2013.12.21

▽御曹司の二つの顔――『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』

井川意高『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(双葉社)

本書は、巨額の使い込みが発覚した元大王製紙会長の懺悔録である(2012年10月に懲役四年の実刑判決を受け控訴中)。

使い込みの原因がギャンブルだったこともあり、ほしのあきをはじめとする芸能人などとの交友録も含めて、御曹司の「裏の顔」が綴られている。

しかし本書の興味深いのはそれだけでなく、経営者としての「表の顔」もしっかりと語られている点だ。

大王製紙の創業家の三代目として、赤字部門の立て直しなどを任されるなど、経営者としては有能だったことが伺える。

《のちに私が東京地検特捜部に逮捕されてから、大王製紙からも多くの人間が取り調べに応じている。5000ページにも及ぶ検察調書を読むと、仕事のやり方について私の悪口を言っていた社員はいない。こればかりは素直にうれしかった。
「井川さん、あなたは仕事はできる人だったんですね」
 特捜検察官からも、苦笑交じりにそんな皮肉を言われ、複雑な気持ちになったものだ。》(p.104)

この「表の顔」と「裏の顔」がどうつながっているのかが、本書からは今ひとつ伝わらない。そこが残念と言えば残念である。


|

書評」カテゴリの記事