.11

▽『関東連合』――六本木アウトローの正体

久田将義『関東連合:六本木アウトローの正体』(ちくま新書)

名前こそ広く知られるようになったものの、謎のベールに包まれた『関東連合』について、「日刊ナックルズ」の編集長でもある著者が、可能な限りその実態に迫ったものである。

その詳細は、本書に譲るとして、「関東連合」のおおざっぱな歴史を記しておこう。
そもそも「関東連合」は、1973年に暴走族の連合体として結成された。しかし、この1970~80年代の「関東連合」は、現在の「関東連合」とは、かならずしも同じ団体ではないという。

その後、道路交通法の改正などにより暴走族は勢いを失い、これとは別の不良少年の系譜である「チーマー」が、渋谷などを席巻するようになる。しかし、このチーマーと、関東連合系の暴走族との間で、抗争が勃発する。1991年に発生したいわゆる「三茶事件」と呼ばれる抗争の結果、チーマーは渋谷から一掃され、暴走族が優位になる。

そして、1990年代に入って、初期の関東連合に参加していた「上町小次郎」という暴走族が「関東連合上町小次郎」と名乗ることによって、「関東連合」が復活する。これが、現在の「関東連合」の源流であり、六本木進出の契機となったようだ。

そして、様々な事件を通じて「関東連合」の名が一般にも広まるようになる。まず、2000年に発生した東洋ボール事件、2008年の西新宿撲殺事件、2009年の男性俳優の薬物に絡んだ事件、2010年の歌舞伎役者殴打事件と横綱による暴行事件、2012年の六本木フラワー事件などである。

本書で記されていることが、「関東連合」のすべての真相では無いにしても、おおよその姿を描くことには成功しているように思われる。

[目次]
はじめに

序 章 闇社会の入口へ
 どうしても断れない先輩
 地下格闘技の闇
 殺す気で殴る
 闇社会の扉
 アウトローのヒエラルキー

第一章 関東連合の歴史
 資料はほとんどない
 関東連合、過去と現在
 70年代、関東連合の誕生
 関東連合は誰が作ったのか
 巨大暴走族の序列と人間関係
 現在の暴走族スタイルを確立したあるチーム
 走り集団から喧嘩集団へ
 大井ふ頭事件
 暴走族特有の意識

第二章 チーマーの出現
 不良少年とバブル
 不良少年と漫画
 ギミックの不良観
 不良デビュー
 チーマーはなぜ誕生したのか
 アメカジから渋カジへ
 チーマーの象徴としての明大中野高校
 チーマーのディスコグラフィ
 チーマー・タイプの方程式

第三章 武闘化するチーマー――三茶抗争と関東連合の台頭
 ものを言うのは出身校
 武闘派チーム
 チーマーのファッションリーダー
 とりあえず楽しくメチャクチャやろうぜ
 三茶抗争の勃発
 三茶事件、当事者の証言
 和解へ向けた動き
 チーマーがいなくなった後のチーマーたち

第四章 関東連合の復活
 覆された暴走族イメージ
 世田谷の暴走族「小次郎」
 抗争の時代
 喧嘩で名を売る
 新生・関東連合の台頭
 豊富な資金力の一端
 団塊ジュニア世代
 ヤクザになるのが得ではない時代

第五章 六本木進出
 芸能マスコミ報道の幻想
 明るい芸能界の暗い舞台裏
 六本木進出

第六章 六本木フラワー事件
 動機はデモンストレーションか
 人違い説とトラブル説
 「関東連合の実態は分かってきた」
 犯行は杉並のグループ
 フラワー事件の影響

第七章 人脈
 グレーゾーンの定義
 クラブという存在
 クラブから広がる人間関係
 芸能界人脈
 関東連合の人脈をどう見るか
 ネットによる誇張
 幻想の巨大化

第八章 裏社会の地殻変動
 オレオレ詐欺
 唐突な幹部の出頭
 ヤクザから見た関東連合の現在
 都市型ギャング
 変わる繁華街
 大阪の不良集団「強者」
 追い込まれてきたか

あとがき

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2013.09.06

▽「イタリア」誕生の物語

藤澤房俊『「イタリア」誕生の物語』(講談社選書メチエ)

現在のイタリアが誕生したのは1861年である。

これは日本の明治維新のわずか七年前の出来事にすぎない。当時の世界は、それぞれが国民国家を生み出すプロセスのまっただ中にあったのだ。

統一される前のイタリア半島には、サルディーニャ公国、ジェノヴァ共和国、ヴェネツィア共和国、モデナ公国、パルマ公国、トスカーナ大公国、教会国家、ナポリ王国、ミラノ公国などがあった。

統一後のイタリアは立憲君主制としてスタートしたが、ファシスト政権を経て、現在は共和制となっている(イタリアは政権が安定しないことでも有名なんですけどね)。

本書は、「リソルジメント」と呼ばれるイタリア統一運動をヨーロッパの国際関係と絡めつつ描いた力作である。イタリアの地名などに通暁していないと、ちょっとわかりにくいかな、と思われる点もありますが……。

[目次]
第1章 「自由の木の酸っぱいけれども甘い果実を味わった最初の国」―一七九六~一七九九年
第2章 皇帝ナポレオンのイタリア支配―一八〇〇~一八一四年
第3章 不安定な王政復古体制
第4章 秘密結社運動から政党の運動へ
第5章 革命ではなく改革を目指した穏和派
第6章 イタリアの長い「一八四八年革命」
第7章 リソルジメントの国際化
第8章 職人的なイタリア統一
第9章 半島の名前から民族の名前となったイタリア
第10章 「クォー・ヴァディス、イタリア」―「おわりに」にかえて

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2013.09.05

▽『戦力外通告』――プロ野球選手たちの第二の人生

遠藤宏一郎『戦力外通告』(朝日新聞出版)

本書は、戦力外通告されたプロ野球選手たちのその後を追ったルポルタージュ。もともとはTBSの番組として制作されたものをベースに書籍としてまとめられた。

本書では七人の元プロ野球選手が取り上げられているが、あまりプロ野球に詳しくない私にとっては、ドカベン香川こと香川伸行くらいしか名前と活躍ぶりを知っている選手はいなかった。

その香川のその後ですら、なかなか大変な人生を送っていたことを本書で初めて知ることになった。プロ野球選手にかかわらず、「第二の人生」がいかに大変なのか、そして、多くの元プロ野球選手がたくましいか、について知ることができる。

[目次]
1章 タイガースの四番という重責を越えて―濱中治
2章 退路を断った一世一代の大勝負―平下晃司
3章 格闘技というまわり道からの挑戦―古木克明
4章 少年に野球の楽しさを教えたい―河野友軌
5章 二軍コーチの仕事を支えた出会い―黒田哲史
6章 元メジャーリーガーの次なる人生―福盛和男
7章 夢をくれたドカベンの新たな夢―香川伸行

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